2nd Life

seven

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第1章 幼少期

閑話☆☆ もう一つの御披露目会

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[ゼム王国 王城]

マイの御披露目会から少し前の時間軸。

マイがコルラド王都の教会に行っていた時のゼム王国で行われたゼム王のお孫さんのお話。


「おい!ぼくの生誕祭にはどれだけの贈り物がきてるんだ!?」
一人の少年が数人のメイドに怒鳴っている。

この少年こそ今話の主人公ゼム・タイ・テン王子である。
アイナの弟で王太子カッズとゼム王国宰相さいしょうの娘カラとの子供、容姿端麗ようしたんれいでイオ似の銀髪で色白の男の子だ。
ゼムが水色の髪色黒でカッズはゼムと同じ系統であった。
アイナは金髪色白の美女なのでゼムとイオの半々と言う感じである。

元々ゼムは一人で冒険出来る程戦闘力が高くパワー系で、イオは原住民らしい魔法を使いながら戦闘する事が多い。
まぁ、どちらも血の気が多いのは一緒であった為、最初の出会いは大型モンスターを討伐だったのだが共闘していがみ合いが絶えなかったらしい。
それからゼムがイオの町に住み着き何度もモンスターを一緒に討伐する内に、お互い認め合い支え合って結ばれたのだ。

そうしてゼムとイオが一緒に行動している時にイオの両親が隣村の連中に権力を手に入れようと暗殺される事件が発生。
怒り狂ったイオが単身突撃するのだが、相手も用意周到よういしゅうとうに待ち構えていてイオもまとめて殺害しようとしていたのだ。

イオは罠にハマりボロボロにされた時ゼムが村の裏から町民を連れ奇襲しイオを救出きゅうしゅつし首謀者をすべて斬捨てたのである。

その時イオは思った。
この人に着いて行こうと決め、イオ自らごり押しで嫁にしてもらったのだ。
(イオは昔から押しの強い性格で、尚且つ先見の目は持っていた)


その後、ゼムが前コルラド王と友好関係に有ったので、後ろ盾になってもらいゼム王国が誕生したのだ。
前コルラド王の話は今度お話しよう。


話を戻そう。

テンがメイドに恫喝どうかつしている。
「きさま!!今年は特別な6歳の生誕祭なのに贈り物が少ないぞ!?なぜだ!?」

メイドが焦りながら答える。
「私どもは送られてきた物を持ってきているだけなので御座いま・・・」
「ふん!!使えん奴らめ!!!」

「まあまあ、大きな声を出してどうしましたのテン!」
きらびやかな装飾、色白でピンク色の髪をクルクルロールに巻いている妙齢の女性がおうぎあおぎながら部屋に入ってくるこの人こそカラである。

「母上!ぼくへの生誕祭の贈り物が5歳の時より少ないのです!」
「なんて事なの!私のテンを見下しているものが居ると言う事ですわね!!あの人を呼びなさい!!」

「はい!ただいま王太子様をお呼び致します」

テンとカラが呼んでいる人はなんと王太子のカッズであの人呼ばわりで呼んでいるのだ。
テンはカラに影響され立場を勘違いし成長してしまっていた。

元々、カッズは、アイナが好奇心旺盛おうせいでいつも怪我をしてくるお転婆姫、男性も強く有るべきと冒険に連れ回された経験が余計に女性に弱くし、そして内向的な性格になってしまった。
その為、カラにも気を使ってしまっていた。
このままではいけないと思っているのだがきつく言えない性分なのだ。
(アイナやイオに言うと三倍返しで返ってくるのだからしょうがないと言えばしょうがない)

「どうしたんだいカラ、テン?」

メイドに呼ばれてカッズがやれやれと頭をかきながら入ってくる。
この世界では基本男尊女卑だんそんじょひが強いそれは外でモンスターと戦闘できる者が男性の中に多いからだ。
例外は沢山あるのだが・・(魔法の有る世界では女性も戦える為、尻に敷かれる男性も多い)
ゼム王国では戦闘できない文官はどちらかと言うと下に見られがちだ。
しかもそれに輪を掛けカッズは優しかった。

「あなた!6歳の特別な誕生日なのに!テンへの贈り物が減っているのよ!」
「父上!そうなのです!貴族共に・・・」

パァッン!!ドサ・・

テンがカッズに頬を叩かれ倒れる。

「あなた!テンに何を・・」
カラがテンを起こそうと駆け寄ろうとする。
「カラは黙っていろ・・」
カッズが今まで見せてこなかったするどい視線でカラを止める。
カッズは争いを好まないだけでゼムとイオの血を引く者。
そして、アイナに英才養育と言う拷問みたいな事を耐えた男なのだ。
弱い訳では決して無いただ争いごとを好まない人間であった。

カッズがテンに歩み寄る。
頬を抑えてキョトンとして今だに起き上がれないテンに言う。

「いつまで倒れているんだ、起きろ・・・」
「父上・・」

テンが涙を溜めながらおづおづと起き上がる。
するとカッズがテンを静かに抱き寄せ耳元でつぶやく。

「テン、私をいくらさげすむのはかまわんが、貴族・民を蔑むことは私は許さんからな・・もしお前が民をしいたげる者になった時、私はお前を殺す・・」
カッズは殺意を自分の息子に叩き込む。
普通の6歳になったばかりの子供が、大人のそれも戦闘力を持っている殺気をモロに受けたのだ。
大の大人でもちびるレベルである。

(荒療治ではあるが、ここでテンをいましめないとこの先この子は困る事になってしまう、父上と母上にも甘やかしすぎると注意されていたのでいい薬になればいいのだが・・)
カッズもテンが失神するであろうと内心思っていたのだが。

テンは耐えていた。
涙でぐちゃぐちゃにし、足もガクガクしてまともに立ってられていないが、目は死んでいなくカッズを見据えてうなずいていた。

(今まで母親に守られてわがまま放題に育っていると思ったのだがな・・この子もれっきとした王族の子なんだな・・
目が姉さまにそっくりだ・・)

「それがゼム王族の義務で有り、私がテンにしてやれる王族の父親としての教育だ、これからは少しずつ戦闘の仕方も教えよう、よいか?」
カッズはテンの頭に手を乗せ優しい口調で問う。
今までの部屋内の空気が晴れる。

「はい!!父上!!」
テンは初めて父親の優しさに触れた気がした。
今まで正面から向き合ってもらえてないと小さいながら感じていたのだ。

カッズはテンの頭をなで笑顔で答える。
「わかった、よくあれを耐えた、そして誕生日おめでとう、今日の御披露目の挨拶楽しみにしている。
これは私からの贈り物だ」

カッズが腰に差してある剣をテンに渡す。
「これは私の姉アイナに頼みコルラド王国北の鍛冶師にテンの体形に合わせて作ってもらった物だ。
今さっきコルラド王御一行が王城に入った為受け取って持ってきたのだ」

「ありがとうございます父上!大事に致します」

「あなた!そのような危険な物をテンに・・」
「失礼しますコルラド王様とアイナ王妃様が挨拶にいらっしゃっています」
メイドがコルラド王達が来た事を告げる。

「通せ」
カラを無視してカッズが答える。

メイドが扉を開けるとコルラド王とアイナが入ってくる。
ユリウスとライムは応接室で待機していたと言うより、コルラド王達に面会が引っ切り無しに来てしまっていてその対応に追われていた。
ユリウスも元はこの国の住人でアイナの側近だった事も有りユリウスに会いに来る貴族も結構な数が居た。
(あの二人こうなる事を分かっていて逃げたな!!)


「やあテンお誕生日おめでとう、カッズもカラもこの度はテンの6歳の御披露目会楽しみにしているぞ」
コルラド王がテンをたてながら話す。

カッズが簡易的礼を取りながらお礼の言葉を返す。
「わざわざ我が子テンの為ゼム王国に来て頂き誠にお礼申し上げます・・」
カッズのお礼の言葉と同時にカラもテンも礼を取る。


「そう、かしこまるな、ここはわが妻の実家なのだ、むしろ私がどちらかと言うと気を使う立場なのだから・・」
「あなた、そうは言ってもあなたはコルラド王国代表来賓なのですよ・・気を使うなと言う方が無理があるわよ」
アイナが冷静にコルラド王にツッコむ。

(ああ・・アイナ様!!)
ここで感激している人物が居たそれはカラである。
実はカラは小さい時からアイナを姫様と追い掛け回す程の熱烈なのファンであった、アイナはお転婆姫で自由気ままに行動するのを間近で見ていて羨ましいから尊敬に変わったのだ。
ただ王城や社交の場でしかアイナを見てこなかったカラは少し勘違いし男性を下に見る傾向になってしまった。

「してテンのほほが腫れてるがどうかしたか?」
「いやただのしつけです」
カッズがすぐ答える。
テンは黙ってコルラド王を見据え頷く。

「そうか・・」
(いい目になっているな、ゼム王に聞いていた甘さが消えているな)

「あなたマイからの贈り物渡したらどうかしら?」
アイナが空気を読んで話を変える。

「そうだな、テン、我娘のマイから贈り物を預かったのだが、私も中身を見るなと言われているのだが受けっとってくれるかな?」
「まだテンとそんなに歳がかわらないマイ姫から贈り物ですか・・?」
カッズがびっくりしていた。
その後ろでカラも侍女達も同じ反応だった。

「ぜひ頂きたいです」
テンが答える。

「そうか貰ってくれるか!それはよかった!」
「よかったですねあなた!」
コルラド王とアイナは喜んでいた。
(よかった・・マイにはもし受け取らなかったら持って帰ってきてと言われていたんだが・・あの少し悲しそうな目で見られてしまうとな・・しかも直接じゃないとダメと言われたからな・・マイはテンが甘えん坊に育っていると言う事を知っていたようだ、よかった)

コルラド王が胸から一つの小箱を取り出しテンに渡す。

「開けても?」
コルラド王はうなずく。

テンが綺麗な青色のリボンを外し箱を開ける。
テンの周りにはコルラド王達が囲む。皆興味津々だ。


箱の中には真っ青の綺麗な玉の付いたネックレスと和紙の手紙が入っていた。
実は紙の製作はここ最近コルラド王国での産業として作らせている。
東の森の木の生命体のトレントと言うモンスターから作れる事をマイがユリウスを通して作成方法を開示したのだ。
まずは木の皮から作れる和紙から作成を進めている。
その作成方法をゼム王国にも伝えられ現在ゼム王国でも産業として取り入れてる最中だ。
その政策のことはコルラド王国の時にお話ししよう。

「これは?綺麗な装飾品?ですね、手紙を読んでも?」
テンが周りを見渡す。

皆が頷きテンが手紙を開く。

”         ”
  ゼム・タイ・テン王子へ

6歳のお誕生日おめでとうございます。

まだ一度もお会いできていませんがお話はおじい様からよく聞いています。

わたしからの心ばかりの贈り物でございます。

お気に召して頂ければ幸いです。

これはわたしが作った水のネックレスと言う首の装飾品です。

握って精神力を流すと水が出てきます。

量は精神力の流す量で調整出来るので試して下さい。

総量は多分半年程チョロチョロ出し続けたら無くなると思います。

その時は是非わたしの所に持って来て頂ければまた補充致します。

是非使ってみてくださいね

本当におめでとう御座います。

 コルラド・セイ・マイ 

”            ”

(ほんとうにこの手紙をぼくと同い年の女の子が・・これがコルラド王国の姫・・おじい様はマイ姫になんて言っていたのだろう?)
テンとカッズとカラはマイに驚愕きょうがくにしていいる。

コルラド王とアイナは通常営業で娘をべた褒めしていた。

テンがゆっくりとネックレスを箱から取り出す。
そして侍女の一人に水差しを持ってくるように頼む。
さっきまでの横柄おうへいな態度では無く普通に頼んでいた。
侍女が水差しを持ってくる。

テンが水差しをテーブルに置きその上でネックレスを握りゆっくり精神力を流す。
すると握っていた手から静かに水が流れ出す。

部屋の全員が度肝を抜く。
それもそのはず、現在は魔法陣で水を出していた。
具体的な原理は妖精を集め空気中の水分を効率よく集める儀式を利用するのが常識。
だがこの玉は関係なく水を出している。

どれ程の希少価値があるのか想像も付かない。
コルラド王、アイナ、カッズ三人の王族達はすぐにその異常性に気付く。

テン、カラと侍女達は単純にビックリしていた。

「テン良い物を頂きましたね」
カラが普通に喜んでいた。

「はい!母上!!」
テンは顔を赤らめながら喜び首からネックレスを首からさげている。
(装飾品を僕に渡すなんて・・早くマイ姫に会ってみたいな・・)

三人は目を合わせうあずき合う。
(これはまだ誰にも教えれないな・・マイは何て物を作ったのだ!・・しかも装飾品とは・・マイは意味を解っていたのか?)
この事はまず三人の胸の内で納める事にしたのだが・・

その後テンがゼム王とイオにも見せてしまいバレて大騒ぎになった為二人を口留めしたのは言うまでもない。


誕生祭とお披露目会はつつがなく終わった。

テンのお披露目会は国民と貴族衆に一言自己紹介をするだけであった。
当然である、まだ6歳になったばかりの子供にはこれで十分なのだが、マイが普通では無いと気付けない痛い大人が多い。


コルラド王達は誕生祭が終了したタイミングで至急帰国の途に付いた。
その帰国の馬車の中でコルラド王がマイの贈り物についてユリウスに報告した。
「マイ姫様は何て物を・・・しかも装飾品・・」
「ユリウスも聞いていなかったか・・」
「マイは何かをしようとしているのね・・どうしますか?」

コルラド王が溜息ためいきを吐きながら答える。
「マイは多分こうなる事を予見していたのでは無いかな?ゼム王国に教える事と、我らに教える事を同時に行った。
何か考えが有ると言うことは間違い無いのだが、マイからの報告を受けるまではこのままにしたいのだがどうかな?」

コルラド王からの提案ていあんにアイナとユリウスは黙って頷いた。
もう一度コルラド王が溜息を吐く、そして他の二人も溜息を吐く。

マイに利用され振り回されている事が分かるのだが、嫌な気分にはなれない三人は馬車の中で微笑みながら急ぎ王都を目指すのであった。




次回よ新章少女期突入
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