沢田くんはおしゃべり２

第２章 沢田くんとサバイバル

沢田くんとしりとり

「そうだ、沢田くん！　私としりとりしない⁉︎　そうすれば間が持つし」

　沢田くんにこのまま自由に思考させていたら危険だ。
　私はそう判断し、しりとりを提案した。

「う、うん【さすが佐藤さん！ヽ(*＾ω＾*)ﾉそれなら変なことを考えずに済むぞぅ～！】」

　沢田くんはすぐに誘いに乗ってきた。これでひとまずは大丈夫だろう。


「じゃあ私から行くね。しりとりのり！」
「りんご」
「ゴリラ」
「ラッ──【はっ……！　ま、待てよ⁉︎((((；ﾟДﾟ)))))))】」


　突然沢田くんの心の声が焦り出した。


【もし俺がここでラッパと言ってしまえば、佐藤さんは必然的に「パ」から始まる言葉を探すことになる。「パ」で始まる言葉なんて、「パンツ」くらいしか思いつかない……！！((((；ﾟДﾟ)))))))】


　いや、そんなことないよ。「パンダ」とか「パジャマ」とかいろいろあるよ？


【佐藤さんに「パンツ」と言わせるなんて、男として最低だ……！　「さては沢田くん、私にパンツと言わせようと企んだんでしょ。最低！o(｀ω´ )o」と思われても致し方ない！　ぐうの音も出ない！　いや、企んではもちろんいないけど、ないことを証明するのはあることを証明するより至難の技……！　「パ」だけはだめだ！　佐藤さんに嫌われてしまう！　しかし俺は今、ラッパのラッ、まで発音してしまった。そうなると、ラッの続きで不自然にならない言葉を掴み取らなくてはならない！　だがそんな言葉はこの世に存在しない……！！((((；ﾟДﾟ)))))))】


　落ち着いて、沢田くん。あるよ！　ラッコとか、ラックとか、ラップとか。


【ダメだ。詰んだ。思いつかないよ｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡まさか４ターン目でもうキルされるなんて小学生より頭悪いよ。でも最近の小学生は頭いいからな！　しりとりなんて小学生のテリトリーだし、普通に勝てる気がしない。しかもあいつら自分が勝つことに命かけるから、語尾を「る」にしたり、クリアしたばっかりの文字を次のターンでまた頭に持ってきたりすることに一片の躊躇もないよね。俺だったら気を使って違う文字を頭に持ってくるのに｡ﾟ(ﾟ´ω`ﾟ)ﾟ｡「スイス」「スパイス」「スーツケース」って、「ス」攻めで何度も来るな！　韻を踏むな！　お前はラッパーか！　……あっ！！！】


　長考の末にとうとう閃いた沢田くんは、自信満々に答えた。


「ラッパー……【って、ああああああっ！！！　結局「パ」じゃねえかよおおおおおお！！！_:(´ཀ`」 ∠):　何やってんだよ俺ええええええ！！！】」


　時間を返せ。
　いや、返さなくてもいいけど。