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第3章 沢田くんと別荘の愉快な仲間たち
沢田くんと危険な作戦
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時は私がラクダから落ちた直後に巻き戻る。イタタタ。
「大丈夫か、偽乳」
「うん……なんとか。下が砂で良かったよ。それより、沢田くんと仲直りする作戦って何?」
陸くんはラクダの背から私を見下ろし、ニヤリと笑った。
「作戦名は『D・B』」
なんだかちょっとカッコ良さそうな作戦名だ。
【正式名は『D・B~真夏の海は危険がいっぱい! キャッ、あんなところにサメがいるなんて、私聞いてないんですけどー!~』作戦、縮めてD・Bだヽ(*^ω^*)ノ】
……長い。
正式名がキャッキャしすぎて、全然頭に入ってこなかった。
「要するに、お前をまず沖へ流す。すると空が泳いで助けにやってくる。そこへサメが現れて大ピンチ。空はお前を助け出し、めでたしめでたしだ」
「サメ⁉︎ この海、サメが出るんですか⁉︎」
「出るわけねーだろバーカ。もちろんそのサメは偽物だ。空をドッキリでハメるために用意した着ぐるみがちょうどここにある」
陸くんはキュー○ー3分クッキングのお料理の先生のように、岩陰から救命ボートとサメの着ぐるみを引きずり出してきた。
サメの胸のところに人間が顔を出す穴が開いており、手足の部分にも穴がある。そこを除けば造形はリアルでドキッとさせられる。
「すごいだろう。俺の手作りだ。サメの体の中には酸素ボンベが装着してあるから、潜ったまま呼吸ができるし、背びれの下にはジェットもついていて瞬間時速40キロで進むこともできるんだぞ!【去年の夏からコツコツ作った!ヽ(*^ω^*)ノ】」
ドッキリのためにここまでやるか。
陸くんの沢田くんへのねじ曲がった愛情っぷりにはドン引きするものがある。
「お前はこのボートに乗って、目を閉じて眠ったふりをしているだけでいい。俺がサメを演じて、ボートの周りをウロウロする」
「それじゃ、沢田くんがビビっちゃって私を助けに来られないんじゃ……」
「だとしたら、空のお前への愛情はその程度のものだということだ」
冷たい陸くんの視線に、私は唾を飲んだ。
沢田くんの愛が試されている。
私への想いが本物なら、サメと戦って私を助け出してくれるはず。
でも──。
「そんなこと試さなくても、私は沢田くんのことが好きだし、あんまりビビらせるのは可哀想だからやめてあげ──」
「うっせえ! もう作戦は始まってるんだよ! 誰にも止めることはできねえんだ!」
そう叫んだ陸くんはもうサメの胸から顔を出していた。
どうしてもその着ぐるみを着たかったんだね。
走り出したら止まらない、夏の恋と陸くんのドッキリ。
私と沢田くんは巻き込まれる運命から逃れることはできないと悟ったのだった──。
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