遠い記憶、遠い未来。

haco.

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鳶の唄

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「ポキポキ・・・」

枝の上を歩きながら、山道を登っていく。
茂みを過ぎていくと高台が見えてきた。
高台から見える景色は、目立つように山を捉えていた。

コンパスと地図で確認すると

「舩谷山」と書かれていた。

見晴らしの良い山頂が見えていた。

「舩谷山」まで向かう途中に、小さな野生の植物たちが生い茂っており、
野いちごや、たらの芽にわらびなどが力づよく育っていた。

セイカは、木造の矢印看板「兵庫 福住」方向と「大阪 天王」と表記された山道まで辿りつくと、
休憩をいれた。

「さすがに山道は疲れるわね・・・」

息が上がると、石垣の上に座り込んだ。
同時に、山風で枯れ葉を靡かせていた。

「ピーヒョロロロ・・・・」

見渡すかぎり青空の中に「トンビ」が飛行していた。

「いいなあ・・・私も空飛べたら楽なんだけどなあ」
ため息が漏れながら、リュックからペットボトルの水を一口飲んだ。

彼<山内透吾>を探す旅は、苦労することもあるがこうやって自然に触れて旅を続けることは
とても新鮮なことだった。

ただ、あれからまだ記録ノートを開いていない。
読むことに、逆に知りすぎることが怖く感じていた。

まだ読むべきではないと心の中で決めていた。

地図を開くと、この距離から少し離れたあたりに「瑠璃渓谷」がある。

今日のキャンプ地はそこにしようと決めていた。
渓谷を過ぎていけば、市内へと入っていく。

とりあえず足を揉みほぐして、立ち上がった。

「よし!あと一息超えるか!トンビだってがんばってるんだ!」

震い立たせながら、さらに向かっていった。




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