2nd Life

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第1章 幼少期

18話 姫もう一人の信者を得る

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 [コルラド王城 王城食堂]

マイ達が、食堂に着くと給仕達がお出迎えだ。

長テーブルには椅子が2つ追加してある。

マイがすっといつもの様に給仕に、引いてもらたったマイ専用の椅子に、お礼をいい座る。

ソニアも、マイの隣に用意された椅子に、給仕に引いてもらい座る。
マイと毎日食堂に来ている為、ソニアは慣れている。

そして、セイドは、座るのに躊躇ちゅうちょしている。
それもそのはず、今まで人生で、豪華絢爛ごうかけんらんな食堂で食事をした事等無いのだから。

ソニアが、早く座りなさいと目で訴えるが、中々座れない。

「気にしないでセイドさん、わたしが、勝手にしてる事なので、責任を感じないで、お食事を楽しんでね」

セイドがやっと給仕が引いた椅子に座ると、給仕達が一斉に一品目の食事を持ってくる。
そしてその後ろから、ザックが着いてくる。

小鉢がマイ達に配られる。
すると、ザックが一品目の説明をする。

「一品目は、前菜、サモーンのカルパッチョになります」

サモーンとは南の海で採れる。

日本で言う味はサーモンであるが、体長1m程のモンスターである。

説明を受け食事がスタートする。

「とっても、おいしいわ!特にドレッシングの酸味と合っている所がね、是非パパ達にも食べさせてあげたいわね」

マイが絶賛すると給仕が厨房に伝える、中はお祭り騒ぎであるが、食堂までは聞こえない。

ソニアも、セイドもおいしさのあまり、絶句である。
一口サイズの量なのですぐに無くなってしまう為、残念感が出ない様に、二人とも必死にこらえる。

続いて、二品目が出てくる。

「続いて二品目は、コンポタージュスープでございます。飲みやすい様に少し冷ましてあります」

小さいコップの中に、一口で飲み干せる量のスープが入っている。
コンとはトウモロコシである。

マイがコクっと、飲み干す。
(なつかしい味!!わたしが前に少しだけしか作れなかった物を、再現してくれたのね)

「うん!おいしい!やっとできたのね!」

「はい、マイ姫様に教えてもらった、生クリームの味の再現に苦労しましたが、何とか形にはできたかと」

「すばらしいわ!みんな頑張ったのね」
マイが、褒める度に、厨房は大賑わいである。

ソニアとセイドは、一品目同様に絶句してるのだが、もう少しと言う気持ちがにじみ出てくる。

(おいしすぎる・・・王族はこんなにおいしい物を毎日・・・)
セイドは、王族に不快感を抱いてしまっていた、それほど料理がおいしいのだ。

ソニアは、すごく切ない顔で、食器が下げられるのを見ているが、次の料理が出てくると笑顔になる。


「三品目は、南の海で採れた海藻サラダです」

小さなお皿に、一口で食べれるサイズの色とりどりの珍しいサラダが、乗っている。

マイが中途ちゅうちょなく口に運ぶ。

「うん・・」

マイが咀嚼そしゃくしながら味を確認している。

ザックは、ドキドキしながらその反応を、確認する。

そして、マイが飲み込み笑顔になる。

「バランスが最高ね!色も素敵だし、海藻の食感もいい、サモーンの卵が良い刺激になってるわね」

料理人達が、狙って作ったことを、的確に当てるマイ、ザックは、ほっとした表情をしながら、さすが姫様と思っている。

(先程の料理といい、なんでこんなに新鮮なのだ・・海の食べ物を、何度が食した事が有るが、生臭くとても食べれる物ではなかった・・・)
セイドは、以前自分の実家で、魚介類を食べた事が有るのだが、ルイス領が西側の為、新鮮な魚介類は手に入りずらいのだ。

ソニアは、何度も新鮮な魚介類を食べているのと、そのカラクリを理解してる為、まだ食べたいと言う方向にシフトしている。

そして次の料理が運ばれる。

「四品目、サモーンのポワレでございます」

香ばしいバターのいい香りがする料理が並べられる。


「いい香り!バターの作り方も覚えてくれたのね!」
マイが称賛する。

「はい!マイ姫様の仰ってた通りに作ったのです。
こんなに美味しい料理になるなんて、私は感動致しました!」
ザックは、感極かんきわまって涙を流している。
厨房内でも、料理人達は泣いていた。

(料理長が泣くとか、何なのだ・・・確かに食欲をそそられるいい匂いではあるが・・・大げさな・・・)
そう思いながら、ザックは料理を口に入れる。

「・・・・・うまい・・・」


セイドは、気が付くと本心の言葉を発してしまっていた。

「マイ姫様!申し訳ございません!」

セイドはすぐに謝罪する。
それもそのはず、王族達の食堂で、しかも王族の前でうまいと発してしまったからだ。

「気にしてないよ!でも、美味しいでしょ!涙が出るぐらいね!」

セイドは、はっとして目元に手をやる、すると目尻に水滴があった。
そう、セイドは気付かぬうちに、涙が出ていたのだ。

(自分が食事をして涙を流すだと?しかも一口で?何だったのだあの料理は!)

そして、五品目が出てくる。

「五品目は、レモンシャーベットです」

マイが味改革を、始める前のこの世界では、柑橘かんきつ系の果物は、基本モンスターが嫌がる匂いが多いので、郊外を歩く際や冒険の時に、身に着ける物でしなかったが、マイが名前を付け、ザック達に使い方を教えたのだ。
実はこの他に、オレンジやライムもマイが見つけている。
ザックはその実用性を、王都のレストランに教えている。
そして、マイが付けた果物達の名前は、マイ・〇〇と説明している為、王都の商店では、その名前で売られている。
しかも、モンスターを遠ざける効果も相まって、天使の果実と呼んで販売していた。

マイが口に入れる。
「うん!冷たくておいしい!口直しには丁度いい甘さね!」

「流石マイ姫様、口直しと気付いて頂けて何よりです」
ザック達は、マイが以前教えていた、コース料理を出す順番で計画していたのだ。
今回の料理は、6歳のマイの誕生祭に向けて考えていて、マイのお墨付きさえ貰えれば、コルラド王達は満足させられると理解している。
しかも、マイが好きなものを出せる喜びは、王宮料理人達の究極の至福なのだ。

続いて、セイドがレモンシャーべットを食べる。

ソニアは、マイと同じタイミングで食べていて、その味を満喫したため、セイドが食べるのを、ガン見していた。

セイドは目を閉じて、シャーベットを堪能していた。
(とてもいい香りがしていたのに、一瞬で溶けてしまった。
溶けた後に又、鼻に抜ける香り、これがマイ姫様が言っていた口直し?
とんでもない菓子では?こんなものが王都に出回ったら・・・・いくら払っても毎日食べたい)

そして、六品目が出てきて、ザックが説明する。

「六品目がモーの腰下の部分のお肉をバターソテーしました」

「あら?ザック一番いい所を出してくれたのね!」
マイが、牛で言うシャトーブリアンの部分を言い当てる。

ザックがマイに報告する。
「マイ姫様に、味を見て頂きたく、部位で味が変わる事を教えてもらうまで、わからなかったものですから、マイ姫様が食べやすい様に、一番柔らかい部位を、皆で探したのです」

「うれしい!味は皆で確認したの?美味しかったでしょ!」
マイが、味見をしたのか確認する。

「実は・・・大変申し訳ございません、ここの部位から取れる肉の量が極端に少なく、マイ姫様に食べてもらいたく・・・」
ザックは、本当に申し訳ない面持おももちで答える。

「ザック・・ありがとう、堪能たんのうさせてもらうね」
マイも申し訳ない気持ちでいっぱいであった。
(こんなおいしい料理を、毎回食べさせてくれるザック達には、本当に感謝だよ!)

食の探求心が、自分達が食べる為では無く、あくまでマイを喜ばせたい、美味しいと言われたい、そしてありがとうと言われたいだけで、食の進化をさせていくザック達は、究極のマイ信者なのだ。


ついに、マイが肉料理を口に運ぶ。

「う~ん・・・お、おいしい!!お肉が柔らかすぎて、溶けちゃった!!!ザックありがとう!!」

マイは、椅子から立ち上がりザックに抱き着く。
ザックは顔を真っ赤にして悶絶していた。
厨房からずるい!と声が聞こえてきそうだ。

「ソニア達も、冷める前に、早く食べてみて!」
マイが二人に勧める。


そして、ソニアとセイドがシャトーブリアンを口に入れる。

・・・・・

二人はなんと、目を閉じ泣いていた。
しかし、二人の心境は、それぞれ違う。

(美味しすぎです!!この世にこんなに美味しい料理が有るなんて・・・姫さまが生まれてきてくれて、よかったー!!!)
ソニアは壮絶マイに感謝していた。

(なんなのだ・・この料理は・・・一口分しか口にしていないのに、涙が止まらない、何故だ、何故こんなに悔しいのだ・・とてつもなく旨いのに、この料理がここでしか食べられないからか?マイ姫様に嫉妬しているのか?こんなに小さい子供が、皆に愛されている事をまざまざと見せつけられた事で、自分が嫉妬してしまっている・・・)
セイドは、マイが皆に愛されている事に、嫉妬してしまっていたのだ。
何故マイが、愛されているのかを知りたい、聞きたいと思うようになっていた。

「二人とも大丈夫?帰っておいで~」
マイが二人を、現実世界に引き戻す。

『すみません!』
二人が同時に謝り、我に返る。

そして、最後の料理が出てくる。

ザックは、デザートの説明する。
「最後の料理は、マイ姫様が考案した、大好きなアイスクリームとなります」


「やった!わたしこれ大好きなの~ザック最高!」
マイが喜びをあらわにする。
そして、パクパクアイスを食べる。
最後の料理は、小鉢に小さい子供の拳骨げんこつ程の量が、入っている。

ソニアとセイドは、先程の肉料理の余韻よいんを引きずりながら、アイスを食べる。

ソニアは、何度かマイのおやつタイムの時に、食べているので、美味しさは経験済みだが、美味しいと言う表情をしている。

セイドの方は、口に入れた瞬間に目を見開き、ガツガツ食べている。
男性には少し少なく感じる量なので、すぐに食べ終えてしまう。
まだまだ、この王国には、甘未が少ないのだ、その中で生きてきた者には、この甘さは悪魔的である。
(旨すぎる!先程のシャーベットと呼ばれた物も、甘かったが、これはあれ以上に甘く、濃厚で手が止まらなかった。
マイ姫様は、このような物を、毎日・・・・)


そして、ティータイムに入る。
食事を堪能たんのうし、一息ついていた。

ザックがマイに声を掛ける。
「マイ姫様、料理の方はどうでしたでしょうか?」

「最高だったわ!パパ達も大喜びする内容だったけど、ちょっと無理しすぎかな~、かなり作るの大変だし、無理しないでほしいな~」
マイは褒めるが、その後、悲しい顔で、料理人達の心配をしてしまう。

「マイ姫様!ありがとうございます!この料理は特別な時に作りますので安心して下さい!
け、けして無理はしないので!今後ともよろしくお願いします!」
ザックは、マイを安心させるのに必死であった。
マイを悲しませる事などあっては、ならないのだ。

「う、うん・・ザックいつもありがとう」
(ザック怖!必死すぎよ!悲しんでるわけじゃなく、心配しただけなのに~)
マイは笑顔で返すのが精一杯であった。

「ソ、ソニアとセイドさんはどうだった?ちょっと量が二人には少なかったかな?」
マイは話を、ソニア達に切り替える。

「姫さま!最高でした!わたしは、お肉が本当に美味しくて、恥ずかしながら、食事で涙を流したのは初めてでした。
姫さまに、感謝してもしきれません!こんな美味しい物を食べさせて頂いて、ありがとうございます!」
ソニアは、純粋にマイに感謝する。

そして、セイドが答える。
しかし、ソニアの様な笑顔では無く、うつむきながら話し出す。

「自分も、こんなに美味しい料理は、生まれて初めてでした。
とても感謝をしているのですが・・・」

セイドが言葉を詰まらせる。

「どうしたの?何か言いたいことが、有るのなら言ってほしいな」
マイが、料理が気に入らなかったのかなと、心配する。


セイドがマイを見据え口を開く。
「不敬になると、理解した上で伝えます。
自分は、マイ姫様に嫉妬してしまいました。
とても羨ましく、そして悔しく、自分の存在を否定されてる様な感覚になってしまいました。
最後に、何故この食事が王族しか、食べれないのかと・・・」

「貴様!!!」
ソニアが、勢いよく立ち上がり、セイドの胸倉を掴み立たせ、殴り倒す。

マイはセイドとソニアにびっくりしていた。

ザックもセイドに対しものすごく怒っている。
他の給仕達もザックと同じ感情であった。


倒れたセイドの胸倉を又掴み、ソニアが叫ぶ。
「姫さまはな―!自ら食事の改革を今、してるのだぞ!そして料理の作り方も、王城の料理人達を通して、王都に出しているんだぞ!別に隠してるつもりもさらさら無く、今日の料理が毎日な訳無いだろう!王族の食事は姫さまのおかげで、無駄のない質素な食事に様変わりしてるんだぞ!貴様が姫さまの何を知っているのだ!五歳の子供に嫉妬?ふざけるな!姫さまは、もうこの王国を変えてきているんだ!謝れ!今すぐ姫さまに謝れ!!」

ソニアは、泣きながらセイドに叫び続ける。
マイを悲しませたくない思い、ライバルだったセイドが不敬罪になる事の悲しみ。
もし、自分がセイドの立場だったら同じ感情になっていたかもしれない。
その三つがソニアの心の中で渦巻いているのであった。

「ソニアやめて!」
マイが止める。
マイに止められては、ソニアも止まるしかなく、しぶしぶ立ち上がる。

「姫さま!大変申し訳ございません。私がここでしてしまった事は後で、いくらでも仕置きを受けます。
セイドの不敬何卒、何卒お許しを!」
ソニアは、セイドの減刑を求める。

「いやいや二人の事をなんともしないから!怒ってなんかいないわ、わたしも自分が恵まれてると思っているもん。
そして、自分の立場も理解をしてるつもりなの、だからセイドさんの気持ちも、なぐさめになるか分からないけど、多少理解するように、行動しているつもり。
今は、まだ幼く、できる事が少くて、ちょっとずつ、食事を変えていく位の事しか出来てないけど。
必ず、貧しい人達や力の無い人達、そして種族にも前を向ける国作りをする!誓うから!信じてとまだ言えないから、見ていてほしいの!」
マイの声が、王城食堂内に響く。


ソニア、ザック、給仕達は号泣しながらマイの言葉を受け止めていた。

そして、セイドは、マイに臣下の礼をし、涙を流していた。
「マイ姫様!寛大な御心しかと承りました!このセイド、しかと貴方様の事を御身近で見とうございます。
是非自分を、下僕でもなんでもしますので御身近に!」
(この方の傍に居たい!守りたい!命を懸けてでも・・・)

まさかの、開心である。
しかも、側近として召し抱えてほしいと言う図々しさだ。

【いやいや!図々しすぎでしょ!!】
マイ以外の食堂に居る者は、みんな心の中でツッコミを入れている。

「下僕になんてしないから、まずは、この後の視察の護衛をよろしくね、セイドさん」
マイが綺麗にスルーする。


「まずは、護衛役をきちんとこなせとの命令ですね!
後、ソニアと呼ぶように、自分の事もセイドとお呼び下さい!」
セイドの勘違いに拍車が掛かる。

マイが答える。
「あ、うん、まずとかは無いんだけど・・・」
(あ、これ何言ってもダメなやつね・・ほとぼりが冷めるまで待ちますか・・)

冷める事を待つマイだが、冷める事が無いと言う考えには気付かないのであった。
そして、話を変え視察に行く方にシフトする。
実は、朝食の時間が押していて、予定時間より遅れているのだ。

「あっ、ザック、例の準備は出来てる?一応匂いで分かるのだけど確認」

ザックが答える。
「もちろんです!完璧に用意致しました。
城を出る時に、ソニア様に持っていってもらいますので、安心して下さい」

「ザックありがとう、みんなにもありがとうと伝えてね!
それじゃあ、ソニア、セイド早く準備をして出かけましょ!」

三人は食堂を出ていく。

(朝から色々有ったけど、何とかセイドが開心してくれてよかったわ)
マイへの開心では無く、信者化してしまっていて、この後、こじらせる事を、マイはまだ気付かないのであった。
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