沢田くんはおしゃべり

ゆづ

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第5章 沢田くんと愛の告白

沢田くんとドジっ子

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 焦って何も考えずにロッカーに隠れちゃったけど、これってヤバいよね。
 沢田くんと暗闇で二人きり。しかも密着状態。
 ああ、なんて大胆なことをしてしまったんだろう、私ってば!

「せ、狭くてごめんね、沢田くん」
 ドキドキしながら小さな声でこの状況について謝る。
「あ、うん……【雑巾やほこりの匂いで最悪なはずの掃除用ロッカーが……なんということでしょう。佐藤さんと二人で入ると、甘酸っぱくてキュンキュンする天国に。恋のたくみ、すげええええ!! どこでも天国作り出せるのかよ!!((((;゚Д゚)))))))】」

 匠、ありがとう。狭さに乗じて沢田くんの胸に耳を寄せてしまう。

【ドッキンドッキンドッキンドッキン!!(*´Д`*)】

 沢田くんの心臓の音が暴れていて可愛い。

【やっべえ、ドキドキしすぎてロッカーが揺れちゃうよ! 音が出ちゃう、音が出ちゃう~!! もうこうなったら心臓を潰すしかない!!:(;゙゚'ω゚'):】

 いや、死ぬから!
 本当はいつまでもこうしていたいけど、沢田くんの心臓も限界のようだし、なんとかしてここから出ないといけない。
 これからみんながやってきた時、抜け出せなくなる恐怖もあるし。
 
 その時、教室に入ってきたクラスメイトが自分の席につく音がした。

【はー、目立つと思って学級委員なんかに立候補しなけりゃ良かった。席替えのクジ作りまで頼まれるとはなー。担任ふくだのヤロウ、忙しいとかなんとか言って生徒をこき使いやがって】

 この声は……森島くんだ!

 大変だ、もし見つかったらクラス中に「沢田と佐藤さんがロッカーでいちゃついてたよm9(^Д^)プギャー」とか言いふらされる!

 でも、森島くんは自分の席に座って席替え用のくじを準備している。ということは、ロッカーには背を向けているに違いない。うまくすれば、気づかれないように脱出できるかも。っていうか、脱出するなら今しかない!


「沢田くん、音を出さないようにここから出よう」
「えっ……【もう終わり?。゚(゚´ω`゚)゚。 短い天国だった】うん」
「まず私から出てみるね。大丈夫そうだったら沢田くんも」
「うん……【俺にできるだろうか……こんなに難易度の高いミッションは生まれて初めてだ!((((;゚Д゚))))))) 足元のバケツをひっくり返したり、ほうきを倒してしまいそうな予感がプンプンするぜ!】」

 そこをなんとか、冷静な対処をお願いします!

 私はそっとロッカーの扉を押した。観音開きに外向きで開く仕組みなので、閉めるのは大変だったけど開けるのは楽だ。完全に閉じきってない状態だったのも幸いし、押した時もあまり大きな音が出なかった。

 少しずつロッカーに明かりが入って、私が出られるだけの細さに扉が開く。
 そろりそろりとロッカーから降りて、床に四つん這いになった。
 森島くんは気づいていない。

 よっしゃ! このまま廊下へ逃げる。教室のドアは重いけど静かにスライドしてくれた。私のミッションはコンプリートしたよ、沢田くん!!

 
【よ、よ、よ、よ、よし、俺もっ……!! えいやっ!!(>人<;)】


 ドンガラガッシャーン!! と教室の中から派手な音がした。
 あ……。この音は、掃除用具全部倒した音だな。


【や、やってもうた……:(;゙゚'ω゚'):】

 もう、沢田くんのドジっ子ーーーっ!!
 
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