沢田くんはおしゃべり

ゆづ

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第6章 沢田くんと夏の恋花火

沢田くんと怪物

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 沢田空の家に着いた小野田は、緊張に震える手でチャイムを押した。

 ♪ピンポーン

「……はい」

 ドアを開けたのは空だった。彼はドアからそっと首だけを突き出し、不安そうに往来をキョロキョロ眺めてからドアを閉める。

 小野田はドキドキしながら、ドアの外の壁に張り付いていた。

「はあ、はあ……! くそっ、ピンポンの音にはどうしても緊張するぜ……!」

 小野田はチャイムが苦手だった。押した後、相手が出てくるまでの緊張感に耐えきれずにどうしても逃げ出してしまう。

 すまん、沢田。
 心の中で詫びながらドアに耳を張り付けて中の様子をうかがうと、空の母親の迷惑そうな声がした。

「ねえ、誰だった? 空。さっきから5回もピンポンダッシュされてるけど、お父さんじゃないわよね?」
「……わかんない。怖い」
「やあねえ。鍵かけておいて」
「うん」


 小野田の耳元で、ガチャッと内側の錠がかけられる音がした。


「オーーーノーーーーー!!!」

 小野田は頭を抱えてひざまずいた。

「大変だ、こんなことをしている間に6時になっちまう!」


 本当だよ。何してくれてんだよ小野田。
 そんな佐藤景子のツッコミが聞こえてきそうである。


 仕方なく、小野田は沢田家の敷地の周りをウロウロした。すると、でかいクリスマスツリーが飾られたリビングの窓を発見した。
 そこには呪いのようにたくさんの短冊がぶら下がっていた。
 ちょっと視線をずらすと、まだ短冊を書こうとしている空がいる。

「遠慮なく書きなさいとは言ったけど、ちょっと書きすぎじゃないの? 昨日からもう250枚も書いてるじゃない」
「待って。……これで最後……」

 ペンを机に置いた沢田が小野田のいる窓の近くまでやってきて、キラキラした瞳でもみの木の葉に短冊をぶら下げる。

 何やってんだよ、沢田。
 お前はこんなことをしている場合じゃねえだろ⁉︎ (←お前もな!!by景子)


 白鳥橋で沢田が来るのを今か今かと待ち侘びている佐藤景子を想像すると、小野田はやるせない気持ちになった。


「おい、沢田!!」


 小野田は思わず窓から顔を見せて叫んだ。

「……⁉︎」

 空がギョッとした顔で小野田を見る。
 今だけ、特別に空の心の声をちょっとだけ復活させてみよう。


【ぎゃああああああ~~~!! フランケンシュタインが出たあああああ!!!((((;゚Д゚)))))))】


 徹夜の上、12時間死んだように眠っていた小野田の顔は恐ろしくむくんでおり、いつもの三割り増しで怖かったようである。


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