沢田くんはおしゃべり

ゆづ

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第6章 沢田くんと夏の恋花火

沢田くんとカップル大作戦

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「杏里ちゃんはどうする? 行く?」
 森島くんが気になっているみたいだから、私も気になって聞いてみた。

「どうしようかな【浴衣をわざわざ着ていかなきゃいけないのはめんどいな】」

 心の声を聞く限り、杏里ちゃんの方は森島くんのことを何とも思っていないみたいだ。けど。

【どうしようかなってどっちなんだよ!! 行くのか行かねえのかはっきりしろよーー!!o(`ω´ )o 1対1のデートだったら絶対断られると思ってクラス中を巻き込んだのに、おまえだけ来ないなんてオチだったら最悪すぎるわ!!】

 森島くんの方はだいぶヤキモキしているみたい。

 そうだったんだ、森島くん!!
 杏里ちゃんをデートに誘いたくてこんなことを⁉︎
 席替えの日に杏里ちゃんから胸ぐらを掴まれて、恋心まで掴まれちゃったって感じ?
 でも素直に言えなくて──とか?
 うわあ、なんだかキュンキュンするなあ。
 どうしよう。この二人のこと応援したくなってきちゃった。

 でも……花火まつりのクラス参加を応援したら、沢田くんとの二人きりのデートはますます絶望的になるわけで……。
 
 
 悶々と悩んでいると、杏里ちゃんと目が合った。

【この子、本当は沢田と二人で行きたいんだろうな】

 杏里ちゃんにはしっかりバレている。さすがだなあと感心した時だ。

 
【仕方ない。あたしも祭りに参加して、この子と沢田が二人きりになるチャンスを作ってやるか】


 おおおおおおっ⁉︎
 杏里ちゃんがなんか協力してくれそうな雰囲気だよ⁉︎
 みんながいるけど、沢田くんと二人きりになれるかも!

 そういうことなら、私も杏里ちゃんと森島くんカップルをくっつけるために全力で一肌脱ごうじゃないの!


「せっかくだから、行こうか」
「うん!」


 杏里ちゃんとうなずきあうと、森島くんが【よっしゃああああああ!】と心の中で叫んだ。

 問題は沢田くんだ。
 どういう反応するかな?

「私、ちょっと用事を思い出したから行くね」

 お弁当を片付けて、私は沢田くんがいる屋上へと猛ダッシュした。



 春のうちは快適だった屋上だけど、もうすぐ七月というこの時期は地獄の一丁目一番地くらいの暑さがにじり寄っている。

 カップルたちも消えた楽園にひとり取り残された沢田くんは、給水タンクの日陰でひっそりと弱っていた。

【あ゛づ い゛よ゛ーーーっ。゚(゚´Д`゚)゚。食欲が出ないよーーっ!!】

 教室で食べればいいのに、なんでいつも屋上なんだろう。

 私はそっと近づいて、ほとんど手のつけられていない沢田くんのお弁当を見てみた。

 そこには小豆たっぷりのおはぎがぎっしりと詰め込まれていた。

 ……ちょ、沢田くんのお母さん!!
 息子さんが恥ずかしがって教室で食べられないお弁当、なんとかしてあげて⁉︎
 おはぎだけって、絶対からかわれちゃうよ!


【お彼岸にはまだ早いのに、季節外れで恥ずかしいなあ(*´Д`*)】


 って、恥ずかしポイント、そこ⁉︎


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