沢田くんはおしゃべり２

第１章 沢田くんと絶海の孤島

沢田くんと変質者

　そんなこんなで沢田くんのほっぺは○ンパンマンになってしまったけど、別荘行きは許された。

　沢田くんのお母さんはどうしてもシフトが動かせないとかで、私たちの引率は沢田くんのお父さんの弟、つまり沢田くんの叔父さんがしてくれることになった。お母さんがすぐに叔父さんに電話してくれて、それが決まった。

　叔父さんは別荘のある島に良く行くらしく、沢田くんのご両親より島には詳しいのだという。お母さんからの電話に叔父さんは二つ返事でオッケーしてくれたようだ。

「叔父さんの持っているクルーザーでみんなを島まで送ってもらえるから、ちょうど良かったわね」

　お母さんは一緒に行けなくてすごく残念そうだったけど、私が帰る頃には機嫌も治ってニコニコしていた。

「もう、空もいつまでそんなブサイクな顔してるの？」
【母ちゃんのせいだろ。ほっぺが腫れて力が出ない。助けて、◯ンパンマン｡ﾟ(ﾟ´ω`ﾟ)ﾟ｡】
　
　沢田くんはボコボコに腫れたほっぺでお母さんを睨みつける。

「おほほほ。元気出しなさいよ。空が別荘に行くって言ったら、叔父さんちのいとこの陸くんも一緒に行きたいって言ってたそうよ。また昔みたいに仲良く遊んでもらいなさいな」


　いとこの陸くん。

　そのワードを聞いた瞬間、沢田くんの顔が青ざめた。



【陸くん、来るの⁉︎　いやだあああああああ！！((((；ﾟДﾟ)))))))　あの人全然空気読めないんだよな！　俺が海で溺れかけていたのに指差して笑って見てたし、俺が冷蔵庫で大事にとっておいたプリンを勝手に食べるし、お詫びがダンゴムシだったし！　せめて食べ物で返して欲しかったのにーっ！！(´；ω；`)】


　なんだか、また変な人が現れそうだと思った時だった。


「ところで、さっきから窓の外でチラチラとこっちを見ている人がいるんだけど、空のお友達？」


　お母さんの声で気がついて振り向くと、そこに見覚えのある金髪が慌てたように窓枠の外へ消えるのが見えた。


【あれは……変質者⁉︎Σ（ﾟдﾟlll）】


　いや、あれはあの人しかいないでしょう……。
　窓枠の方へアンテナを向けて耳をすませば、かろうじて声が聞こえてきた。


【ヤッベーー！　見つかるところだった。沢田と毎日ラジオ体操に行って少しずつ距離を縮めてきたつもりだが、沢田はもう俺のことを友達だと思ってくれているだろうか……？　まさか変質者だとは思われてないだろうな⁉︎:(；ﾞﾟ'ωﾟ'):】


　小野田くん、それはストーカーで、完全に変質者だよ。