廻る

おかあさんのビンタ

バシン！！
　宗介の頬が目につくほど痛そうに見えていた。

稔にとって小さい頃からビンタをされたことがなかった。厳格ではない勝と自由奔放すぎる茂子は、子供に対してはしつけ以外の怒鳴りつけはほんとになかったに等しい。
だから宗介がビンタされるのを見て、新鮮ものを観てる気持ちになった。でも、そんな状況に最近は慣れつつある。

涼子は「あんた！またやったわね。」手を挙げながら宗介を見上げていた。

「もうちょっとは、人に優しくなれないの！」さらにビンタが続いた。

今ではこれでも幼児虐待になるのだろうか。そんなこともおかまないなしに涼子は怒りつけた。

「痛いよ！ケイちゃんとこのお母ちゃんだってそんなことしないよ！」宗介が友達を例に盾突く。

「それとうちの家族は違います！宗介！したらいけないことをずっと言ってるわよね。人を傷つける言葉は使わない・暴力は振るわないって。何回言えばわかるの？」

「知らないよ。僕はまだ幼稚園児だもん」言葉が達者とはこういうことなのだろうか、稔はふと思ってしまう。

「まあまあ、もういいじゃないか。稔、持つの手伝ってくれるかい」キッチンからテーブルへ美味しそうなポトフとサラダが運ばれる。

「はあーい。」キッチンまで向かうと

「涼子さん、ほんとにお母さんだね。俺もね。小さい頃このぐらい厳しく育てられたから、わかるよ。そうやって世間を見につけていくんだろうけど」勝は、涼子を静かに見守っていた。

「なんていうんだろうね。なんかお母さん＜茂子＞に似てきたような気もするけど。つんけな態度が」稔が言う。

「確かにね」クスっと勝は笑いながら、料理の支度をした。

「ただいまー。勝さーん。」

玄関から茂子の声が聞こえてきた。

「噂をすれば！だね」勝が言った。