遠い記憶、遠い未来。

haco.

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虚言な言葉

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巨大な人は、エレベーターのボタン50階を押した。
エレベーターから見える外の世界は、近未来だった。
映画で観るような世界が広がっている。
空飛ぶ車が飛び回っていて夕方の景色に街並みが、オレンジ色に染まっていく。

「早く進みなさい」と急かされるように巨大な人がロビーの奥にある部屋へと歩かされた。

「ねえ。ここはどこ?」と声かけても二人は無言になるだけだった。

「社長室」と書かれたプレートがある部屋を大きな手でノックすると
「入りなさい」と部屋の中から聞こえてきた。

室内に入ると、夕焼けが差し込んでいて、顔がよく見えない人影が座っている。

「やっと目覚めたようだね。我が息子」

「ここはどこ?」

「ここはね。これからパパと住む大きな家さ」

椅子から立ち上がると、両手を後ろで結びながらゆっくりと歩いてくる。
父親と呼ばれる男は、笑顔で近くまで来ると笑う顔の額にはくっきりとしたシワが現れている。
年齢もお父さんと呼んでもおかしくない。

「君の名前もきめてあるよ。羽角蓮。いい名前だろ。」

言葉のひとつひとつに不思議な違和感を覚えた。

「ハスミレン?」

「そう、レンと呼ぼう!親しみを込めて」

後ろに立つ二人に目を合わせると

「彼らは君のお世話係だよ。そうインプットしてあるから。」

「これからは家族だよ。よろしく。レン」

レンの頭の中ははっきりとしなかった。
何かが頭の中をモヤモヤさせている。
よくわからない気持ちだ。

言葉は勝手に反応を示す

自分の意志からの言葉ではない。
自動的な発声が、自分から出てくる

「うん。わかった。」
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