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エピローグ
沢田くんと空の青さ
しおりを挟む爽やかな海風が吹き渡る船尾の甲板デッキで、私と沢田くんは名残惜しむかのように小さくなっていく島を眺めていた。
「楽しかったね、沢田くん」
「うん……【おえっぷ( ;´Д`)】」
沢田くんはさっきからちょっと顔色が悪い。どうも船酔いしているみたいだ。
「中で休んでてもいいよ? 沢田くん」
「……大丈夫【どんな時も佐藤さんと一緒にいたいんだ……おえっぷ( ;´Д`)】」
決して口には出さないけど、私のことをこんなにも想ってくれている沢田くんが大好き。
私はちょっぴり沢田くんに近づいて、そっと指に触れる。
【ハートビートがサンライトイエローオーバードライブ!!((((;゚Д゚)))))))】
びっくりしすぎて、心臓が破れそうなんだね。ごめん。
慌てて指を引っ込めると、沢田くんが号泣し始める。
【ああああああ~~!。゚(゚´Д`゚)゚。佐藤さんのおててが! せっかく佐藤さんの方から来てくれたのに、俺のバカ! おたんこなす! 俺の心臓なんてかばっている場合じゃないだろ! そんなもん、ティッシュのように破って捨てなさい! あかん、死ぬ。_(┐「ε:)_チーン】
もう、可愛すぎか。
「それを言うなら『井の中の蛙、大海を知らず』だろ?」
ふと、遠くの方から小野田くんの声がした。見ると、船首の方の甲板でカナメくんとシンゴくんに向かって何か話している。三人はいつの間にか仲良くなったようだ。
「なーんだ、おかず大会を知らない井野中くんの話じゃなかったのか」
「なんか変だと思ったんだよな。大会に出てるくせにおかずを知らないなんて」
「相手選手の陰謀じゃね? と思ってた」
「おかず大会なのにギスギスしてるなあ」
「みんな仲良くすればいいのにな」
「だから、大会じゃなくて大海! 広い海! お前ら、広い海を知らずに狭い世界で生きてちゃダメだぞって、カナメの兄貴が教えてくれたんだよ」
「そうだったのか」
「なんか、ありがた迷惑だったな」
よく分からないけど、ことわざを教えてくれたカナメくんのお兄ちゃんが可哀想。
「それにな、そのことわざには素晴らしい続きがあるんだぞ。『井の中の蛙大海を知らず、されど空の青さを知る』ってな」
「へー。されどってなに?」
「サラダドレッシングの略じゃね?」
「やっぱおかずにはサラダもいるもんな」
「サラダにはドレッシングないときつい」
「お前ら、頼むからおかずから離れて?」
カナメくんとシンゴくんの掛け合いはやっぱり漫才みたいで面白い。
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