沢田くんはおしゃべり２

第３章 沢田くんと別荘の愉快な仲間たち

沢田くんと秘密のキス

　早く飛び起きれば良かったのに、額に置かれた手が心地よくて寝たフリをしてしまった。
　ごめんね、沢田くん。
　お腹空いてるのに、私のせいで遅くなっちゃって。
　ほんのちょっぴり、罪悪感。すると──。


【それにしても佐藤さんの寝顔、可愛いなあ】


　沢田くんのふにゃふにゃした声が私の額に降った。

　えっ？
　今、なんて？
　も、もう一回お願いします！！


【食べちゃいたいな(*´艸｀*)俺の天使】


　きゃあああああ～～！！
　あかん、ますます起きられない！！
　心臓バクバク言ってる！！


【ああ腹へった……ぐーきゅるるるる(・Д・)】


　食べちゃいたい、の意味が変わってきましたが⁉︎
　やっぱり目を開けようか、と思った時だった。


「佐藤さん……」

　沢田くんの声が耳元に。
　吐息を感じるほど近かった気がするけど……⁉︎


【今なら、誰も見ていない……】

　
　なんだか、意味深な呟き。ほのぼのとした顔文字も出てこない。
　いったい何を企んでるの？　沢田くん！


【ずっと、夢見てたんだ。佐藤さんにもう一度、好きって言って、それから……キス……したいなって】


　う、う、うそっ⁉︎　沢田くんがそんな普通の男の子みたいなことを⁉︎

　
【好きだよ、佐藤さん。寝ている間にごめん……！】


　沢田くんの吐息がかかる。
　あわわわわ、どうしよう！　本当に本当に⁉︎
　でも嬉しい。
　私も沢田くんともう一度キスしたいって思ってたし。
　目を開けるかどうしようか、また悩む。
　見つめあってちゃんとしたいっていう気持ちが胸の中でバタ足している。
　
　
【あああ～～～でも、こんな卑怯なことしていいのかな⁉︎　佐藤さんに嫌われちゃうんじゃ……｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡】

　
　沢田くんも葛藤しているようで、近づいては離れ、近づいては離れ。磁石のS極同士みたいになかなかくっついてくれない。


　ああ、もどかしいなあ。
　でも甘酸っぱくて最高にキュンキュンしちゃう──なんて思った時だった。


【早くしろよもう！　そこだ空、行け！！】
　

　どこかで聞いたことのある声がした。
　誰かに見られてる？？
　今までのドキドキが別のドキドキに変わる。


　そーっと片目だけ開けてみた。
　すると、目を瞑った無防備な沢田くんの激かわドアップ！
　あばばばば！　近い！！　ヤバい！！


　でも問題は、その背後に見えた天井に張り付いてる忍者なんだな。


【キスするならするで早くしろ～～！！　これ以上は俺の腕も限界だ！！】


　あいつの方がピンチじゃん。