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第4章 沢田くんと別荘の夜
沢田くんとボーイズトーク
しおりを挟む私が麻由香ちゃんと話している間、麻由香ちゃんの隣にいる杏里ちゃんは何か物思いに耽っているように見えた。
心の声、聞いちゃ悪いよね。
私はそっと杏里ちゃんから目を逸らす。
「そういえば、沢田くんいないね。どこ行ったんだろ?【森島くんもさっきからいないし~】」
「えっ?」
麻由香ちゃんに言われて辺りを見回してみれば、確かに沢田くんと森島くんの姿が見えない。クラスのみんながそれぞれしゃべりながら食事しているから、沢田くんはどうせ端っこにいるだろうと思っていたけど……。
「どうかなさいましたか、佐藤様」
勘のいい支配人、矢野さんがそんな私に気がついて近づいてきた。
「沢田くん、見ませんでした?」
「空様でしたら、バルコニーの方にお友達と二人で向かわれましたよ【空様、ぼっちだと思ってたのに友達いたんだなーm9(^Д^) プギャー】」
心の声は相変わらずひどいけど、さすが矢野さんは有能だ。
「お友達って、森島くんのことかな? 行ってみようよ【イケメン二人のボーイズトーク、気になる!】」
「えーっ? お邪魔じゃないかな……」
沢田くんが森島くんと二人で話すなんて、これは事件の匂いがします!
「いいじゃん、ちょっと遠くから見るだけ!」
そんなこと言って、麻由香ちゃんは絶対突撃するつもりなんだ。
「杏里ちゃんはどうする?」
私は判断をいつも冷静な杏里ちゃんに委ねた。杏里ちゃんはちょっと飛び跳ねて、顔を赤くしながら「私は行かない!」と言った。
何だか様子が変だ。いつもの杏里ちゃんらしくない。
昼間、私と沢田くんがいない間に何があったんだろう?
「じゃあ、あたしらだけで行こっか景子ちゃん」
好奇心を抑えられない麻由香ちゃんはもう半分腰を上げている。
仕方ない。私もちょっと興味あるし、行ってみることにした。
みんながパーティーのようにワイワイ騒いでいる夕食の間の、海に面した大きな窓の向こうにはテラス席のついたバルコニーがある。
ウッドデッキで20畳ぐらいあるかも。本当にいい別荘だなあ。
こんなところでくつろぎながら、海の音を聞いて過ごす老後とか、素敵だなあ。
そんなことを考えながらバルコニーに出てみると、手すりにもたれて海を眺める二人の背中が間接照明の灯で照らされていた。
【ど、ど、ど、どうしよう……! 森島くんと二人っきりで大事な話なんて、俺に相手が務まるのか……⁉︎((((;゚Д゚)))))))】
どうやら森島くんから誘い出されて、これから大事な話が始まるらしい。
いきなりテンパってるけど頑張ってね、沢田くん!
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