遠い記憶、遠い未来。

haco.

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過去と未来

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静夜、星空だけがこの世界を支配していた。
森と林が広がる公園内の中、岩肌が目立った大きな崖が存在していた。

崖の中部に大きな穴が掘られている。
穴の中から覗く透吾が外を見ていた。


「久しぶりの外だな・・・」
夜風が肌に当たると寒さを感じる。

長い年を重ねて、やっと目覚めた透吾は「セイカ」の記憶を
頭の中で再生をしていた。

あの時、クローンとして生まれてから、蓮としての時代を駆け巡っていた。
ビルのシェルター室にいた透吾は、ずっと蓮の行く末を夢の中で見ていた。

時代を経てやっと、この時代に辿り着いた。

ずっと透吾の分身を作り出すことは彼にとっては保険みたいなものだ。

だが、それは「元に戻る」糧であるということだけだった。

そのためにも被害を受ける者たちもいたということだ。

蓮見蓮時代に携わってきた者たち。セイカがこの時代で天涯孤独にならないための「仲間」たち。
その者たちによってセイカはより、「家族・友達」としての役目を果たしてくれた。

「ただ・・・」透吾は外の景色を眺めながら言う。

「私は、彼女の心を傷つけていただけなのかもしれない」
透吾は、大きな過ちを犯していた。

「この世界を正すことのために彼らを傷つけてきた」
「セイカ自身を作る出すことは、正しいことだったのか・・」

彼の心の底は「過去と未来」を一つの点で解決策を見出そうとしている。

すべてはセイカに会えば分かると透吾は確信していた。

洞穴から見える森林の奥から、光るものがあった。

「あれは・・・・」

そう、そこにセイカがいる。







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