16 / 23
第二章 狂った愛情
07
しおりを挟むその時の雅樹の顔は、嫌悪に歪んでいた。
「おい、雅樹…」
西尾と俺が否定したことで、自分達が不利な状況に立たされていると察知したのか、雅樹の後ろに隠れていた内のひとり、小野(オノ)が不安そうに声をかけた。
その声色からは、はっきりと"もうやめとけ"という意味が感じられた。
雅樹もそれを理解したのか、チッと舌打ちをして座っていた机から降りるとそのまま教室を出て行こうとした。
小野達も慌ててその後を追う。
雅樹たちがいなくなると教室にいた他のクラスメイトもまるで何事もなかったかのように喋り始め、教室はいつもの雰囲気に戻っていった。
俺と西尾に向けられる侮蔑と好奇の視線は残ったまま…
俺はその視線に耐え切れずに教室を飛び出した。
もうすぐ授業が始まる。
ひとりになる場所が欲しくて屋上へ向かおうとしたが、廊下を曲がったところで堪えきれずに涙が溢れた。
「…っ」
拭っても拭っても止まることなく溢れてくる涙に俺は拭うのをやめ、ただただ嗚咽をもらし続けた。
最近、泣いてばっかだな…
どれくらい泣き続けただろう。
突然、後ろから抱きすくめられた俺は慌てて涙を拭った。
…っ、
「ちょ、、、…なに?」
慌てて後ろを見ようとしたが、がっつりホールドされていて振り返ることができない。
それどころか背中から肩へ体重をかけられ、俺はよろけた。
「ぅわっ…、あぶな!」
「…」
その時俺はハッとした。
そうだ。
無言でこんな事してくるのは、絶対アイツしかいない。
そう確信した俺は、首の辺りに回された腕を両手で掴んで振りほどこうとした。
「も…離せよっ、、西尾!」
なかなかふりほどけない腕に苛々した俺は、そう言い放った。
「嘘つき」
背後から返ってきたその言葉に俺はビクっと心臓が跳ねた。
正確に言えば、その声に。
「ま、さき…?」
怖くて後ろが向けず、前を向いたままおそるおそる尋ねた。
「やっぱりな、西尾とそういう関係だったんだ」
「ちがっ…」
さっきまでどんなに力を込めても離れなかった腕がスッと離れていく。
とっさに振り返ると、やはり後ろにいたのは西尾ではなく雅樹だった。
「何が違うんだよ」
「痛…ッ」
力ずくで肩を壁に押しつけられ、行く手を阻まれる。
「お前は俺についてくると思ってたんだけどなぁ」
「…え?」
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
昭和から平成の性的イジメ
ポコたん
BL
バブル期に出てきたチーマーを舞台にしたイジメをテーマにした創作小説です。
内容は実際にあったとされる内容を小説にする為に色付けしています。私自身がチーマーだったり被害者だったわけではないので目撃者などに聞いた事を取り上げています。
実際に被害に遭われた方や目撃者の方がいましたら感想をお願いします。
全2話
チーマーとは
茶髪にしたりピアスをしたりしてゲームセンターやコンビニにグループ(チーム)でたむろしている不良少年。 [補説] 昭和末期から平成初期にかけて目立ち、通行人に因縁をつけて金銭を脅し取ることなどもあった。 東京渋谷センター街が発祥の地という。
女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男
湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。
何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる