沢田くんはおしゃべり

ゆづ

文字の大きさ
上 下
107 / 160
第5章 沢田くんと愛の告白

沢田くんと己のレベル

しおりを挟む


 その時、まるでどこかから見ていたかのようなタイミングで、小野田くんの声がした。

「おーい! 沢田ーっ!!【久々に俺、登場~ヽ(*^ω^*)ノ】」

 バシャバシャと濡れた路面を跳ね上げ、学校の方向から小野田くんが大股で近づいてくる。その手には別のビニール傘の柄が握られていた。

「てめー、俺の傘間違えて持ってったろ! 返せ! お前のはこっちだろ!【なーんて、別にビニール傘なんてどうでもいいんだけどなっ。沢田と話すきっかけゲットだぜ\(//∇//)\】」

 小野田くんは嬉しそうだけど、沢田くんは困惑と迷惑で青ざめた顔をしていた。

【がーん!!!Σ(゚д゚lll) 俺が傘間違えたっていう恥ずかしいミスをしたことを佐藤さんに知られてしまった!! 何だよこの人、名前書いたり返せって言ったり、どんだけこのビニール傘に固執してんの⁉︎ てか、そっちの傘がなんで俺のだって分かったの⁉︎ 怖いよ! この人のビニール傘へのこだわりが怖いよーっ!!。゚(゚´Д`゚)゚。 あと顔も怖い】」

 またしてもすれ違う二人の心。
 私が今一番気になるのは、記入された名前の後のレベル17って何? ってことだけど。

「小野田くん、よく沢田くんの傘が分かったね」
「ああ。だってこいつ、名前書いてるし」

 小野田くんが大きな手に隠れていた柄の部分をずらして見せてくれた。すると、そこには小さく「沢田空 レベル16」という文字が……。

 って、だからそのレベルなにーーーっ⁉︎
 流行ってんの⁉︎ 傘に己のレベルを書くの、流行ってんの⁉︎


「なーんだ、沢田くんも名前書いてたんだね。だから間違っちゃったの?」
「う、うん……【傘に名前書いてあったからてっきり俺のだと思って文字面まで確認しなかった……恥ずかしいよーっ(;´д`)】」

 沢田くんは照れくさそうに小野田くんと傘を交換する。

「ところで、このレベルってなに?」
「あ……うん【俺が小学校の時に俺のクラスで流行ってた、自分の年齢をRPG風に表記する遊び……。今でもこんなこと書いてるやつが俺以外にもいたなんて((((;゚Д゚)))))))】」

 なるほど、年齢か。
 すると小野田くんがドヤ顔で笑ったのが見えた。

【ふっふっふ。沢田と話すきっかけづくりのため、雨のたびに仕込んでいたんだぜ!! (๑• ̀д•́ )✧ドヤッ 】

 うーん、可愛いのかキモいのかと聞かれたら7:3の割合でキモいかな。
 小野田くんは仕込みが成功して上機嫌らしく、さらにこんなことを言い出した。


「せっかくだから一緒に帰ってもいいんだぜ? 家も近いし、せっかくだからなー。まあ俺はどっちでもいいんだけどよ【断ったら殺す!!o(`ω´ )o】」

 
 うわー、めんどくさいな小野田くん。



しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

『 ゆりかご 』  ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。

設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。 最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。 古い作品ですが、有難いことです。😇       - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - " 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始 の加筆修正有版になります。 2022.7.30 再掲載          ・・・・・・・・・・・  夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・  その後で私に残されたものは・・。            ・・・・・・・・・・ 💛イラストはAI生成画像自作  

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶
恋愛
中学三年の終わり、俺。桜井霧都(さくらいきりと)は十年間片思いしていた幼馴染。南野凛音(みなみのりんね)に告白した。 十分以上に勝算がある。と思っていたが、 「アンタを男として見たことなんか一度も無いから無理!!」 と完膚なきまでに振られた俺。 失意のまま、十年目にして初めて一人で登校すると、小学生の頃にいじめから助けた女の子。北島永久(きたじまとわ)が目の前に居た。 彼女は俺を見て涙を流しながら、今までずっと俺のことを想い続けていたと言ってきた。 そして、 「北島永久は桜井霧都くんを心から愛しています。私をあなたの彼女にしてください」 と、告白をされ、抱きしめられる。 突然の出来事に困惑する俺。 そんな俺を追撃するように、 「な、な、な、な……何してんのよアンタ……」 「………………凛音、なんでここに」 その現場を見ていたのは、朝が苦手なはずの、置いてきた幼なじみだった。

いや、婿を選べって言われても。むしろ俺が立候補したいんだが。

SHO
歴史・時代
時は戦国末期。小田原北条氏が豊臣秀吉に敗れ、新たに徳川家康が関八州へ国替えとなった頃のお話。 伊豆国の離れ小島に、弥五郎という一人の身寄りのない少年がおりました。その少年は名刀ばかりを打つ事で有名な刀匠に拾われ、弟子として厳しく、それは厳しく、途轍もなく厳しく育てられました。 そんな少年も齢十五になりまして、師匠より独立するよう言い渡され、島を追い出されてしまいます。 さて、この先の少年の運命やいかに? 剣術、そして恋が融合した痛快エンタメ時代劇、今開幕にございます! *この作品に出てくる人物は、一部実在した人物やエピソードをモチーフにしていますが、モチーフにしているだけで史実とは異なります。空想時代活劇ですから! *この作品はノベルアップ+様に掲載中の、「いや、婿を選定しろって言われても。だが断る!」を改題、改稿を経たものです。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...