【完結】覆面ディーヴァの俺は最愛の我が子に子守歌を唄いたい

伊藤あまね

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*25-2(R15)

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「でもさ、病院でってのがイヤなら家でもいいって言われたけど、どうする? その場合専用ケース購入しなきゃだし、日付と時間指定されるけど」
「日付と時間指定されたらどうなるの?」
「病院のアンドロイドが取りに来るんだって。いついつに採れましたよ、って連絡したらすぐに」
「なるほど……」

 俺の話を朋拓は興味深そうに聞いていて、それから何事かを考えている。
 病院だと精子の鮮度の心配がないから、受精の成功率が上がるので病院としては推奨しているとは言われたんだけれど、仕事が忙しいとか病院でひとりでするのが恥ずかしいっていう人もいるのでアンドロイドに取りに来てもらうパターンも可能だ。
 そう言えば俺が手伝ってあげるとか、終わったらエッチなことしちゃう? とか言ってはいたけれど、さすがに病院でそういうのはマズいかなぁと思ったので、俺からどうしようとは言わなかった。これは朋拓が一番いい方法を選べたらいいと思うから。
 どうするんだろうなぁ、と思いながら俺がコウノトリプロジェクトに関するアプリを立ち上げたりしながら待っていると、朋拓は、「ヨシッ」と呟いた。

「決まった?」
「うん。家でにする」

 なんで? と聞くのは野暮だろうから、「あ、そうなんだ」とだけ答えて俺はアプリの精子の採取に関する項目の自宅の欄にチェックを入れて提出した。
 自宅の方がリラックスできるとは言うから、そういう事かな……と思って何気なく朋拓の方を見ると、何か言いたげな顔をしている。

「……なに?」
「なんで家にしたのって訊かないの?」
「言いたいの? なんで?」

 べつに朋拓の自慰行為の場所の理由を知って俺は興奮しないけどな、と苦笑しかけたら、朋拓は片頬をあげてニヤリと笑いながら耳元でこう囁いた。

「精子をアンドロイドに預けたらさ、唯人にイイコトしてあげるよ」

 あえて遠回しな言い方をしてくる辺りがいやらしさを煽っていて妙にドキドキしてしまう。子どもを作るための工程を経てから、ただ愛欲のために抱きあおうという誘いはどちらも愛ゆえの事なのに病院で抱き合うよりも背徳感がある気がしてしまう。

「――いいね、いっぱいシてよ」

 そう嫣然と微笑んで返すと朋拓は嬉しそうに、でも滴るほど艶やかに笑って俺に口付け触れてくる。その指先が俺をじんわりと乱していく。

「ねえ、いまも唯人にシてもいい?」
「ダメって言ってもするつもりでしょ?」

 バレた? と肩をすくめつつも朋拓の手は止まらず、部屋着のオーバーサイズのシャツの中に滑り込んでくる。触れられた肌からとろけるように熱くなっていく。

「朋拓、来て」

 ソファに組み敷かれて手を伸ばした俺に、朋拓が覆い被さってくる。さっきまで夢中だったディーヴァのサイトを映し出した手のひらに表示していたスマホを閉じて。こういう時、俺は彼に唯人として愛されていることを肌で実感する。

「あ、ン……っは、あぁ……」
「唯人、もうここ濡れてるよ。すっごい薬効いてるんだね」
「っや、あ!」
「前と後ろ、どっち触って欲しい?」

 シャツをたくし上げ、ボトムスもずり下げておきながら今更にそんなことを言う。肌は既に彼を求めて熱を帯びているのはわかっているくせに、あえてそんな意地の悪いことを言うあたり朋拓の性格が出ている。
 ――でも、そんなところもすべて愛しい。だからその舌で、指で、熱で、俺を今日もとろかせて欲しい。

「唯人、熱い……」
「もっと、アツくして、朋拓で……」

 うなずく代わりに胸元に喰らいつく彼の甘噛みを感じながら、俺は小さな嬌声をあげた。


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