沢田くんはおしゃべり

ゆづ

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第3章 沢田くんと炎のドッジボール

沢田くんと華麗にスルー

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「……とりあえず教室に戻ろっか。みんな待ってるみたいだし」
「……うん」

 私たちは保健室を後にし、微妙な距離感を保ったまま無言で廊下を歩いた。
 無言と言っても、もちろん沢田くんの心の中はおしゃべりだったけど。


【佐藤さんになんて切り出そう……。俺とデートしたいですか? って、死ねよバカ! 高飛車のナルシストか!! むしろ俺の方から五体投地でお願いするところだろ!! で、でもなんて言えば⁉︎ ストレートに言うのはあまりにも恥ずかしい……。ああ、こんな時に夏目漱石先生がいてくれたらな。「月が綺麗ですね」的な遠回しでおしゃれなフレーズを腐るほど教えていただくのにっ……!】


 沢田くん、必死すぎか。
 笑っちゃうのをこらえていると、前方から森島くんと森島ガールズたちが歩いてくることに気づいた。

 彼らは決勝トーナメントに進んだせいかテンションが高く、○ちゃんの仮装大賞で合格点を取った人たち並にはしゃいでいた。
 ちなみに決勝トーナメントはこれから始まるお昼休憩の後に行われる予定だ。

【おっ。沢田のやつ、暗い顔して歩いてるな。フフ】

 森島くんは勘違いしているけど、沢田くんは顔に出ないだけでテンションの高さだけは決して彼らに負けていない。


【佐藤さんとデートしたいですって言え、俺ーーーっ!! 伝われ、この想い!! ふおおおおおおお~~~っ\\\٩(๑`^´๑)۶////】


 自らに攻撃力を上げる呪文をかけていて、森島くんたちのことさえ目に入っていないようだ。
 

【よし、ちょっとからかってやるか】
 森島くんは一瞬だけ意地の悪い笑みを浮かべて私たちに声をかけてきた。


「やあ、沢田と佐藤さん。さっきはいい勝負だったね。そっちはちょっと残念だったけど、俺たちが沢田たちの分まで優勝目指して頑張るから!」


 その瞬間、沢田くんは、笑顔の森島くんの横を無言で通り過ぎた。
 

【あの野郎、この俺を完全スルーだと……⁉︎ せっかく俺の方から声をかけてやったのに!】


 森島くんは不穏な目つきで沢田くんを振り返る。
 スルーされて残念だったね、森島くん。
 ちょっぴり申し訳ない気持ちもするけど私も横を通り抜けようとした。
 すると。

「あっ、佐藤さん!」

 森島くんが私を呼び止めた。またもや嫌な予感がすると思ったら、やっぱりこんな声がした。


【こうなったら……佐藤さんをあいつから奪ってやる!】


 えっ、私をなんですと??




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