119 / 160
第5章 沢田くんと愛の告白
沢田くんと席替え2
しおりを挟む「おーい! あと、引いてないの沢田と佐藤さんだけだぞ! 早く来いよ!」
ずっと私の隣にいて。
そんな私の恥ずかしいセリフの上に、黒板前で叫んだ森島くんの声が被った。
【これからもずっと……なんて言ったんだろう、佐藤さん(・Д・) 語尾だけよく聞き取れなかった】
沢田くんはキョトンとしている。
タイミング悪すぎだよ、森島くん。
でも……きっと、もうタイムリミットはとっくに過ぎていたんだよね。
森島くんの声で、くじを引き終わったみんなが私たちに注目している。
言い出せなかった、私の負けだ。
私は椅子の足を鳴らして立ち上がった。
「ごめん。何でもない。いこっか。沢田くん」
「あ、うん【なんだったんだよー! 気になって仕方ないよ~!。゚(゚´Д`゚)゚。】」
衆人環視の中で沢田くんと黒板の前に行くと、森島くんがニヤニヤしながら私たちに向かって箱を突き出した。
「残り物には福があるかも?」
「?【服(・Д・)? こんなに小さい箱に?】」
ふくちがいだよ、沢田くん。
最後に微妙な笑いを沢田くんからもらって、私はくじを引いた。
数字は8。
黒板で確認すると、なんと真ん中の列の一番前、先生と黒板の目の前の席だ。
どこに福があるの? 最悪なんですけど!
凹みそうになった、その時だ。
【えええええ~~一番前の席! しかも黒板の目の前だよ!! 居眠りこいたら即バレるよ~~!!。゚(゚´Д`゚)゚。 やっぱ俺ってくじ運ない。佐藤さんとは離れるし、席替えなんて大嫌いだよ~~!!】
自分の番号を見た沢田くんの叫びに、私はうつむきかけた顔を上げた。
私も沢田くんも正面の一番前の席。っていうことは……!
【今朝の礼だ。佐藤さんと隣の席にしておいた。ただし一番目立つ席にしておいたから、後ろから見ててイチャイチャしてたら即みんなへ通報すっからな】
箱を片付けている森島くんからそんな声がする。
私の頬が自然とゆるむのを感じた。
「森島くん」
私の声に振り向いた森島くんが、意味ありげに口の端を上げた。
「ありがとう」
「何のこと? いいから早く、机を動かしなよ。二人が動かないからあの席の奴らが困ってるよ」
「あっ、そうだね。ごめん」
満面の笑みを浮かべると、今度は沢田くんの方から声がした。
【佐藤さん、森島くんと仲良さそうに笑っている……! ああっ、もしかして俺、フラれたのか⁉︎ 。゚(゚´Д`゚)゚。 あああ~~~!!!】
真実を知らない沢田くんだけが悲しみの声を上げる。
待っててね、沢田くん。
すぐに沢田くんを笑顔に変えてあげるから。
「早く席替えしよ、沢田くん」
「……うん【佐藤さん、未練なさそうだな……。ぐすん。゚(゚´Д`゚)゚。】」
こうして私と沢田くんのXデーは終わった。
でもそれは新たな始まりに過ぎなかった。
「またよろしくね、沢田くん!」
「あ、うん……【また佐藤さんと……!! 俺、一生分の幸運使い果たしたかも!!((((;゚Д゚))))))) でも嬉しい~~~!!。゚(゚´ω`゚)゚。】」
黒板の前で私と再会した沢田くんは、心のしっぽを全力でパタパタと振った。
そんな沢田くんに、私は小さな声で告白する。
「これからも、ずっと私の隣にいてね」
沢田くんはまたキョトンとした顔をした。
【席の話かな? ずっとって言ってもまた1ヶ月ぐらいしたら席替えになっちゃうのに。可愛いなあ、佐藤さん(*´꒳`*)】
分かってないなあ、もう。
でもそんな沢田くんが大好きだよ。
見つめ合って自然と生まれた私たちの笑顔は、まだ眩しい初夏の夕陽の中で柔らかく溶け合い、ひとつになった。
0
お気に入りに追加
161
あなたにおすすめの小説

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
『 ゆりかご 』 ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。
設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。
最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで
くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。
古い作品ですが、有難いことです。😇
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
" 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始
の加筆修正有版になります。
2022.7.30 再掲載
・・・・・・・・・・・
夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・
その後で私に残されたものは・・。
・・・・・・・・・・
💛イラストはAI生成画像自作

十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。
味のないお茶
恋愛
中学三年の終わり、俺。桜井霧都(さくらいきりと)は十年間片思いしていた幼馴染。南野凛音(みなみのりんね)に告白した。
十分以上に勝算がある。と思っていたが、
「アンタを男として見たことなんか一度も無いから無理!!」
と完膚なきまでに振られた俺。
失意のまま、十年目にして初めて一人で登校すると、小学生の頃にいじめから助けた女の子。北島永久(きたじまとわ)が目の前に居た。
彼女は俺を見て涙を流しながら、今までずっと俺のことを想い続けていたと言ってきた。
そして、
「北島永久は桜井霧都くんを心から愛しています。私をあなたの彼女にしてください」
と、告白をされ、抱きしめられる。
突然の出来事に困惑する俺。
そんな俺を追撃するように、
「な、な、な、な……何してんのよアンタ……」
「………………凛音、なんでここに」
その現場を見ていたのは、朝が苦手なはずの、置いてきた幼なじみだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

いや、婿を選べって言われても。むしろ俺が立候補したいんだが。
SHO
歴史・時代
時は戦国末期。小田原北条氏が豊臣秀吉に敗れ、新たに徳川家康が関八州へ国替えとなった頃のお話。
伊豆国の離れ小島に、弥五郎という一人の身寄りのない少年がおりました。その少年は名刀ばかりを打つ事で有名な刀匠に拾われ、弟子として厳しく、それは厳しく、途轍もなく厳しく育てられました。
そんな少年も齢十五になりまして、師匠より独立するよう言い渡され、島を追い出されてしまいます。
さて、この先の少年の運命やいかに?
剣術、そして恋が融合した痛快エンタメ時代劇、今開幕にございます!
*この作品に出てくる人物は、一部実在した人物やエピソードをモチーフにしていますが、モチーフにしているだけで史実とは異なります。空想時代活劇ですから!
*この作品はノベルアップ+様に掲載中の、「いや、婿を選定しろって言われても。だが断る!」を改題、改稿を経たものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる