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1章
8話「エンゲージ、しましょう」
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「さあ、私と契約してこの現界をちょっくら救ってみましょう。大丈夫です。私は強いので。レッツエンゲージ」
今日出会った異国風な美少女ミシア(巨乳)。時々口調がおかしかったり言い回しがおかしかったりするがそれはさておき、これまでで既に、水城からすると物凄く迷惑な話を押し付けられているわけだ。
生活の保障とか守りますよ、なんていう言葉の何を信じればいいのかわからない。確かにミシアには異能力的な力があり、加えて物凄く強く、襲撃者を撃退したりコンビニを直したりもした。しかして水城にとってそれは、実際には直接自分には関係の無いもので、巻き込まれているだけだという事。馬鹿でもわかる現状。
「はぁ……」
心からの溜め息。
「ふんす」
物凄い剣幕の美少女。
「あのさ」
「なんでございましょう」
どんな質問にも答えてやるぞと言わんばかりの悠然さを押し出すミシア。
「もし仮に契約したとして、契約主との主従関係が結ばれたお前は、どこに住むわけ?生活費は?言っておくが俺は出せないぞ」
まあ、水城が危惧していたのは自分の日常の事だけではない。もし仮にここにいる彼女が『居候させてくれや』とも言い始めれば、当然それには相応の金がかかるわけで。
「契約魔ですから。当然この屋根の下で共に過ごします」
「いや無理」
「いいえ、これは極秘のお話ですが、総督府直属の契約魔と契約した契約主が契約魔を養うための生活費を用意出来ない場合……例えば契約主が学生だったりした場合は、総督府から相応の資金が毎月送られるようになります」
「なんやて」
反応がおかしいがこれは水城の驚き。
「つまり、金の面に関しては気にする必要が無いと?」
水城がそう聞くと、ミシアはゆっくり頷く。
「契約主に選ばれた方は常に自身の命の危機と戦う事になります。御神総督府は契約主に少しでも恩恵があるようにと、これらを報奨として与える事にしているそうです。なので心配する必要はございませんよ」
……つまり、戦い以外は普通に生活ができる上、頑張り次第で毎月給料的な感じでお金も入ると?
水城は思案する。
「うーん……」
上手く行けばプラスだらけの生活になるかもしれないのだ。金銭面は元より、そもそも考えてみれば、頭のおかしそうなこの異国風『美少女』は腐っても『美少女』だ。そんな『美少女』と毎日を過ごせる事に加え、自身をメイドと称しなんでもします。とも言ったのだ。生活的な面は何一つ不自由しないのでは。
「さあ、水城様。エンゲージでございます。契約でございます」
鼻息を荒くして顔を近づけるミシア。無表情だが。
「いや待て」
しかし水城にはまだ気になる事がある。
「契約主として戦うって言ったって、どうするんだよ。俺は異世界的な力は持ってない一般人だぞ?」
そう、戦う力についてだ。水城は生粋の現界人なので、異世界的な力など持ってはいないし、まして不良を撃退する程度の戦闘技術しか持ち合わせていない。おおよそ戦力になるとは思えないのだ。
「ご安心を。契約魔と契約した契約主は契約魔の力の最低三割から最大十割まで扱えるようになります。戦闘技術に関しても、契約魔と契約する事で身体に動きがインプットされるため、心配する必要はないかと」
水城はこの時、圧倒的勝利だと思った。
なにせ、オランジュとやらで神剣使いとして有名?だった、それなりに強い契約魔のミシアと契約し、その力も扱えるようになり、さらには生活、金の保障もされるなら、利点だらけなのだ。
それに、御神には他にも主従関係にある契約主がいるわけなのだから、戦闘に関して万が一の事があれば他に投げるという選択肢もある。後は普通に生活して普通にこの世界の天剣とやらを守ればいいわけで。
「よし、よしよしよし。それなら、ああ、契約しよう」
諸々の結果、自分の普通の生活は変わらず続けられるという事になる。ならば、水城は迷う必要が無い。もしかして結構楽なんじゃね?と考えてしまうまである。
「そうですか!では早速、さあ始めましょう」
ここにきて初めて表情を明るくしたミシア。水城の前に手のひらを差し出し、その上に手を重ねるように促す。なるほど、笑顔になるとより美少女だ。
「契約、開始……」
「うお」
重ねられた二人の手のひらから眩い光が溢れ出し、水城の頭の中に、戦闘に関するあらゆる知識が入ってくる。大量の情報に、水城は激しい頭痛を催したが、それもすぐに終わり、そして光が収まる頃。
「完了でございます」
僅かに頬の上気したミシアは、溜め息を吐くと、水城の手を強く握り、無表情の中にあるしっかりとした瞳で水城を見つめる。
「これからあなたは、私ミシアの正式な契約主となります。この主従は永遠のもの。この忠誠はあなたのために。この命、あなたに捧げましょう」
そして、手を離して一礼する。その所作は美しく、水城も思わず見惚れてしまう。
「あ、ああ。まだよくわかってないが、とりあえずよろしく?」
「……はい!」
つられて一礼をした水城に、ミシアは明るく返事をした。
で、晴れて契約が完了し、愉快で楽しい契約主ライフ初日の夜がやってくるわけだが。
「そういえば、水城様のご両親は何をなされている方々なのですか?」
「ん?おらんぞ」
「え」
さりげなくミシアが投げかけた質問。水城の両親について。水城がいないと答えると、ミシアは虚をつかれたように固まる。そして、
「あの、それは、もしや、本当に、一つ屋根の下で、水城様と、と、と、と……ぼふ」
見る見るうちに真っ赤になり。そして、蒸気を出しながら倒れてしまう。
「まあ、異能バトルモノの主人公なんて大抵両親いないし、今更気にしてもな……」
テンプレート。テンプレ通りの、『主人公の親は大体出張してるか、そもそもいない』設定も加わり、それこそ、主人公としては最適な条件を手に入れた水城であった。
今日出会った異国風な美少女ミシア(巨乳)。時々口調がおかしかったり言い回しがおかしかったりするがそれはさておき、これまでで既に、水城からすると物凄く迷惑な話を押し付けられているわけだ。
生活の保障とか守りますよ、なんていう言葉の何を信じればいいのかわからない。確かにミシアには異能力的な力があり、加えて物凄く強く、襲撃者を撃退したりコンビニを直したりもした。しかして水城にとってそれは、実際には直接自分には関係の無いもので、巻き込まれているだけだという事。馬鹿でもわかる現状。
「はぁ……」
心からの溜め息。
「ふんす」
物凄い剣幕の美少女。
「あのさ」
「なんでございましょう」
どんな質問にも答えてやるぞと言わんばかりの悠然さを押し出すミシア。
「もし仮に契約したとして、契約主との主従関係が結ばれたお前は、どこに住むわけ?生活費は?言っておくが俺は出せないぞ」
まあ、水城が危惧していたのは自分の日常の事だけではない。もし仮にここにいる彼女が『居候させてくれや』とも言い始めれば、当然それには相応の金がかかるわけで。
「契約魔ですから。当然この屋根の下で共に過ごします」
「いや無理」
「いいえ、これは極秘のお話ですが、総督府直属の契約魔と契約した契約主が契約魔を養うための生活費を用意出来ない場合……例えば契約主が学生だったりした場合は、総督府から相応の資金が毎月送られるようになります」
「なんやて」
反応がおかしいがこれは水城の驚き。
「つまり、金の面に関しては気にする必要が無いと?」
水城がそう聞くと、ミシアはゆっくり頷く。
「契約主に選ばれた方は常に自身の命の危機と戦う事になります。御神総督府は契約主に少しでも恩恵があるようにと、これらを報奨として与える事にしているそうです。なので心配する必要はございませんよ」
……つまり、戦い以外は普通に生活ができる上、頑張り次第で毎月給料的な感じでお金も入ると?
水城は思案する。
「うーん……」
上手く行けばプラスだらけの生活になるかもしれないのだ。金銭面は元より、そもそも考えてみれば、頭のおかしそうなこの異国風『美少女』は腐っても『美少女』だ。そんな『美少女』と毎日を過ごせる事に加え、自身をメイドと称しなんでもします。とも言ったのだ。生活的な面は何一つ不自由しないのでは。
「さあ、水城様。エンゲージでございます。契約でございます」
鼻息を荒くして顔を近づけるミシア。無表情だが。
「いや待て」
しかし水城にはまだ気になる事がある。
「契約主として戦うって言ったって、どうするんだよ。俺は異世界的な力は持ってない一般人だぞ?」
そう、戦う力についてだ。水城は生粋の現界人なので、異世界的な力など持ってはいないし、まして不良を撃退する程度の戦闘技術しか持ち合わせていない。おおよそ戦力になるとは思えないのだ。
「ご安心を。契約魔と契約した契約主は契約魔の力の最低三割から最大十割まで扱えるようになります。戦闘技術に関しても、契約魔と契約する事で身体に動きがインプットされるため、心配する必要はないかと」
水城はこの時、圧倒的勝利だと思った。
なにせ、オランジュとやらで神剣使いとして有名?だった、それなりに強い契約魔のミシアと契約し、その力も扱えるようになり、さらには生活、金の保障もされるなら、利点だらけなのだ。
それに、御神には他にも主従関係にある契約主がいるわけなのだから、戦闘に関して万が一の事があれば他に投げるという選択肢もある。後は普通に生活して普通にこの世界の天剣とやらを守ればいいわけで。
「よし、よしよしよし。それなら、ああ、契約しよう」
諸々の結果、自分の普通の生活は変わらず続けられるという事になる。ならば、水城は迷う必要が無い。もしかして結構楽なんじゃね?と考えてしまうまである。
「そうですか!では早速、さあ始めましょう」
ここにきて初めて表情を明るくしたミシア。水城の前に手のひらを差し出し、その上に手を重ねるように促す。なるほど、笑顔になるとより美少女だ。
「契約、開始……」
「うお」
重ねられた二人の手のひらから眩い光が溢れ出し、水城の頭の中に、戦闘に関するあらゆる知識が入ってくる。大量の情報に、水城は激しい頭痛を催したが、それもすぐに終わり、そして光が収まる頃。
「完了でございます」
僅かに頬の上気したミシアは、溜め息を吐くと、水城の手を強く握り、無表情の中にあるしっかりとした瞳で水城を見つめる。
「これからあなたは、私ミシアの正式な契約主となります。この主従は永遠のもの。この忠誠はあなたのために。この命、あなたに捧げましょう」
そして、手を離して一礼する。その所作は美しく、水城も思わず見惚れてしまう。
「あ、ああ。まだよくわかってないが、とりあえずよろしく?」
「……はい!」
つられて一礼をした水城に、ミシアは明るく返事をした。
で、晴れて契約が完了し、愉快で楽しい契約主ライフ初日の夜がやってくるわけだが。
「そういえば、水城様のご両親は何をなされている方々なのですか?」
「ん?おらんぞ」
「え」
さりげなくミシアが投げかけた質問。水城の両親について。水城がいないと答えると、ミシアは虚をつかれたように固まる。そして、
「あの、それは、もしや、本当に、一つ屋根の下で、水城様と、と、と、と……ぼふ」
見る見るうちに真っ赤になり。そして、蒸気を出しながら倒れてしまう。
「まあ、異能バトルモノの主人公なんて大抵両親いないし、今更気にしてもな……」
テンプレート。テンプレ通りの、『主人公の親は大体出張してるか、そもそもいない』設定も加わり、それこそ、主人公としては最適な条件を手に入れた水城であった。
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