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 それから十日後、俺は二カ月ぶりに自分の部屋に戻った。朋拓は蒼介に借りたという車で迎えに来てくれて、入院中に増えた俺の荷物を抱えつつまるでガラス細工を扱うように俺をエスコートしてくれる。

「車があって助かったー。朋拓は気が利くね」
「まあね。これからはそれぐらいできないとだもの」
「父親になるから?」
「もちろん。それと、唯人のパートナーでもあるんだからね」

 そう言って俺が乗る座席のドアを開けてくれながら朋拓は笑い、そして運転席に座った。車はすべて行き先を告げれば自動的に運んでくれる自動運転ではあるけれど、運転席に座るのは免許保持者に限られている。特に、俺の様な身重だったり病人だったり子どもやお年寄りを載せる時は厳密に決められているのだ。

「車便利だなー、買おうかなぁ」
「朋拓はいままで作品の搬入とかどうしてたの? 車なかったじゃん」
「いままではその時その時で借りてたんだよね、そんなに大きな絵を描くことなかったし、個展もそんなに頻繁に考えてなかったから。でも最近もうちょっと色々やりたいなーと思ってるし、それに……」
「子どもも生まれるし?」
「うん。家族のために買い物するのもいいなとも思ってる」

 遠いような近いような未来の話をする朋拓の横顔はまっすぐに前を見つめていて生き生きしていて、共に歩んでいくパートナーとしてのたくましさを感じた。人懐っこい雰囲気はそのまま懐の深さへと繋がっているのかもしれない。
 そっと隣り合う方に頭をもたせ掛けると、それを朋拓が撫でてくれる。その心地よさが嬉しくて、俺は自分のお腹の辺りを撫でながら味わっていた。

「早く会いたいね」

 こうして約八カ月の妊娠期間を経て、俺は出産の日を迎えることとなる――――はずだった。


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