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第4章 沢田くんと別荘の夜
沢田くんと本当の気持ち
しおりを挟む「待ってよ、杏里ちゃん!」
私は麻由香ちゃんを置いて、杏里ちゃんを追いかけた。
杏里ちゃんはわざとスピードを上げて私を置いていこうとしていたみたいだけど、廊下に出る頃には諦めて「あんたもしつこいね」と私を振り返った。
「だって、どういうことか知りたいんだもん」
「……別に。さっき言った通りだよ。私は森島とは付き合わない」
「なんで? 麻由香ちゃんが森島くんのこと、好きだから?」
誰もいない広い廊下で、私は杏里ちゃんを問い詰める。
杏里ちゃんは少しうつむいて、足元に目を泳がせた。
【麻由香のことは正直関係ない】
杏里ちゃんの小さな声が聞こえる。
【あたしがダメなんだ。恋とかそういうの、ガラじゃないし。付き合うって言われてもどうしたらいいか分かんない……】
あらら。
なんか意外と可愛い理由だった。
確かに、クールでカッコいい杏里ちゃんが森島くんにデレる姿ってあんまり想像できない。
「杏里ちゃんは森島くんのこと、どう思ってるの?」
「……別に【嫌いじゃない】」
素直じゃない杏里ちゃんは、プイッと横を向く。
【最初は女なら誰でもいいんじゃないって思ってたけど、最近は変わった気がする。あたしの前ではあんまりチャラチャラしなくなったし、話してると面白いし……けっこういい奴かも】
なんだ、杏里ちゃんもちゃんと森島くんのこと意識して見てるんじゃない。
それなのに、ガラじゃないからって理由で恋のチャンスを棒に振るなんて、やっぱり良くないよ。森島くんも可哀想。
何とかならないかなあ。
その時、食事会場の方で盛り上がる声がした。
「沢田、次スリッパ卓球対決やろう!」
【えええええええ~!!((((;゚Д゚)))))))なぜスリッパ!】
どうやら森島くんがいつものようにクラスのみんなを盛り上げているらしい。わいわいとはしゃぐ声と反して、森島くんの決意めいた真面目な声がする。
【この勝負に勝って勢いをつけたら、佐藤杏里を呼び出すぞ! みんなの前で公開告白したらあいつも引っ込みつかなくなるだろ】
公開告白⁉︎
あわわわわ、それは何だか危険な予感がする!
杏里ちゃん、すごーく嫌がりそうだけど、大丈夫⁉︎
その頃、沢田くんは。
【俺、スリッパ卓球やったことないんだけどーーー⁉︎((((;゚Д゚)))))))】
別の意味ですごいプレッシャーを感じてヤバいことになっていた。
大丈夫⁉︎ 知らない間にけっこう責任重大な役を任されてるよ、沢田くん!
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