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アキとユズ*第三章
水蜜桃*6
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「…ユズ?なにし…」
口付をしかけられたあたりまでは、予想の範疇の筈だった。組み敷かれることも、まあ、一応は想像していた展開ではあった。
そこからの形勢逆転と言うか、リードを考えていたアキにとって、ユズがとって出た行動はあまりに予想外で、かつ、異様な興奮を伴うものであった。
にじりにじりとユズはアキの腰の辺りにさがるようにずれていき、やがてそこで蹲るような体勢をとった。
かと思ったその時、露わにされたアキの躰にユズが口付をしたのだ。
アキがユズの名を口にすると同時に降りてきた不意打ちの感覚は、彼から言葉を奪うに充分過ぎた。先程の口付の時よりも猥らで大胆な口中の有様に呻くような声しかあげられなかった。そしてたちまちに熱が上りつめていくのを感じた。
思っていたよりもずっと早くに口中が白く満たされたユズは、大きく噎せながらもそれを出来得る限り飲み干そうとした。それを察したアキが慌てて上半身を起こしてユズの顔を見やると、ユズは僅かに眼元を潤ませながら笑った。
「…っは、あ…びっくりしたぁ…」
「…っれは、こっちのセリフ…ったくもー…何してんだよ、ユズー…」
「……ごめ…」
「や、いんだけど…なんかいきなし大胆なことするからさー…」
「だって……」
「だって?」
問うようにユズの方を見やると、彼はたちまちに頬を赤く染め、消えそうなほどちいさな声で呟いた。
「―――だって…アキくん、どんな味なのかなーって…思って…」
羞恥心と欲望が入り混じった薄紅の肌に、アキは言いようのない甘美さを感じてしまった。瞬時に感じた痺れる程の甘く猥らな味に、脳の奥が震えているようにさえ思えた。そして同じぐらい、ユズへの愛しさも溢れんばかりに湧いていた。
湧きあがる様々な衝動に駆られたアキは、思わずユズを強く抱き寄せた。再びユズに組み覆われる様な体勢のまま、音がしそうなほど、強く。
抱きしめ合いながら、ふたりは今日何度目かの絡まるようなキスを繰り返した。水音のような、何かの液体が滴るような音を多分に響かせ、時折互いの躰を愛撫しながら、再び体温を引き上げていった。アキの指先を忍ばせたユズのそこは、突けばいまにも声を挙げてしまいそうに震えていた。
躰や肌に走る僅かな刺激にさえユズは甘くちいさく啼いた。蜜が完熟の果実のそれのように、湧く。アキはそれを感じ、薄く笑んだ。
「―――じゃあ、食べてみなよ、ユズ…好きなだけ…」
耳元で囁かれた言葉に、理性が煙のように消えた。抱きすくめられていた身体が解かれて身を起こし、瞬きをゆっくりと一度、溜息を深く一度ついて……ユズはアキの言葉に頷く代わりに嫣然と微笑んだ。背後には全ての音を吸いこむように青い空が広がっていた。
ゆったりとアキは眼を瞑り、瞼に焼きつく程の青を背負うユズがゆっくりと自身を露わにしていく音に耳を済ませていた。しっとりと感じるユズの重みと、肌の質感、じわりと滲む汗がふたりを阻む唯一のものだった。
しかしそれも、じきに溶けて一つになってしまうのだろう。そう思わせるに充分な程に触れあうそこは高い熱を持っていた。
口付をしかけられたあたりまでは、予想の範疇の筈だった。組み敷かれることも、まあ、一応は想像していた展開ではあった。
そこからの形勢逆転と言うか、リードを考えていたアキにとって、ユズがとって出た行動はあまりに予想外で、かつ、異様な興奮を伴うものであった。
にじりにじりとユズはアキの腰の辺りにさがるようにずれていき、やがてそこで蹲るような体勢をとった。
かと思ったその時、露わにされたアキの躰にユズが口付をしたのだ。
アキがユズの名を口にすると同時に降りてきた不意打ちの感覚は、彼から言葉を奪うに充分過ぎた。先程の口付の時よりも猥らで大胆な口中の有様に呻くような声しかあげられなかった。そしてたちまちに熱が上りつめていくのを感じた。
思っていたよりもずっと早くに口中が白く満たされたユズは、大きく噎せながらもそれを出来得る限り飲み干そうとした。それを察したアキが慌てて上半身を起こしてユズの顔を見やると、ユズは僅かに眼元を潤ませながら笑った。
「…っは、あ…びっくりしたぁ…」
「…っれは、こっちのセリフ…ったくもー…何してんだよ、ユズー…」
「……ごめ…」
「や、いんだけど…なんかいきなし大胆なことするからさー…」
「だって……」
「だって?」
問うようにユズの方を見やると、彼はたちまちに頬を赤く染め、消えそうなほどちいさな声で呟いた。
「―――だって…アキくん、どんな味なのかなーって…思って…」
羞恥心と欲望が入り混じった薄紅の肌に、アキは言いようのない甘美さを感じてしまった。瞬時に感じた痺れる程の甘く猥らな味に、脳の奥が震えているようにさえ思えた。そして同じぐらい、ユズへの愛しさも溢れんばかりに湧いていた。
湧きあがる様々な衝動に駆られたアキは、思わずユズを強く抱き寄せた。再びユズに組み覆われる様な体勢のまま、音がしそうなほど、強く。
抱きしめ合いながら、ふたりは今日何度目かの絡まるようなキスを繰り返した。水音のような、何かの液体が滴るような音を多分に響かせ、時折互いの躰を愛撫しながら、再び体温を引き上げていった。アキの指先を忍ばせたユズのそこは、突けばいまにも声を挙げてしまいそうに震えていた。
躰や肌に走る僅かな刺激にさえユズは甘くちいさく啼いた。蜜が完熟の果実のそれのように、湧く。アキはそれを感じ、薄く笑んだ。
「―――じゃあ、食べてみなよ、ユズ…好きなだけ…」
耳元で囁かれた言葉に、理性が煙のように消えた。抱きすくめられていた身体が解かれて身を起こし、瞬きをゆっくりと一度、溜息を深く一度ついて……ユズはアキの言葉に頷く代わりに嫣然と微笑んだ。背後には全ての音を吸いこむように青い空が広がっていた。
ゆったりとアキは眼を瞑り、瞼に焼きつく程の青を背負うユズがゆっくりと自身を露わにしていく音に耳を済ませていた。しっとりと感じるユズの重みと、肌の質感、じわりと滲む汗がふたりを阻む唯一のものだった。
しかしそれも、じきに溶けて一つになってしまうのだろう。そう思わせるに充分な程に触れあうそこは高い熱を持っていた。
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