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第4章 沢田くんと別荘の夜
沢田くんと朝食
しおりを挟むその後、私たちは朝食をとりに夕食の時の食事会場へと向かった。
そこにはすでに半数くらいのクラスメイトたちがいて、バイキング形式のおかずに目を輝かせていた。私たちもこっそりその列に紛れ込んだから、変に揶揄われたりしないで済んだ。
ただ一人、例外を除いて。
「あっ! おはよう、景子ちゃん! 昨日はどこ行ってたのー⁉︎」
「あ、おはよう、麻由香ちゃん」
私と同じ部屋に泊まるはずだった麻由香ちゃんだ。
「ごめんね。ちょっとうっかりして別の場所で寝ちゃった」
「別の場所ってどこよー?【まさか沢田くんの部屋で一晩中一緒にいたんじゃ……? いや、まさかね、こんな地味な子がそんな大胆なことするわけないか】」
地味で良かった。悲しいけど助かったわ。
「昨日は杏里ちゃんも帰ってこなかったんだよ。三人部屋なのに私一人でさー。寂しいったらもー【二人ともいないなら森島くんのところに夜這いに行っちゃえば良かったー(>_<)】」
杏里ちゃんもいなかったのか。まさか、杏里ちゃんは森島くんと……⁉︎
いやいや、詮索はいけない。私だって沢田くんと一緒に寝ちゃったことを誰かに勘ぐられたくない。
チラッと沢田くんを見ると、バイキングで並んだ厚焼きたまごを嬉しそうに眺めていた。
沢田くんは和食派か。じゃあ私も和食にしよう。
シャケと厚焼きたまごはマストで、あとは冷奴ときんぴらごぼうとetc。納豆も好きだけど、匂いが気になるなあ。やっぱやめとこ。
仕上げにお味噌汁を椀に注ごうとしたら、誰かとおたまを取るタイミングがバッティングしてしまった。
ハッと見上げると、なんと相手は沢田くん!
「【ここはレディーファーストだ!(。・ω・。)】ど、どうぞ……」
「ありがとう、沢田くん」
沢田くんにおたまを譲られ、私は喜んで味噌汁を注ぐ。
並んで置かれた沢田くんのトレイの上には、私と似たようなおかずのラインナップがあった。
【佐藤さん、朝は和食派なのか……。俺もだよ~! 食べ物の趣味が合うって嬉しいヽ(*^ω^*)ノ やっぱり朝はご飯だよね。目玉焼きには何をかけるんだろう。醤油? それともソース? 塩胡椒? 俺はね、ケチャップ……】
えっ、ケチャップ⁉︎
【母ちゃんが目玉焼き失敗してよくスクランブルエッグにしちゃうからケチャップで慣れた……( ;∀;)】
そんな事情を知るのも楽しい。
だけど、楽しかった旅行もそろそろ終わりが近づいてきた。
朝食を食べたら、島を離れなくちゃね。今日の午後から部活の夏練とか、夏期講習に行くって人も結構いるらしい。ちょっと慌ただしい旅行だったけど、みんな昨日一日バカ騒ぎしたから満足度は高かったよねって笑顔で話し合っていた。みんなは私の知らないところでそれぞれ楽しい夏を過ごしたんだなって思うとなんだか嬉しかった。
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