遠い記憶、遠い未来。

haco.

文字の大きさ
上 下
114 / 121

向かう先へと

しおりを挟む
函館からさらに北北西に向かうと、街並みから一見、山に向かうほど緑が広がっていた。

緑の絨毯が広がる中を足を踏み込んでいく。
午後の晴れ間は暑く、汗をかくほどだ。

進んだ先に大自然の中でぽつんと立っている建物がある。

「城岱牧場展望台」と書いてある。

「展望台で少し休もうかしら」

新しく手にいれた白パーカーを日差し防止に頭まで被せた。

一軒家ぐらいの広さでコンクリート壁の展望台が立っている。

窓から室内をのぞくと、ほとんどが綺麗な状態のままだ。
資料室と表記されたプレートが壁にかけてあり、右の方へ顔を向けると、自動販売機があった。

電気が通ってないおかげでほとんどが真っ暗闇なままだった。

ガラスドアまで向かうと、ドアが開いているか確認してみた。

ガチャ・・・

「開いた・・・」

「失礼しまーす」と恐縮したように頭を下げて入ると、オフィスのような匂いが立ち込めていた。
絨毯の匂いなのだろう。

「なんとも綺麗なままね。北海道はどこもそうなのかしら」

事務なだけで2階建てはない。ただ、壁にもたれかかっているA3サイズほどの写真が4、5枚重なっている。
手にとってみるとこの場所から撮ってある星空だ。


牧場としても使われているこの場所は、夜の風景はとても幻想的である。

5枚目の写真を見てみると、この施設の管理者なのだろう。隣にいる奥さんと笑顔で牧場の真ん中で
撮影されていた。

「もう、いないのよね・・・すべて彼のせいだわ」

透吾の悪口が癖になっていた。

深夜になる頃、外に出ると、空一面が星たちが広がりつづけていた。

「綺麗だわ・・・」

久しぶりにみる星空は、ずっと私を見守りつづけるように存在していた。

それも地球上が誕生してからもずっとかわらないままで。
しおりを挟む

処理中です...