遠い記憶、遠い未来。

haco.

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4102年の夏

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目の前には青く澄み渡る空と風になびいてる草原が広がっていた。

身体を草原に柔らかく倒れながら、空を見た。

「気持ちがいい・・・」と感じていた。

景色の音に耳を傾けてみると、風と鳥達の囀る音が聞こえて来る。

この景色と一体感を感じていた。

草原の奥に見える丘の上から男が手を振っていた。

「おおい!」

「もう家に帰ろう!ママが待ってるよ。」

私はパパの元まで早く走っていく。

「どうだったかい?セイカ」

「うん。よかった。ありがとう。パパ」

「じゃあ、ママの所まで帰ろう!」

セイカは、パパとよくハイキングしに家から離れた丘の見える草原まで出かけることがあった。

手を繋いで歩くと「いいかい。セイカ。その感覚は忘れないようにだよ。自然は、ありのまま受け止めてくれる。」

パパは、私に自然のエネルギーをいっぱい蓄えるように、身体で覚えさせていた。

物心がつく頃から、パパに教えてもらっていた。

セイカのエネルギーは今や新しい星の糧になったのだから。

そう、この地球に・・・





「じいちゃん、起きて!起きてったら!」

はっ!と夢から覚めると、目の前には、砂浜があり、広大な海が広がっている。

家族連れが何人かいて浜辺で遊んでいる。

私の家は、海に面するところの町で住んでいた。

「もう!じいちゃんったら、せっかく遊びにきてあげたんだから、浜辺まで連れてってよ」

頬を膨らませながら、まだ7歳のルリは私を待ち構えていた。

「もう!おじいさんったら連れてってくださいな。ルリのこと頼みますよ。」とルリの母のミユナは言ってきた。

「ああ、分かったよ」
私は、立ち上がるとルリと手を繫いで近くの浜辺まで向かった。

道路のブルー標識には「二丈町」と書いてある。
ここは九州の福岡にある糸島市。

私は、長年この地に住んでいる。

暑い日差しの中、ルリと浜辺まで降りると、貝採りをしたり水中の生き物たちをルリと一緒に探して遊んでいた。

浜辺で海から流されてきたモノを見ると古い新聞パッドが見えていた。エラーが起きた状態のまま「3581年4月5日」と表示してある。
そんな時代があったなあと思いながらも、またルリともっと先にある岩牡蠣を探しに行った。今やもう4010年の時代。
過去の思い出もただの過去でしかない。


「ねえ!ねえ!じいちゃんあれ!」と海に向かって指差しするとルリが被っていた白のビーチハットが飛ばされた。

海の上に落ちると流されそうになった。
追いかけようとするが、間に合わない。

そんな時だった。

水着を着た20代ぐらいの女性が、飛び込んで、クロールで早いスピードでビーチハットまで辿りついた。

ルリと私は「良かったあ」と腰をおとした。

沖に上がってくる女性は、持っていたハットを差し出した

「はい!帽子!」

「ありがとう!」とルリが言った。

私も「ありがとうございます!」と言うと

「おじいちゃん、もうダメだと思ったよお」とルリ。

「おじいちゃん?ですか?」と女性は不思議な顔でこちらを伺ってきた。

「どう見ても若いですよね?24か5ぐらいに見えます」

ルリとミユナにとっては生みの娘と孫であるが、やはり「不老不死」であることには変わりがなかった。

そう、あの「羽角蓮」は4102年も変わらないままだった。
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