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第3章 沢田くんと別荘の愉快な仲間たち
番外編【その男、ドS執事につき】
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「矢野。俺はこの女を連れて海へ逃げる。お前はその間に空の気を引いておくんだ。分かったな!」
それは、暴君によるいつものわがままな命令だった。
「かしこまりました」
丁寧に頭を下げて主人の孫を見送る、私の名前は矢野真実。
その名の通り、嘘が苦手で心の清らかな、良き別荘の支配人という役柄を演じている。
【はあ~( ´Д`)y━・~~ また陸様の空様いじめが始まったよ】
誰も知らない、私の心の内側。実はすこーし毒があるかなって思っている。まあ、どうせ誰も気づかないし。ほら、私、演技がうまいから。心の中ぐらい自由にさせてくれよなーと思う。子供の遊びに付き合うのはストレスたまっから。
さて今回の陸様のお遊びは、陸様のいとこの空様が連れてきた恋人の……名前、なんだっけ。えーと、えーと胸が絶壁子さん? あ、いや、モブ野絶壁子さんだ。その人の誘拐ごっこをするらしい。
私の役目は、その間に空様をこの別荘でしばしの間お引き止めすることだ。
つまり、時間稼ぎ。
ターゲットの空様は陸様とお顔はそっくりだけど、性格は正反対で、虫も殺せないクソビビリ。騙すのは赤子の手を捻りながらマツケンサンバを踊るよりも楽だ。
そこで私は、陸様と絶壁子さんのあとを追いかけて行かれようとした空様の後ろで、胸を押さえて苦しむフリをした。
「うっ……こんな時に持病が……っ!」
「矢野さん⁉︎ どうしたんですか⁉︎ 持病って⁉︎」
案の定、空様は私を放っておけず、おめおめと戻ってきた。
ちょろすぎて逆に大丈夫かこいつ、と思う。将来絶対オレオレ詐欺にあうな。
「実は私……一日一回はオセロで誰かと対局しないと死んでしまう病なのです」
私は口から出まかせを吐いた。それなのに空様は心から心配したようで、すぐにオセロの準備をし始めた。
心から慕われるというのは悪くない。とことん信じさせて、最後にとんでもない裏切りをかましたいという悪魔のささやきが聞こえる。ただ、空様はアホだからそれでも私を信じてしまうかもしれない。絶対ウケる大ボケかましたのに、ツッコミが無能だとボケの私がちょっとスベった感じになるのでやめとこうと思う。
「では、対局をお願いします」
「お願いします」
礼儀正しくお辞儀をしてから黒石を掴む空様。黒(先攻)よりも白(後攻)の方が圧倒的に有利だということを知らないのか。
まあ、たとえ私が黒だとしても負けはしないという自信はあるが。
私は攻められ、苦しんで長考しているフリをしつつ、時間を稼いだ。わざと下手くそな手を打つのは神経に良くない。だから最後はギリギリで逆転してやった。全て計算ずくだ。
「お付き合いくださり、ありがとうございました」
「うん」
空様は私の発作が治って良かったと微笑み、別荘を出て行かれた。
陸様が空様を可愛がる気持ちは、私にも分かるような気がする。
素直なやつって、なんかめちゃくちゃにしたくなるよね(笑)
えっ? なんか違う? 私のはただのドS?
うっせえわ。ほっとけ( ´Д`)y━・~~
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