マネキン

えんげる

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プロローグ

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ーー駄目だ、動けない…


締め切った入り口のガラス戸からは、ひっきりなしにざあざあと強い雨音が聞こえてくる。


やや蒸し暑い店内で、男は首から上を固定されたように動かさない。


否、動かせないのだ。


男の視線の先には人の形をした白い備品。


手をこちらに伸ばし、床に伏して倒れた格好になっている。


男はここから視線を外せない。


脅威が起き上がらないように。


「あれ」が見えなくなった瞬間、獲物に向かう蜘蛛の如き速さで迫って来ないように。


拘束できるような道具を持って来たいのだが、顔を固定されてはそれも出来ない。


ーー早く、妻が戻って来てくれれば。


祈るような気持ちの男の首筋に脂汗が一筋流れ落ちた。


突如別方向から聞き慣れた声がした。


「あんた、何やってんの?」


祈りが届いた、と男は思った。


顔を妻の方へ向けず、過日店先に立っていた、眼前の白い人型を指さして、男は叫んだ。


「早く、そいつを縛れ!  何処かに捨ててきてくれ!」


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