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第3章 沢田くんと別荘の愉快な仲間たち
陸くんと逃避行
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強引な王子様に手を引かれ、私は波打ち際を走っている。
煌めく波しぶき。
ロマンティックなメロディーを奏でる潮騒。
そして、太陽にも負けない俺様王子の輝く笑顔。
「オラオラ! もっとスピード上げろ! さもねえとお前が偽乳パットだってことを空にバラすぞ!」
沢田くんたちのいる別荘を飛び出し、ノンストップで海まで走ること3キロ。
これはもうね、逃避行じゃなくて荒行よ。
まあ、私もプリンセス役ではなくて人質として連れてこられただけだしね。
陸くんの目的はあくまで沢田くんを海で遊ばせてあげること。
ちょっと強引だけど、本当は優しい従兄弟愛がそこにあるんだっていうことは分かっている。だからこそ、私もここまではおとなしくついて来たんだけど──。
「さすがに、もう走れませえん!」
「鈍臭い女だな。仕方ねえ。背中に乗れよ」
強引な王子様──陸くんは、私をひょいと抱き上げた。
見かけによらず、強い足腰。そして腕力。キリッとした目元に、自信に満ちた口元の笑み。どれをとってもカッコいいんですが、ただ一つ言わせてもらっていいですかね。
「背中って、ラクダの⁉︎」
王子の背中にしがみついてキュンかと思いきや、陸くんが私を乗せたのはフタコブラクダの背中だった。
このラクダ、どっから連れてきた⁉︎
「砂と言ったらラクダだからな」
そういう陸くんもいつの間にか私の背中でラクダの手綱を握っている。
砂といえばラクダかもしれないけど、王子と言ったら白馬じゃないの?
「結構揺れるから気をつけろよ、偽乳」
「はい……」
もうツッコミするのも疲れました。
ああ……沢田くんの優しさが懐かしい。
煌めく波間を眺め、そこに沢田くんと手を繋いで浮かぶ自分自身を夢想する。
沢田くんと一緒に来たかったな、海……。
どうしてこうなっちゃったんだろう。
その時、グラリと激しい横揺れが来た。ラクダが砂に足を取られちゃったみたい。ラクダのくせに!
あわわわわ、落ちる!!
すると、空中でクロールしていた私を、陸くんが片手で抱き留めた。
ふわっと香る、陸くんの髪の匂い。
ぎゅっと背後から抱きしめて、陸くんが私の耳元でささやく。
「あぶねえって言っただろ? しっかり俺様と一緒に手綱を持ってろ、偽乳」
くううう、セリフは最低なんだけど、クソかっけえ!
悔しいけどキュンキュンするわ! クッソ!!
顔はほぼほぼ沢田くんだし!
いや、でも別人だから! しっかりしろ、私!!
お願い、沢田くん! 早く私を迎えに来て──!
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