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第6章 沢田くんと夏の恋花火
沢田くんとフィナーレ
しおりを挟むこうして、私と沢田くんはクラスのみんなと一緒に連続で打ち上がる花火を眺めながら、楽しい時間を過ごした。
花火を背景に、今まであった出来事が走馬灯のように蘇る。
沢田くんと初めて出会って、隣の席になって、いきなり「あ、うん」で金剛力士像かって自分にツッコミを入れた沢田くんに驚き、それからずっと沢田くんの声に夢中になった私。
購買でおそろいで買ったおじさんつきシャーペンとの脳内劇場、日直の大声特訓で「ちん」とか「まん」とか叫ぼうとした沢田くんに慌てたこと、ファミレスでは初めて見せてくれた笑顔にときめいて、やっと沢田くんと友達になったこと……。
見せたいものがあるって購買に連れて行かれた結果、のりせんべいおばさんが現れて大笑いして。
そのあと、風邪をひいた沢田くんの家に小野田くんとお見舞いに行って、沢田くんの私への恋心を知っちゃったんだっけ。
ドッジボール大会で奮闘して、遊園地でデートして、席替えで離ればなれになりかけて。
突然沢田くんの声が聞こえなくなって、耐え切れないほど寂しい思いをしたけど──今はこうして沢田くんが隣にいる。
いろいろあったけど、楽しかったなあ。
【佐藤さん……何考えてるんだろう】
ふと、沢田くんの視線を感じた。
私はつい気づかないフリをしてしまう。
【花火に夢中か。可愛いな……佐藤さん(*´Д`*)】
本当は、沢田くんに夢中なんだけどね。
なーんて、やばいやばい。鼻の下が伸びて顔が退化しちゃう。
急に退化したら沢田くんがびっくりするよ。
沢田くんは私がこんなことを考えているなんて何も知らず、また一人でおしゃべりをする。
【まるで夢みたいだよ。佐藤さんと一緒に花火を見てるなんて……(*´Д`*)このまま時間が止まっちゃえばいいのにな】
うんうん。私も同じ気持ち。
【さっき、橋の上で好きって言ってくれたと思うんだけど……夢だったのか現実だったのか自信がなくなってきちゃった(;´д`)どうしよう。もう一度聞きたい(>_<)! でも、そんなわがまま、佐藤さんに言えないっ。゚(゚´Д`゚)゚。】
もう、しょうがないな。
私はこっそり沢田くんとの距離を詰めて、沢田くんの肩に頭を乗せてみた。
【ひゃあああああああっはああああああああああ!!!(*´Д`*)】
無言で、無表情のまま固まる沢田くん。
「沢田くん大好き」
最後の花火が弾けた瞬間に言ってみたけど、ちゃんと聞こえたかな?
【い、今……好きって聞こえたっ(*´Д`*) ……気がするっ! 気のせい⁉︎】
コラ、何回私から言わせる気よ沢田くん!
……次は沢田くんの方から言って欲しいな。
私は花火の消えた夜空を見上げて、そっと笑みを浮かべた。
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