沢田くんはおしゃべり２

第３章 沢田くんと別荘の愉快な仲間たち

沢田くんと事件発生

　沢田くんのチュー顔がかっこいい。
　ずっと見ていたい。むしろ、それ以外何も見えなくていい。

　天井に吸盤で張り付いている忍者とか。
　忍者の手が限界を迎えて震えてるところとか。
　忍者の覆面の先っちょの布が扇風機の風にフワフワ揺れているところなんかも、別に見たくないんだってば！
　でも視界に入っちゃう！

【早くしろ～！　空～！！　でないとブッ殺す！！】

　生まれたての仔馬みたいにプルプル震えながら言われても説得力ない。　
　ああもう、忍者が気になってせっかくのキスシーンが台無しだよ！
　
　忘れよう、見なかったことにしようと思えば思うほど、こんなにかっこいい沢田くんの頭上にはいま忍者が張り付いているんだ……と思い出してしまい、その事実に苦しめられる。

　そんな中、ついに沢田くんが決意した。


【よし、行くよっ、佐藤さん！】

　えっ？　来るのっ？　待って、忍者のせいで心の準備が！
　私は慌てて目をぎゅっと閉じた。すると──。


　チュッ。
　とおでこに柔らかい感触。


　……ん？　おでこ？
　

【やってしまった～～！！\(//∇//)\さ、さ、佐藤さんにキスしちゃったぞ！！　すごい勇気出した、俺スゲー！！】


　沢田くんは心の中で大喜び。片手で小さくガッツポーズ。
　なんだ、おでこにしたかったのか……。
　そうだよね、沢田くんはそういう人だ。
　ちょっぴり拍子抜けしたけど、これはこれで沢田くんらしくて可愛いなって思っていると。


「この根性なしが──っ！！【ｺﾞ━━━━(# ﾟДﾟ)━━━━ﾙｧ!!】」


　天井から忍者が降ってきて、沢田くんの背中を思い切り蹴り飛ばした。


【ぎゃあああああ～～！！((((；ﾟДﾟ)))))))】


　忍者の突然の襲来に、沢田くんは驚いて倒れ込む。


「ふざけんなバーカ！　せっかく俺が気を利かせて天井から見守ってやってたのに、デコチューかよ！　ガッカリさせやがって！！　このヘタレ！　死ね！」


　言いたいことだけ言って忍者は出ていった。
　でも、彼は気づいていなかったようだ。
　彼が沢田くんを蹴り飛ばした先に、私がいたことを──。

　
【えっ、あっ……あああああああ～～～っ！！！(((((((*´Д｀*)))))))】
　

　大変です。
　ただいま、重大な事故が発生しました。
　沢田くんの唇と私の唇の接触事故です……って、きゃああああーっ！！
　げ、現場からは以上です……！_:(´ཀ`」 ∠):ｺﾞﾌｧ