2nd Life

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第1章 幼少期

10話 初めての学校

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「姫さま支度出来ましたか?」


ソニアが、マイの部屋の前で待っている。
今日からマイは王立学校コルラド学園小等部に入学する。
時期は他の生徒より少し遅れていた。
通常は、3月頃に入学となるが、今は5月、コルラドの気候は温暖なため、もう外は暑い。

「姫さま?もう出ないと間に合いませんよ?入りますね」

ソニアは、部屋に入って行く。
中には制服に着替えてベッドの上にちょこんと座って、
ドラゴンの子供を抱っこして顔をうずめている。

(可愛すぎる!何なの!こんな不安げな姫さま初めて見た!)

「ひ、姫さまどうしましたか?コルラド王達も、外の馬車で、姫さまの晴れ姿を今か今かと待っておりますよ」


「ソニア、わたし凄く不安なの、みんなと身分も違うし、わたしはそんな事気にしないけど、他の皆さまは、気にすると思うの、苛められたりしないかな~」


『キュ~ン』


「姫さまを、苛める様な奴は即刻私が首を刎ねます!それが私の使命です!姫さまを、毎日側で守りますので、気になさらず、レウス(ドラゴンの子供、姫さまが命名した)も心配してます、コルラド王達も、同じお考えですよ!」



「それも、心配!約束して!わたしが学校に行ってる間は、城にいて!簡単に人を殺すとか言ってはダメよソニア!」

マイはレウスを強く抱きしめ、目線をソニアに向ける。
その眼光に、少しひるむソニア。


「わ、分かりました、ソニアは、姫さまの言い付けを守ります。ですが、コルラド王達には、姫さまからお願いします。
多分、私が言っても、聞きませんので」

「そうね、あの二人には、わたしから言った方が、効果がありますね」



「はい、お願いします、ですがあまりきつく言いませんようお願いします。
姫さまから、きつく言われますと、御二方とも、凄く傷つきますので、よろしいでしょうか」


マイは静かに頷くとレウスをベッドの上にチョコンと置く。


「レウスも、今日からママと少しの間お別れよ、その間は、メイド達に任せるから、言うことを聞くこと、それと、メイド達からは魔力を貰わないこと、わたしが帰ってきたら、沢山あげるからね」


『クゥ~ン』



レウスは、甘えるような声で鳴きながら、マイに擦り寄る、とても寂しいような顔でマイを見るが、ゆっくり頷く。



「よし!いい子ね!帰っきたら沢山遊びましょ!いい子にしてるのよ、ママも、頑張って勉強して、交流を深めるから!」


マイは自分にも言い聞かせるようにそう言うと、ソニアと一緒にしろから出て行く、城の外には、馬車が3台ほど並んでいる、他にも、騎士団や他の兵士達も待っている、真ん中の馬車の前で、コルラド王達が、マイの制服姿にうっとりしながら見ていた、周りの兵士達も、その姿に同じ状態だ。
マイは、頬を膨らませなが二人に近づく、その後を、おでこに手を当てたソニアが、アッチャーと言いながらついて行く。



「マイ!とてもかわいいよ!もう、この世の中でもだんとつだ!」

「そうね!マイは、ほんと天使だわ!」

兵士達もうんうんと、頷いている。

マイが怒っているのにその顔すらかわいいのだ。


「パパ!ママ!この状況は何?もしかしてみんなで入学式に行くの?こんな大人数で?」



「その通りだ、これでも人選して選んだ選りすぐりの護衛団だぞ!みんなマイの護衛をしたいと、志願した者達の中から厳選したのだ・・」


「護衛は要らない!わたしは、学校に通うのよ!他国に行くわけでもなく、城下にある建物まで、ましてや自分の住む国の中でこんな列をなして歩いたら恥ずかしいわ!わたしは普通に通う!今日だけは馬車で四人で行く!わかった!」


みんなはマイの声にビクッとなる。

コルラド王達は、物凄く肩を落としている、それもそのはず、今日という日に向け、皆を指揮し、段取りまで二人でしていたのだ、それを娘の一言で全て水の泡になったのだから、さらには、マイに怒られたことの方がよっぽど答えたらしい。

ソニアがマイの耳元で、コルラド王達が、とても楽しみにしていたことを伝え、兵士達にも申し訳ないことを伝える。中には貴族の物も含まれるので、あまりないがしろにすると後からめんどくさいと教えられた。


マイがやれやれとスカートの両淵を指で掴みスーと会釈をする。
その姿に、皆は天使が降り立ったような感覚に囚われている。


「皆さん、申し訳御座いません。
皆さまに、護衛される程この国の中は危険ではありません。それもこれも、皆様方が、職務に全うされているからでしょう、なのでわたしのような者ではなく、この国の為、民を、国を守ってください、なので、お集まりいただき恐縮ですが、皆自分の持ち場、職務にお戻りいただきますよう、どうかわたしのわがままをお許しください」


マイは会釈の体制から上目遣いで皆を見る。それでイチコロだった。

おー!! 


兵士達は、声を高らかに上げ自分たちの職務に戻って行く。
何人かは、心を奪われその場で立ち尽くす者もいた、一番の被害は騎士団だ、騎士団の馬が全く動こうとしない、そればかりか、馬の方はマイを守ろうとしてるように見える。
馬と言ってもれっきとした魔物なのだ。
知識も高く、言葉はわかるらしい。

「ありがとう、大丈夫よ」


マイが馬達に言葉を発すると馬達に頷き戻っていった。


「さっ!行きましょう!遅れてしまうわ!パパもママも、もう行くわよ!」


コルラド王達は、落胆しながらも馬車に乗り込む、前の馬車に、ソニアが乗る、後ろの馬車は、黙ってついてくるが、荷物が乗っているらしい。
マイはまたやな予感がしていた。
でも二人の状態を見ていると、何も言えなくなってしまった。
マイは二人に甘えることにする。
そうすると二人はマイを抱きしめながら、さっきはごめんねと呟く。
それに笑顔で答えると二人の機嫌が良くなる。
これは親馬鹿を持つマイの常套じょうとう手段だ。
そうしてる内に、馬車は止まるとソニアが扉を開けて膝をつき待っている。


〈コルラド王国 セイドルフ国営学園 〉


マイがゆっくり馬車を降りる、続いてコルラド王達も降りると、目を疑う。

姫様ご入学おめでとうございます!!

王様方姫様のご入学おめでとうございます!!


校門前には、沢山の民衆が大声で叫び、楽器の演奏が聞こえる、もうお祭り騒ぎだった、マイは、目が点になっている、
コルラド王は、大きく手を広げその声に応える、アイナもまんざらでもない様子で手を振る。


(もう!これじゃあ、兵士達を置いてきた意味がないじゃない!
こんなお祭り騒ぎなら!)


マイは呆れた顔で両手で、やれやれとポーズをとる、この国の人達は、王族達をとても慕っていることをマイは感じて何も言えなかった。


校門から一人の女性が歩いてくる。
年はアイナと同じぐらいであろう、髪が、肩ぐらいの長さで癖のあるウエーブがかった赤毛で、紺色のローブに包まれている。
その女性がマイ達の近くまで来ると、片膝をつき、胸に片手を当て敬服のポーズをとる。
そして下を向きながら口を開く。


「コルラド王様、マイ姫様のご入学、誠におめでとうございます。私、この学園の学園長に任命されています、第17部隊隊長カイン・ミラルドと申します。
この度、マイ姫様の、学園での警護及び教育をさせて頂き誠に感謝の極みです。
どうぞご安心ください、この第17部隊が、誠意を持ってマイ姫様をお守りすることを、この命に代えてお約束致します」


そう言うと、気づくと、後ろに二十名程度の男女が、カインと同じ敬服のポーズをしていた。

「うむ、お主らがユリウスが選んだ、学園の顧問に任命された部隊なのだな、任せるぞ、私の娘を!」

うんうんとアインも両手を組みその状況をにこやかに見ている。

はっ!


カイン達は一斉に返事をする。


(いやいや!みんな硬いから!わたしの思ってる学園と違いすぎる!もっと和気あいあいとなる予定なのに!これじゃあ城の中と変わらないじゃない、それに他の子供達だってこんなんじゃわたしと普通に接すれないじゃない!なんとかしないと!)

マイはまだ幼い頭をフル回転さる。

(よし、まずパパ達を帰そう、でもすぐに納得しなと思うから、ソニアに残ってもらう形に持っていく、この二人だと、毎日来そうだから、それは断固拒否しなければ、でも誰も、パパ達に言えないからわたしが言うしかないわね、ソニアには悪いけどちょっと付き合ってもらわよ)

マイはソニアにアイコンタクトを送る。
ソニアは、それに気付き静かに頷く。



「パパ、ママ、ここからはわたし一人でいくね!」


マイはあえて一人で学園入る事を告げる。
案の定、二人は食いつく、一人違う方も食いついてくる。


「マイ!私はマイの晴れ姿を見に来たのよ」
「そうだぞマイ、私もこの日をどんなに待ちわびていたか!」
「そですよマイ姫様、王様方に学園に入ってもらわないと私達の功績が、見て頂けません!」

(えー!一人すごい自己中な方がいるのですけど!学園長はそう言う方なの?)

マイは少し不安になるが次の作戦に移行する。


「この状況で、民の皆様には、伝わったかと、後わたしは、中間入学なので、式のような物は無いはずです、ユリウスは、勉強のことには甘やかさないとパパとママに約束したでしょ!」


以前ユリウスに約束した事をここで持ち出す。
ユリウスの名前を出すことによって三人は、グゥの音も出なくなる。
そこで一つ提案する。

「では、ソニアを連れて行く、ソニアに報告してもらうわ、それなら三人とも納得できるでしょ!」



三人は渋々頷く。
コルラド王達は、また肩を落とし城を出る時と同じように馬車に乗り込んでいく、マイは二人を追いかける。


「パパ!ママ!わたしを学園に入れてくれてありがとう!」

マイは、二人に抱きつき頬にキスをする。
二人は顔を明るくして涙を流している。


二人は馬車の窓から見えなくなるまで手を振り続けていた。
それを周りの民衆と一緒に見送る。


「ふぅ、さっ!カイン学園長学園に案内してください!」

マイの好奇心はすでに学園に向いている。

「姫さま、馬車を学園長に渡さなければなりません」


ソニアは置き去りの馬車を校門から学園に誘導する。


マイはそっとその扉を開ける、そこには、マイの授業道具と、金銀財宝が入っている、それと一枚の手紙、それをマイは読み上げる。


『これを学園に寄付する、なのでマイをひいきしてくれ、頼むぞ…』


マイは手紙を破り捨てる。


(甘やかさないって言ったのに)


(王様がこんなあからさまな賄賂なんて、何を考えているのです!)

マイとソニアはため息をつきながら馬車をカイン学園長に引き渡す。


「マイ姫様!本当に頂いてもよろしいのですか!こんなにたくさんの財宝!」


「もう、好きにして下さい、後、学園長はこの学園のトップなのですから、わたしに敬語は必要ありません!よろしくお願します」


カイン学園長は、静かに頷く。


(はぁ、学園に入るだけでどっと疲れたわ、本当にあの二人ならもう!)


マイは、愛されている事を感じながら本当に二人は親馬鹿なのだと再認識する。
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