沢田くんはおしゃべり2

ゆづ

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第2章 沢田くんとサバイバル

沢田くんと必殺攻撃

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【いくぞ! はあああああっ!!!・:*+.\(( >ω< ))/.:+】

 沢田くんが気を集中させている。まるで空間に円を描くような、手のひらの滑らかな動き。少林寺拳法というより、太極拳っぽい。

【えーと、この後、どうするんだっけ(・Д・)? 確かこうやって構えて】

 考えている間にちょうど血まみれ男が襲ってきた。


「サーワーダー! こっちか~⁉︎」
【あわわわ、怖いっ。゚(゚´Д`゚)゚。】


 その瞬間、沢田くんの姿が消えた。
 あれは……ぼっちボール奥義、おんみつ!


 説明しよう。『おんみつ』とは、沢田くんがクラスのみんなとドッチボールをやった時に発動させた、気配を極限まで殺してボールから逃げる必殺技のことである! あまりにも気配がなさすぎて誰からも当てられなくなる代わりに孤独を感じてしまうという、ぼっちゆえの悲しい奥義だと本人は語る。

 追いつめられた時の沢田くんは時々こうやっておんみつを無意識に発動させてしまうらしい。


 それ、少林寺拳法よりすごいよ、沢田くん!


【そ、そうか! こうやって逃げ回っていれば、いつか相手の隙をついて攻撃できるぞ!】


 沢田くんは絶えず動き回り、血まみれ男に攻撃するタイミングを見計らっている。
 あまりの素早さに、私の目にも沢田くんの残像しか見えない。
 あれ? でも、相手は元々前が見えていないんじゃなかったっけ?
 意味なくない?


「こっちか~!」
 血まみれ男は勘に頼って手を伸ばす。

【ブッブー! ハズレ!ヽ(*^ω^*)ノ】
「こっちか~!」
【ブッブー! 残念!ヽ(*^ω^*)ノ】


 なんか、目隠しでスイカ割りしようとしている人と、そのスイカを持ってウロウロしている人みたいな構図になってきた!


「クッソー! どこだ、沢田~!」
 血まみれ男が棒立ちになって叫んだ、その時だった。



【よし、今だ!(๑• ̀д•́ )✧ キエエェェエイ!!】



 沢田くんが血まみれ男の背後で止まり、パンチをくり出す構えを取った。
 これはイケる!
 と思ったのだが、何故か沢田くんはその場にヘナヘナとしゃがみ込んでしまった。


 どうしたの、沢田くん⁉︎


【疲れた……_| ̄|○】


 えええええええええ~~⁉︎
 おんみつのやりすぎで、まさかの自滅⁉︎


【体力ゲージ0。激しい戦いだった……】



 すみません。一言だけ言っていいですか?


 
 
 ──戦ってない!!



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