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君がいない
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林優斗は、目を覚ますと7時半になっていることに気づいた。
「やべ!!もうこんな時間か」
半袖の白シャツに着てネクタイだけを手にとって
一階へと降りていった。
「母さん、起こしてくれてもいいじゃん」
「優斗、そろそろ自分で起きなさい。」
険しい顔しながら、ご飯を準備してくれている。
真向かいに座っている父の信也が
「もうお前も22だ。社会人としての自覚を」
「はいはいはい!言うことわかってますよ」
白シャツにネクタイを整えると、
「じゃあ。行ってくるね」
玄関に向かい、勢いよくドアを閉めた。
優斗はビシッとワックスで決めては、学校へと向かった。
私立武市高校の教師をしていた。
物心つく頃から、教師という職業に憧れていた。
小学校の3年生の頃に、担任の奥田先生をして恩師が優斗によくしてくれていたからでもある。
生徒思いの奥田先生は、女子からも男子から好まれる性格だった。
あの頃、優斗は口数が少なかったせいか、頼れる友達もいなかった。
登校する時に、同じクラスにいる「相田ハル」は、からかいはじめることもあった。
そんなときに、武市高校に就任してきた「奥田剛先」と名札を付けた先生と出会った。
当初、奥田先生のことはそんなに好きではなかったが今どきの熱血教師というよりかは、少し冷静な対応に優斗はどこか惹かれるものがあった。
からかわれる優斗を見かけるたびに、冷静に対応してくれた。
そして高校時代の3学年の終わり頃、卒業式の時だった。
奥田先生からびっくりするような発言が面談の時に聞かされた。
「自分もね。」ボールペンを一回しながら、話を始める。
「君と同じ年頃、他の子との距離を置いていたんだ。というよりかは、どう友達ができるのかわからなかったのかもしれない。」
真面目な瞳の奥から悲しいものがひしひしと伝わってきていた。
「小学校の頃ね、1人仲のいい友達はいたよ。大介くんと言うんだけど。いじめられてたんだ。クラスに必ずいるだろ、いじめの主犯的なやつって。いつも大介くんと帰るたびにそいつに呼ばれるんだよ。あいつと絡むなとかね。」
「それで?」勇斗が言う。
「この年になって分かるんだ、なぜ絡むなというのが、彼は自分いがいの誰かと大介が遊ぶのに自分いがいのやつのもので扱われたくない。」
「ようは自分のおもちゃとしてしか思っていなかった。」
「ひどい話ですね」
「大介くんとはそれっきり合わなくなってね。転校したよ。自分が先生になる理由もこんな不純な関係になる友達だけには今の君たちになってほしくない、それだけの理由さ。」
「君の眼差しはあの頃の自分と同じに見えた。」
勇斗は奥田先生の本心が理解できたような気がした。
「先生。自分も先生みたいな職業に就きたいです。自分の将来、目指す先が見えてきたような気がします。」
奥田先生は、少しはにかんだ。
「ああ、君が思う未来になればいいな」
「はい」
卒業式の日に、勇斗は先生と誓った。
「この青空の下、誰もが笑顔になれる学校になれることを」
「やべ!!もうこんな時間か」
半袖の白シャツに着てネクタイだけを手にとって
一階へと降りていった。
「母さん、起こしてくれてもいいじゃん」
「優斗、そろそろ自分で起きなさい。」
険しい顔しながら、ご飯を準備してくれている。
真向かいに座っている父の信也が
「もうお前も22だ。社会人としての自覚を」
「はいはいはい!言うことわかってますよ」
白シャツにネクタイを整えると、
「じゃあ。行ってくるね」
玄関に向かい、勢いよくドアを閉めた。
優斗はビシッとワックスで決めては、学校へと向かった。
私立武市高校の教師をしていた。
物心つく頃から、教師という職業に憧れていた。
小学校の3年生の頃に、担任の奥田先生をして恩師が優斗によくしてくれていたからでもある。
生徒思いの奥田先生は、女子からも男子から好まれる性格だった。
あの頃、優斗は口数が少なかったせいか、頼れる友達もいなかった。
登校する時に、同じクラスにいる「相田ハル」は、からかいはじめることもあった。
そんなときに、武市高校に就任してきた「奥田剛先」と名札を付けた先生と出会った。
当初、奥田先生のことはそんなに好きではなかったが今どきの熱血教師というよりかは、少し冷静な対応に優斗はどこか惹かれるものがあった。
からかわれる優斗を見かけるたびに、冷静に対応してくれた。
そして高校時代の3学年の終わり頃、卒業式の時だった。
奥田先生からびっくりするような発言が面談の時に聞かされた。
「自分もね。」ボールペンを一回しながら、話を始める。
「君と同じ年頃、他の子との距離を置いていたんだ。というよりかは、どう友達ができるのかわからなかったのかもしれない。」
真面目な瞳の奥から悲しいものがひしひしと伝わってきていた。
「小学校の頃ね、1人仲のいい友達はいたよ。大介くんと言うんだけど。いじめられてたんだ。クラスに必ずいるだろ、いじめの主犯的なやつって。いつも大介くんと帰るたびにそいつに呼ばれるんだよ。あいつと絡むなとかね。」
「それで?」勇斗が言う。
「この年になって分かるんだ、なぜ絡むなというのが、彼は自分いがいの誰かと大介が遊ぶのに自分いがいのやつのもので扱われたくない。」
「ようは自分のおもちゃとしてしか思っていなかった。」
「ひどい話ですね」
「大介くんとはそれっきり合わなくなってね。転校したよ。自分が先生になる理由もこんな不純な関係になる友達だけには今の君たちになってほしくない、それだけの理由さ。」
「君の眼差しはあの頃の自分と同じに見えた。」
勇斗は奥田先生の本心が理解できたような気がした。
「先生。自分も先生みたいな職業に就きたいです。自分の将来、目指す先が見えてきたような気がします。」
奥田先生は、少しはにかんだ。
「ああ、君が思う未来になればいいな」
「はい」
卒業式の日に、勇斗は先生と誓った。
「この青空の下、誰もが笑顔になれる学校になれることを」
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