沢田くんはおしゃべり

ゆづ

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第5章 沢田くんと愛の告白

沢田くんと相合い傘

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 告白かあ……。
 やっぱり、ちゃんとした方がいいよね。
 私の気持ちを沢田くんに伝えて、沢田くんがそれを受け入れてくれれば、いつでも近くにいられる。一緒にいるのが必然でいられる。
 寂しい思いもしなくて済むんだ。

 私は決心してうなずいた。
 
「ありがとう、杏里ちゃん。私、沢田くんに告白してみる……!」
「うん。頑張りなよ」

 杏里ちゃんはクールに微笑むとベランダを去っていった。私はその背中に感謝する。

 タイムリミットは今日を含めてあと3日だ。
 それまでになんとかチャンスをうかがって、告白できるかな……。
 タイムリミットが決まると一気に緊張してきた。
 そんな私の頭に、ポツッと冷たい雫が降ってきた。

「雨……?」

 さっきまで気がつかなかった湿った風の匂いがする。黒い雲が重く迫ってきて、流れるように真横に移動しているのが分かった。
 これは大雨になりそう。
 慌ててベランダから教室に戻ると、すぐに私がいた場所の色が変わって雨音がし始めた。
 予報では午後から雨だということになっていたらしい。
 席に戻ってスマホの天気アプリで雨雲の動きを見てみると、雨は夜まで続くらしいことも分かった。

 傘なんて持ってきてないのに、どうしよう。

【佐藤さん、どうしたんだろう。さっきからため息ついてる】

 沢田くんの声にドキッとして振り向くと、こっちを見ていた沢田くんと目が合った。

【はわわわわわ(〃ω〃)め、目が合った! 俺の心の声が聞こえちゃったのか⁉︎ いや、まさか。それより、なんか言った方がいいのかな? どうしたの? とか……\(//∇//)\ひゃあああ~~! そんなんサラッと言ってみたいけど無理ーーっ!】

 沢田くんは目が合っただけでテンパっている。
 普通に話しかけてくれていいのに。

「雨だね、沢田くん」
「あ、うん【あっ、またあうんって言っちゃった】」
「私、傘持ってくるの忘れちゃったよ。沢田くんは?」

 すると、沢田くんの目が一瞬キュピーンと光った。


【持ってるよ、佐藤さん。(๑• ̀д•́ )✧ドヤッ 。俺と一緒に相合い傘で帰りますか?】


 えええっ⁉︎ 本当に⁉︎



【って、誘いたいけど緊張して声が出ない……。゚(゚´ω`゚)゚。助けてー!】


 助けて欲しいのはこっちだよ、沢田くんっ!

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