2nd Life

seven

文字の大きさ
上 下
20 / 27
第1章 幼少期

19話 姫初めてのスラム(前編)

しおりを挟む
 [コルラド王城 城門前]

セイドが王城正門前で待っている。
マイに王族だとばれない様に、目立たない格好で待つようにと言われた為、セイドは都民の格好をしていた。
麻の地味なシャツと、少し汚れた麻のズボンが用意され、ニューヨークハットの様な帽子もセットであった。
これでも、容姿端麗なセイドが着れば、中々都民には見えないのだが。

そして、大きなバケットを持った都民仕様ソニアと、マリンキャップの様な帽子を深く被った、地味な服を着た小さい女の子と王城から出てくる。

王城門前の衛兵達が、だらしない笑みを浮かべている。

マイの髪は目立つので、キャップにしまっているのだが、すべてが隠せる訳では無く、襟足からともみあげ部分から、綺麗な金髪が出てしまっている。

いつもは、ストレートのままアクセサリー等を付けたり、リボンで一本に縛ったりしているので、見慣れてる者からしては、ギャップがすごいのである。
しかも、服装もドレスでは無く、地味目の子供服を着ているのが身近感が出て、なお高ポイントなのだ。
隠しようが無い、気品感とオーラ(天使の加護)はそのままだ。

「マイ姫様・・バレバレではないでしょうか?」
セイドが心配して声を掛ける。

「え?そう?」
マイがくるりと回転する。

『う!!』
ソニア・セイド・衛兵達が悶絶する。
何処にでも居る様な服装なのに、マイが着る事により、子供モデル級になってしまう。
しかも目立つのだ。
とてもその辺の子供に見えず、貴族がお忍びレベルも超えてくる。

それに輪を掛け、セイドもソニアも美男・美女なのだ、悪目立ちしすぎである。
しかし、彼等二人もマイに気を取られている為、しかも自分の事なので気付かない。


「わたしのお披露目会は、まだだしわたしの顔を知ってるのは学園関係や、一部の市民だけでしょ?」
マイが心配無いと語る。


しかしセイドが答える。
「マイ姫様の似顔絵は、民が毎年更新されたものを購入しています。
マイ姫様を拝見した絵師職人が幸せになると口外して売っているのです。
特に苦情等が出ている訳では無いので、取り締まっていないのが現状ですので、マイ姫様のお顔は、ほぼすべての王都民にばれてしまうでしょう・・・」

ソニア達もうんうんと頷く。

「ええええ!そんな事になってるのわたし知らないわよ!」
マイが驚く。

そこでマイが急に城門前の花壇に向かい驚くべき行動をする。

土に手を入れ顔に塗りたくる。

ソニアとセイドが一斉に止め、抱き抱える。
『姫様!!!』

汚れた顔を覗かせるマイ。

「姫さま!綺麗なお顔に何てことを、拭きましょう、それか湯あみしに戻りましょう!」
ソニアが、マイを城に連れ戻そうとする。

「ソニア、これでぱっと見た感じわたしだと分かる?」
汚れた手と顔を見せる。

「う、綺麗なお顔が・・でも、まじまじ見ないと姫さまだと分から無いかも・・」
(しかも汚れている姫さま希少!!)
ソニアの心の声が少し痛いのである。

「でしょ!これなら近付いてこないとバレないでしょ!」
マイどや顔である。

ソニアとセイドは、汚れを落すのを諦めマイをスラムに連れていく事に。

 [コルラド王都 北西エリア]

子連れの二人組がスラム街の入り口に立つ。
まだ、お昼過ぎなのに薄暗い雰囲気である。
路肩には、昼間なのに酔っ払いが何人も座り込んだり寝ているが、誰も介抱かいほうをしない。
薄着の年若い女性達も客引きをしている。

そして、何人も物乞いが居る、しかも年端としはも行かない子供達だ。
服装はボロボロで靴も履いていない、髪もぼさぼさで目が虚ろ、栄養を満足に取れていない様な雰囲気である。

入口に立つ二人組の一人の男性がヒョイっと小さい子供を腕に抱く。
「アイ様ここでは私が抱く事をお許し下さい。
何か有りましたらすぐに戻りますので御容赦ごようしゃ下さい」

そう、男性の方はセイドで、そして腕に抱かれるはマイである。
マイをアイと呼ぶように来る途中で決めておいたのだ。
マイの名前は知名度が高く、コルラド王国では姫しかいない為使う事を避けた 。

マイは素直に頷く。

するとセイドは警戒しながらスラムの中に入っていく。
ソニアはバケットを持ちながらセイドの横を歩く。

しばらく進むと右には酒場、左には娼館が並び、入口よりもひどい状態になっている。
人生に疲れた様な人間が何人も倒れている。

ゴミを漁っている者、倒れている者を漁る者、誰も止めない、トラブルに巻き込まれるのはごめんと言う感じで自業自得だと言わんばかりの雰囲気。

老若男女ろうにゃくなんにょ問わず人生に絶望している者が多くいる。

「セイド・・何でこんなに・・ひどいことに?」
(前世では日本の社会福祉がしっかりしていて、ホームレス等も私の時代は極端に少なかった、他の国では治安が悪い所は沢山有るけど、日本はとてもいい方だったわ。
これは根本から直していかないと絶対にダメだわ!)

マイがこの国が抱える一つ目の問題に直面する。


「私の主観では、就職難が根底に有ると思います。
農業等はモンスターの危険にさらされる事が多く、それに輪を掛け天候等にも左右される為、老人や子供等は農作業に適しません、なので働き手が居ない家庭は困窮こんきゅうします。
モンスターを狩り生計を立ててる者も居ますが、こちらは確実に戦闘力が必要なので一般市民には難しいです。
なので、食材に関しては高額になりやすく、庶民には中々手に入らないのです。
まだ王都は裕福な家庭が多く、こう言うスラム街は小規模ですが、深刻化している領地もある様です。
ここの住人は、基本途中で働き手が居なくなった為、女性は娼館やお酒を注ぐ仕事に就いているかと、子供や老人は物乞いや犯罪に手を染めてしまうのでしょう・・そして・・」
セイドが今まで見て経験した物を説明する。

「そう・・やっぱりまずは、食べ物の安定供給が必要ね。
そして、お仕事の安定化だわ」
マイはユリウスに聞いていた事の再確認をし改善策を検討する。

ソニアは、事件に巻き込まれない様、細心の注意を払いセイドの横を歩く。
若干、マイを抱くセイドにジェラシーを感じているが、男性が傍に居るのに女性の方が幼女を抱くのは、違和感が有る為グッと我慢する。

しばらく通りを進むとお店が少なくなる、
そして、遠くに教会ぽい建物が見える。

「あれが、私とソニアが育った場所になります。
私はマイ姫様ぐらいの歳の時に、ルイド家の養子になりとても良くしてもらいました。
ですが、それまでは軽犯罪に手を染める事も有りました。
まだ私達が小さい時は、もっと治安が悪く、犯罪組織の巣窟になっていました。
集団恐喝、窃盗、詐欺等が、小さい子供のご飯の種です・・・
毎日ご飯が食べれない、日に日に倒れていく仲間・・
ソニアはユリウス丞相に拾われるまで、かなり苦労した事でしょう。
ここは地獄でした、でもコルラド王様のお陰で本当に良くなりました」

セイドは最後は微笑みながらマイに語る。

ソニアはうつむきセイドの言葉を噛みしめている。

「パパ達がとても頑張ってくれたのが伝わるわね。
わたしにもできる事が有るの、だからここに来たかったのよ。
直には良くならないかもしれないけど、確実にいい方向になると思うの。
後、保護施設の方にもちょっとお願いが有るんだ~」

マイが二人に聞こえる声で話す。

二人は期待の眼差しでマイを見つめる。

(姫さまは、絶対に私達を失望させたりしない!私も協力するんだ!)
(私は、この方に着いて行きたい、そしてこの方が見ている世界を見てみたい)

「さあ!行きましょう!」
『はい!!』

マイの声に明るく答えるソニアとセイド。

教会敷地内に、数人の子供と管理者であろう初老の女性が教会内にある畑で作業していた。

この後、マイとソニア以外がこの訪問に驚愕きょうがくするのはもう少し後になる。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした

珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。 色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。 バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。 ※全4話。

転生したら使用人の扱いでした~冷たい家族に背を向け、魔法で未来を切り拓く~

沙羅杏樹
恋愛
前世の記憶がある16歳のエリーナ・レイヴンは、貴族の家に生まれながら、家族から冷遇され使用人同然の扱いを受けて育った。しかし、彼女の中には誰も知らない秘密が眠っていた。 ある日、森で迷い、穴に落ちてしまったエリーナは、王国騎士団所属のリュシアンに救われる。彼の助けを得て、エリーナは持って生まれた魔法の才能を開花させていく。 魔法学院への入学を果たしたエリーナだが、そこで待っていたのは、クラスメイトたちの冷たい視線だった。しかし、エリーナは決して諦めない。友人たちとの絆を深め、自らの力を信じ、着実に成長していく。 そんな中、エリーナの出生の秘密が明らかになる。その事実を知った時、エリーナの中に眠っていた真の力が目覚める。 果たしてエリーナは、リュシアンや仲間たちと共に、迫り来る脅威から王国を守り抜くことができるのか。そして、自らの出生の謎を解き明かし、本当の幸せを掴むことができるのか。 転生要素は薄いかもしれません。 最後まで執筆済み。完結は保障します。 前に書いた小説を加筆修正しながらアップしています。見落としがないようにしていますが、修正されてない箇所があるかもしれません。 長編+戦闘描写を書いたのが初めてだったため、修正がおいつきません⋯⋯拙すぎてやばいところが多々あります⋯⋯。 カクヨム様にも投稿しています。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

処理中です...