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アキとユズ*第四章
相合傘*1
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「ユズー?ねえ、なんか俺しちゃった?ねえ、ちょっ…ねえ、待ってよ、ねぇ。」
アキくんが俺の後ろで泣きそうな情けない声で問いながらついてくる。甘えた、その上間抜けな声をあげて俺の後ろをついてくるその様に俺の苛立ちが煽られる。
灯りの落ちた大通りには冷たい雨が降っている。結構強い雨脚で、アキくんの途方に暮れた声が一層頼りなく響いた。
ああ、しちゃったよ!いまの俺の状態見て判んないの?!…って、苛立ちの要因をバッサリ突きつけるように言えたらどんなにいいか。
いま自分の中で燻ぶる不機嫌の種を突きつけるように示せるのなら、とっくにそうしている。
……出来ないから、そもそもの種が自分でも情けなさ過ぎて恥ずかしくて、俺は子どもみたいに、不機嫌の種の存在を誇示するように、唇を尖らせて速足で歩くしかないんだ。そんなことしたって状況はなにも好転しないのに。
それでなくても、俺は自分の胸中とやらをヒトに吐露するのが苦手なのに…アキくんなら、それぐらい解ってくれていると思っていたのに……そんな甘さが一層俺の口を強く結ばせる。ますます自分の身勝手さを露呈させられて閉口してしまう。
後ろで俺の不機嫌の種を探ろうと問い詰めていたアキくんの声は、いつの間にか止んでいた。
相手にしない俺に愛想でもつかせて自分の部屋への帰路についたのかと思ったけれど、じっとりとふたりの上を覆う雨雲の様な気配を漂わせながら俺の後ろに変わらずついていた。振り返ることなく気配でそう察知させるように。まるで堂々としたストーカーみたいだ。
振り返ってアキくんと対峙するような意気地もないから、沈黙がどんどん雨水吸って濡れていくデニムみたいに重たくなってく。纏わりついて、息苦しい感じさえした。
本当なら、いまごろ気分良く酔っ払いながらふたり並んで歩いて帰るつもりだった。
明日は土曜日で、アキくんは仕事が休みだから、ウマくいけばウチに泊ってってくれるかなーなんて…ちょっと期待していたのに。泊っていってよ、なんて言わなくてもそうなってくれるんだろうな、って。
なのに……なんでこんなヘンでイヤな気持ちがお腹の真ん中らへんでぶら下がっているような不愉快な気分でいっぱいになっているんだろう。ベタに楽しい週末なんてものを待ちわびていた筈なのに、全く反対の展開になっちゃうなんて……
アキくんが俺の後ろで泣きそうな情けない声で問いながらついてくる。甘えた、その上間抜けな声をあげて俺の後ろをついてくるその様に俺の苛立ちが煽られる。
灯りの落ちた大通りには冷たい雨が降っている。結構強い雨脚で、アキくんの途方に暮れた声が一層頼りなく響いた。
ああ、しちゃったよ!いまの俺の状態見て判んないの?!…って、苛立ちの要因をバッサリ突きつけるように言えたらどんなにいいか。
いま自分の中で燻ぶる不機嫌の種を突きつけるように示せるのなら、とっくにそうしている。
……出来ないから、そもそもの種が自分でも情けなさ過ぎて恥ずかしくて、俺は子どもみたいに、不機嫌の種の存在を誇示するように、唇を尖らせて速足で歩くしかないんだ。そんなことしたって状況はなにも好転しないのに。
それでなくても、俺は自分の胸中とやらをヒトに吐露するのが苦手なのに…アキくんなら、それぐらい解ってくれていると思っていたのに……そんな甘さが一層俺の口を強く結ばせる。ますます自分の身勝手さを露呈させられて閉口してしまう。
後ろで俺の不機嫌の種を探ろうと問い詰めていたアキくんの声は、いつの間にか止んでいた。
相手にしない俺に愛想でもつかせて自分の部屋への帰路についたのかと思ったけれど、じっとりとふたりの上を覆う雨雲の様な気配を漂わせながら俺の後ろに変わらずついていた。振り返ることなく気配でそう察知させるように。まるで堂々としたストーカーみたいだ。
振り返ってアキくんと対峙するような意気地もないから、沈黙がどんどん雨水吸って濡れていくデニムみたいに重たくなってく。纏わりついて、息苦しい感じさえした。
本当なら、いまごろ気分良く酔っ払いながらふたり並んで歩いて帰るつもりだった。
明日は土曜日で、アキくんは仕事が休みだから、ウマくいけばウチに泊ってってくれるかなーなんて…ちょっと期待していたのに。泊っていってよ、なんて言わなくてもそうなってくれるんだろうな、って。
なのに……なんでこんなヘンでイヤな気持ちがお腹の真ん中らへんでぶら下がっているような不愉快な気分でいっぱいになっているんだろう。ベタに楽しい週末なんてものを待ちわびていた筈なのに、全く反対の展開になっちゃうなんて……
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