沢田くんはおしゃべり2

ゆづ

文字の大きさ
上 下
78 / 122
第4章 沢田くんと別荘の夜

沢田くんとボーイズトーク

しおりを挟む


 私が麻由香ちゃんと話している間、麻由香ちゃんの隣にいる杏里ちゃんは何か物思いに耽っているように見えた。

 心の声、聞いちゃ悪いよね。
 私はそっと杏里ちゃんから目を逸らす。

「そういえば、沢田くんいないね。どこ行ったんだろ?【森島くんもさっきからいないし~】」
「えっ?」

 麻由香ちゃんに言われて辺りを見回してみれば、確かに沢田くんと森島くんの姿が見えない。クラスのみんながそれぞれしゃべりながら食事しているから、沢田くんはどうせ端っこにいるだろうと思っていたけど……。

「どうかなさいましたか、佐藤様」
 勘のいい支配人、矢野さんがそんな私に気がついて近づいてきた。
「沢田くん、見ませんでした?」
「空様でしたら、バルコニーの方にお友達と二人で向かわれましたよ【空様、ぼっちだと思ってたのに友達いたんだなーm9(^Д^) プギャー】」

 心の声は相変わらずひどいけど、さすが矢野さんは有能だ。

「お友達って、森島くんのことかな? 行ってみようよ【イケメン二人のボーイズトーク、気になる!】」
「えーっ? お邪魔じゃないかな……」

 沢田くんが森島くんと二人で話すなんて、これは事件の匂いがします!

「いいじゃん、ちょっと遠くから見るだけ!」
 そんなこと言って、麻由香ちゃんは絶対突撃するつもりなんだ。
「杏里ちゃんはどうする?」
 私は判断をいつも冷静な杏里ちゃんに委ねた。杏里ちゃんはちょっと飛び跳ねて、顔を赤くしながら「私は行かない!」と言った。 
 
 何だか様子が変だ。いつもの杏里ちゃんらしくない。
 昼間、私と沢田くんがいない間に何があったんだろう?

「じゃあ、あたしらだけで行こっか景子ちゃん」

 好奇心を抑えられない麻由香ちゃんはもう半分腰を上げている。
 仕方ない。私もちょっと興味あるし、行ってみることにした。


 みんながパーティーのようにワイワイ騒いでいる夕食の間の、海に面した大きな窓の向こうにはテラス席のついたバルコニーがある。
 ウッドデッキで20畳ぐらいあるかも。本当にいい別荘だなあ。
 こんなところでくつろぎながら、海の音を聞いて過ごす老後とか、素敵だなあ。
 そんなことを考えながらバルコニーに出てみると、手すりにもたれて海を眺める二人の背中が間接照明の灯で照らされていた。

 
【ど、ど、ど、どうしよう……! 森島くんと二人っきりで大事な話なんて、俺に相手が務まるのか……⁉︎((((;゚Д゚)))))))】


 どうやら森島くんから誘い出されて、これから大事な話が始まるらしい。
 いきなりテンパってるけど頑張ってね、沢田くん!
 


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話

水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。 そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。 凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。 「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」 「気にしない気にしない」 「いや、気にするに決まってるだろ」 ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様) 表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。 小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

努力の方向性

鈴ノ本 正秋
青春
小学校の卒業式。卒業生として壇上に立った少年、若林透真は「プロサッカー選手になる」と高らかに宣言した。そして、中学校のサッカー部で活躍し、プロのサッカーチームのユースにスカウトされることを考えていた。進学した公立の中学校であったが、前回大会で県ベスト8まで出ている強豪だ。そこで苦悩しながらも、成長していく物語。

ガラスの世代

大西啓太
ライト文芸
日常生活の中で思うがままに書いた詩集。ギタリストがギターのリフやギターソロのフレーズやメロディを思いつくように。

処理中です...