2nd Life

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第1章 幼少期

16話 姫の政治手腕

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[コルラド王城 マイの部屋]

カイン学園長との交渉から約1月がたち季節は初夏。

今日は週末、基本学園は土・日が休みである。
この世界(まだ星と言う概念が無い為名前が無い)は1年を12月で区切り、1月を4週28日、1週間を7日で構成されている。
なので1年は336日で4年に一度1日だけ多くなる。
それがこの星の公転周期である。

そして、この日をコルラド王国やゼム王国では一年の真ん中の月6月29日神聖な日としている。
マイの誕生日も4年一度の6月29日であった。
4年に1度しか誕生日が来ないが、前日の6月28日に毎年誕生祭が王都で行われる。

これは王族達が強要きょうようしている訳では無く国民が自主的にマイを祝うために行っているのだ。

国王の誕生祭は行われるが王妃の誕生祭は無いので、コルラド王国は、年3回(収穫祭を含む)と4年に一度の神の日(この日もマイの誕生日)のお祭りがあるのだが、国王より多いので、姫の人気(信者)がうかがえる。

話は逸れたが、マイが学園に通って約1か月、入学して以来、一応なにも大きなトラブルも無く過ごしていた。
ミーとキルとは、かなり仲良くなり、いつも一緒に、授業を受けている。
ミーはバル・ハンドヒル宰相の一人娘で、キルは王族親衛隊第13部隊隊長ロンド・ゼクス(ソニアの上司)の三男で二人とも上位貴族である。

そこにコルラドの姫が一緒なのだから、他の同級生は気を使ってしまい中々マイに近づいてこないのであった。

ガイは相変わらず王族を毛嫌いしている様子で、いつも数人の取り巻きと一緒に居るがちょっかい等は出してこない。

マイは、窓際の机の椅子に座り、レウスと一緒にどうやったらみんなと仲良くなれるか考えながら基礎魔法の練習をしていた。

5歳になったマイは、ユリウスの空いた時間に基礎魔法を教えてもらっていたがすぐに初級・下級魔法をマスターしてしまった為、基礎の反復と精度の練度を上げる魔法の練習をしている。
ユリウスからは、7歳になるまでは中級魔法の使用を禁止されている。
今は、人差し指にライターぐらいの火を灯しているのだが、青白い光を発光させている。
これは、火の温度を極限まで上げコントロールしているのだ。
この基礎魔法は魔法適正が有っても赤い火(約600度程度)を灯す程度だが、マイは約10000度の火を出している。


説明するとマイは5つの魔法を同時に使用している。
1つ目は、火の魔法これは火を灯し燃焼を促進する基礎魔法、マイは気付いていないが、レウスと契約している為ものすごく精神効率がいい。
2つ目と3つ目は、風の魔法、酸素を送り燃焼を促すことと、空気中の水分を分離させ水素を生成し送っている。
4つ目と5つ目は、水の魔法でマイの体を熱から保護している事と、火の熱から周りに影響が出ないよう、火を囲うように冷気のまくを2重にしかも1層と2層の間に空気を入れてある。


この5つの魔法を同時に展開し、維持しているのである。
同じ属性の魔法を2つ以上重ねるのも並大抵ではないのだが、マイの知識と膨大な精神力があって初めてできる魔法練習だ。
それは、レウスに膨大な精神力(魔力)と言う食事を毎日与えていた為、マイの魔力は底上げされていた為できる。
これを、普通に会話しながら行っていると言う魔法コントロールは、驚愕きょうがくの一言である。



「レウス~ママみんなと仲良くなりたいんだけどみんな気を使っちゃうの~どうしたらいいかな~」
『ク~ン』

レウスはマイの膝の上で甘えながら心配そうに見上げている。
レウスもまだ成長途中なので、マイの気持ちや人語を理解はしているが言葉はまだ話せない。


「レウスごめんね~心配かけちゃったね」

マイもレウスの気持ちをある程度感じる事ができる為、心配を掛けた事に反省する。


「お姫様だし、レウスのお母さんなんだからしっかりしないとね!」

ふんすと、マイが気合を入れている。

『クルー!』

レウスも嬉しそうに鳴く。


コンコン。


マイの部屋の扉がノックされる。

「どうぞ」

マイは返事をし魔法の展開をやめる。


「姫さま、失礼します。ユリウス様が学園の修学旅行の段取りが完了したと、報告を受けたのでお迎えにきました」

ソニアが綺麗なたたずまいでマイを迎えに来た。

「あら!
さすがユリウスね、まだ一月しか経っていないのにね」

「はい!さすがユリウス様かと」

マイとソニアはユリウスの行動力の高さに敬意を表している。

マイはレウスをそっと大事そうにレウス専用のベットに連れて行く。

「ママちょっと出かけてくるね」

チュ

マイはレウスのほほにキスをして寝室から戻ってくる。

(うらやましい・・・)

ソニアは心の中で泣いている。

『キュルル~』

レウスは甘い鳴き声を上げた。


「行こうソニア!」

「はい!」

マイとソニアは、ユリウスの部屋に向かう。


[コルラド王城 ユリウス丞相の部屋]


「ユリウスに会いに来ました」

ユリウスの部屋の前の衛兵がさっと扉を開ける。

基本ユリウスが居るときは、マイが来るので衛兵も慣れている。
ただマイが廊下を歩いてくるだけで、口角が下がって幸せを感じてしまうのは衛兵のお決まりコースだ。


衛兵の中では、ユリウスが居る時の部屋の護衛は、ご褒美と呼ばれている。
(王族エリアには大元の扉の前では王族親衛隊達が護衛してる為、政務室関係が有るエリアと城門でしか一般衛兵は、マイに会えない)


「失礼します」

マイが扉前で会釈し入っていく。
そして、ソニアがその後に続き入室する。

今回ユリウスは、ソファーの方で立って待っていてサッと会釈しマイをソファーの対面に誘導する。

ソニアは簡易キッチンに向かい飲み物を用意する。

ソニアが冷たい紅茶をユリウスとマイの前に置き、マイのソファーの後ろに待機しようとする所をマイが止める。

今回は、マイが事前にソニアを阻止しソファーに座らせる。


「ユリウス修学旅行の件、決まったと聞いたのだけど報告を、お願いしても?」

「わかりました。ではご報告致します。
まず、開催日は今から約1か月半後の、7月半ばには行けるかと。
続けて、内容説明になります。
今回の旅行日程ですが、姫様の言われていた通りに17泊18日になります。
通常片道1週間になりますが、只今、公共工事として、街道整備を急ピッチで行っています。
なので、往復12日で行ける道のりになります。
カジュの滞在期間を長くし、5日間となります。
後、道中の宿泊先ですが、王妃と姫が居る為、野営はしません。
場所はこちらで決めました。
ホルン領ビズ・ホルン領ハッカ・獣人自治区マロン・街道沿いの宿泊施設・ゾイド領キッシュ・ゾイド領カジュと言う順番で、帰りはこの逆になります。
街道沿いの宿泊施設は、只今建設中です。
ここは、この先も王国民が使用できるので、かなり交通の利便がよくなります。
姫様はこれも見越して計画を進めていたかと思いますが?」

「ええ、活性化に繋がる事は見越していたの、でも重要なことは、公共工事が増える事で民の仕事が増え、尚且なおかつ情報網も整備される事、後、民や商人達が流動するようになる事が、大きいかな~」

マイは顎に手を当てながらニコっとユリウスに笑いかける。

「す、すばらしい~!!」

めずらしくユリウスは歓喜していた。
ここまで考えて王国を動かすとは、思っていなかったのである。
姫と言う立場を最大限に活かした、今マイが政治にたずさわれる最善策である。
ユリウスはそれを瞬時に理解したのだ。

一人キョトンとしている者がいる。
ソニアである。

マイがすごい事をしているのは、ユリウスのリアクションで分かるのだがピンとは来ていない。

「ユリウス様?姫さまはどれ程の事を?」

ソニアがユリウスに聞く

「ソニアに分かりやすく説明しましょう。よろしいですか姫様?」

マイが黙ってうなずき、ソニアの入れてくれた紅茶を優雅に飲む。

「まずは、今回の計画、修学旅行によって経済が活性化するのはソニアでも、分かると思います。
ただ私やソニアが想像しているより、かなりの効果が期待される事と、貴族達にくさびを打てるという事。
経済効果はまだ予想を立てやすいですが、後者の方は政治にうとい者は気付きずらい事でしょう。
まず、貴族達はある程度自分達は特別であると、民の上に立つべき人物であると思いがちなのです。
なので、自国領の民を税の徴収ちょうしゅう対象としか思わない貴族や、下手をすると、奴隷程度としか思わない貴族も出てくるのです。
しかし、姫様は逆の考えなのです。
民たちが居るから自分たちの地位があると、民たちが居るからこの王国が成り立っていると。
そしてこの事を、貴族たちに突きつける事になると。
詳しく説明すると、街道の整備を王国内で行うと物流が良くなります。
それに商人たちが気付き早急に動き出します。
商業が活性化すると、王国民も流れ出します。
するとどうでしょう、居心地が良く稼げる領に移動していきます。
それを領主達は、一生懸命考え行動しないといけなくなります。
民の流出を防ぎ、増やしていかないといけなくなるからです。
街道整備に伴う、情報拡散もこれに拍車はくしゃを掛けます。
あそこの領は、民をないがしろにするぞ等、噂が出ると領主たちは困るわけです。
民をしいたげられない状況を作る。
さらには、虐げてきた領の排除まで考えているかもしれません。
これらの内容を、姫様は、姫と言う立場であるが故にできる事ですが、私達大人を利用する形で実現しようとしてるのです。
しかも、私たちが政治の場でこの様な事を発信するとまず数か月単位で計画し、そこから議論となります。
それを、学園の行事として行う事で、その内容は誰も気付かずに浸透していくのです。
ソニアどうですか?姫様の考えを理解できましたか?」


ソニアは号泣していた。
ここまで王国民を大事にしている事、そして政治手腕。
ソニアも元孤児であった、たまたま才能があったのと、ユリウスに出会った事で、今の地位に居られている事をソニアは忘れたことが無い。
一般の孤児たちの状況も理解しているし、平民の暮らしも裕福ではけして無いのだ。
それを、根底から改革して行こうとしてるマイ。
もう、神なのではないかと言うほどの熱量でマイを見つめながら号泣していた。

「ひめしゃま~!!」

ソニアが号泣している顔を、マイがそっとハンカチで拭う。
そして、そっと胸に頭を埋めさせる。

又、ソニアが号泣する。

よしよしとマイがソニアの頭をなでる。

ユリウスの部屋でしばらく泣き声が響いていた。



お気付きだろうか、マイはただカジュに行きたいが為だけで、ここまで事態が動いている事を。


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