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第4章 沢田くんと別荘の夜
沢田くんと恋のエール
しおりを挟む沢田くんが何も言わないので、森島くんはがっかりしたように背を丸めた。
「告白のセリフなんて、自分で考えろってことか……。そうだよな、お前の言う通りだ。人に聞くなんて、情けなさすぎるよな」
【俺、何も言ってないけど……((((;゚Д゚)))))))】
森島くんの深読みに、沢田くんは無言のまま困り続けている。
私と麻由香ちゃんは固唾を飲んで見守っている。
そんな中、沈黙を破ったのはやっぱり森島くんの方だった。
「俺さ……ずっと、モテるってことが楽しくて、そのために努力とかしてきたんだけど……お前を見ているうちに気がついたんだ。世界中のみんなに好きだって言われるより、自分が愛するたった一人の誰かに好きだって言われたい──って」
【俺のどこを見てそんな結論に達したの⁉︎((((;゚Д゚))))))) 世界中の人からむしろ嫌われまくって無視されているんだけど⁉︎】
いやいや、今回は森島くんの方が正しい。
沢田くんは、本当はみんなに好かれているんだもんね。
何故か私がちょっぴり誇らしくなる。
「俺はお前が羨ましかったんだ、沢田。周りに愛想を振り撒かず己の道を突き進む強さと、脇目も振らず好きな子にまっすぐ愛情を注ぐ姿が男らしいって。ずっと認めたくなかったんだけど、今は分かる。お前は俺よりカッコイイ男だよ、沢田」
【ど、どうしちゃったの森島くん⁉︎((((;゚Д゚))))))) 頭にサーフボードでもぶつけたの⁉︎】
森島くんからの意外すぎる褒め言葉に、沢田くんは返す言葉を失っている。
まあ、沢田くんはいつもどんな時も返す言葉を失っているけど。
「ほら、またそうやって何も語らないところがすごいよな」
「い、いや……そんなことない【そんなことないってええええええ!!!:(;゙゚'ω゚'):】」
沢田くんは森島くんへの言葉を必死に考えている。そして長い沈黙の末に捻り出したのが、こんな一言だった。
「俺には……佐藤さんしかいない。ただそれだけ」
かっこいい……。
【かっけえ……Σ(゚д゚lll)】
私と森島くんも思わずズキュンとなってしまった。
もちろん沢田くんの考えは、ちょっと意味が違うって私には分かっている。
【俺には……佐藤さんしか相手にしてくれないし、俺も佐藤さんとしか話せない……。゚(゚´ω`゚)゚。つまり、佐藤さんだけが俺の心の拠り所……。佐藤さんが俺を見放せばそれまでなんだ……。切ないけど、それが真実。゚(゚´ω`゚)゚。】
それが真実でも、私には嬉しい。ずっと私だけをそばにいさせてくれるってことだもんね。
一方、森島くんは今の一言がビビッと来てしまったようで、目をキラキラさせながら言った。
「そうか……! いいな、そのセリフ。そうやって告白したら成功しそうだ。ありがとな、沢田! 俺、頑張ってみる!」
「【あっ……そんなつもりで言ったわけじゃないけど……森島くんが頑張るのはいいことだ……良かった】うん」
こうして、沢田くんは森島くんの中でカッコいい男のまま、カッコ良く助言をしてクールに去っていった。見事な結果オーライだったよ、沢田くん。
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