沢田くんはおしゃべり２

第３章 沢田くんと別荘の愉快な仲間たち

沢田くんと危険生物

　いくつか罠っぽい看板をスルーした後……。

　やがて空は、砂の上に怪しい動物の足跡を発見した。
　馬のような四足歩行の動物の足跡だ。けれども、斜めに向かいあった足が対になって動く馬と違って、砂に残った足跡の動物は片側の前後の足が同時に動いている。ゾウやキリンと同じ歩き方だ。

【これは……ラクダか⁉︎　そういえば、陸くんが昔砂漠ごっこがしたいっておじいちゃんにねだって、ラクダを買ってもらっていたっけ……あのラクダの名前は確か、ヨダレ。よだれがすごく出てるから……。ひどい名前をつけられて可哀想だよ、ヨダレ｡ﾟ(ﾟ´ω`ﾟ)ﾟ｡】


　この島でラクダに乗れるのはただ一人、陸だけだ。
　そう確信し、空はさっそく足跡を追った。


　再びあの看板が現れたのは、それから浜辺を200メートルほど歩いた頃だっただろうか。


『佐藤さんこっち→』

　
　立てかけられた看板の矢印の方向を見ると、そこはもう沖だった。
　まだそれほど遠くないところに、オレンジ色の救命ボートが浮かんでいる。
　目を凝らすと、ボートの縁に誰かの腕が覗いているように見えた。


【まさか、佐藤さんがあそこに……⁉︎】


　陸のことだから、また罠の可能性は十分にある。
　それに、水着もお風呂場で使ってしまったので、別荘で乾燥してもらっている最中だ。海に入るならこの服のままということになる。

　もしもあれがただのボートだけだった場合は、濡れ鼠になるだけ損というオチだが──。


【でもそんなことを言ってる場合じゃない！】


　空は上着を脱いで上半身裸になった。
　手首と足首と首を回して入念に準備運動をする。


【行くぞ！　うおおおおお～～！((((；ﾟДﾟ)))))))】


　気合を入れた空は沖へ向かって走り出した。濡れるのも構わず波を蹴り、足が浮き始めたらクロールで進んだ。


【佐藤さああああん！！｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡】

　
　無我夢中で泳ぎ、ボートまであとちょっとというところに近づいた時だった。
　空は海の中で恐ろしいものを見てしまった。


　縦に平たく硬そうな背びれを持つ、最強魚類。
　ボートに向かってやってくる、人間一人分はありそうな巨大な生き物の影。


【あ、あれはもしかして……サメ⁉︎　((((；ﾟДﾟ)))))))】