沢田くんはおしゃべり２

第２章 沢田くんとサバイバル

沢田くんと提案

　その時だった。

　突然、ボトッと頭上から何かが落ちてきた。それは体長20センチくらいの長くてニョロニョロしている動物で──カエルよりも苦手な、私の天敵！

　ヘビだ。

「きゃああああああっ！！」
【うわああああああっ！！　ごめんなさいごめんなさい！　調子に乗ってましたあすみませーーーーん！！((((；ﾟДﾟ)))))))】


　急に叫び出した私から、沢田くんがパッと手を離した。
　残念……とか言ってる場合じゃない。ヘビが沢田くんの足元にいる！


「沢田くん！　そこっ、ヘビ！」
【へっ？(・Д・)　ヘビ？　……ぎゃあああああああ！！！！　ホントだ！　どうしようっ⁉︎　死んだふり＿(  _*ω*)_ﾍﾟｼｮ】


　死んだふりはヘビには効かないよ、沢田くん！　落ち着いて！


【そうだ、今こそ鷹たかの出番だ！　鷹来い！　ヘビをやっつけてくれ！！　ああ、ダメだ、念じたくらいじゃ鷹は来ない！　チクショウ、なんで俺は鷹匠たかじょうじゃないんだ！！｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡】


　意外とあった、鷹の需要。


「いいから、逃げよう！」
　私は沢田くんの手を掴んで山道をダッシュした。
　こんな可愛い子を置いてきぼりにはできません。
　




「はあ……はあ……」

　まだ出発から1キロくらいだけど、無駄にドキドキしたりダッシュしたりしたおかげで疲労度がエグい。私は肩を上下させて呼吸した。
　

【おのれ、陸くん( *｀ω´)　道にヘビをおくなんて、ひどい罠だ！！】

　沢田くんはちょっぴりご機嫌ナナメだった。
　でも罠じゃなくて、あれはただの野良ヘビでは……。
　夏だし、そこらじゅうにいっぱいいる予感。
　やっぱり山道じゃなくて普通の舗装された道を行くべきなんじゃないかな？


「ねえ、沢田くん──」
「ごめんね、佐藤さん。俺のいとこのせいで危険な目に遭わせて……」
　話しかけようとした私に、珍しく沢田くんが真面目な顔で長文謝罪した。


「ううん。大丈夫だよ」

　陸くんのせいじゃなくて、ほぼほぼ沢田くんのせいだし。
　でも全然嫌じゃない。
　私は額から出てくる汗を拭いてにっこりとした。


「私は沢田くんと一緒だと楽しいし、罠なんて怖くないよ」
「……！！【佐藤さん、本当は怖かったくせに、俺を気遣って平気なフリをして……(´；ω；`)なんて優しい人なんだ！！】」


　沢田くんの瞳がキラキラと濡れたように輝く。
　ああ、可愛いなあ。
　キュンと心の奥をくすぐられながら、私は言った。


「だから、山道じゃなくて普通の道路を行こうよ。きっと私たちなら陸くんの罠だって正面突破できると思う！　私、沢田くんのこと信じてるから……！」

　あ、ちょっと照れくさいこと言っちゃったかも。

　私は恥ずかしくなってそっと沢田くんから目を逸らした。すると。


【ズッキュウウウウウウン！！_:(´ཀ`」 ∠):】


　たぬきが漁師に鉄砲で撃たれたような心の声（音？）がした。