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第3章 沢田くんと炎のドッジボール
沢田くんとあの約束
しおりを挟む「だ、誰もいないよ! それより、麻由香ちゃんが沢田くんを倒したってほんと?」
ベッドの陰に沢田くん。
そんなドキドキシチュエーションをごまかすために話を振ると、麻由香ちゃんは「そーなの!」と嬉しそうに手を叩いた。
「景子ちゃんが退場した後、沢田くんが変な動きしなくなったからさあ、女子のみんなでボールの奪い合い! とにかく沢田くんさえやっつければ、森島くんがデートしてくれるって約束してくれてたからね。それでさあ」
麻由香ちゃんはずしっとベッドに座り込んでしまった。
スプリングの軋むベッドに沢田くんはますます身を縮ませる。
【ああああああ、見つかったら袋叩きだ! いや、火炙りの刑だー!「保健室のベッドで佐藤さんと何してたの?」なんて言われたらなんて言い返せばいいんだ! いや何もしてないよ! 何もしてないけど……あれ? 俺、何かしたっけ? 何もしてなければ隠れる必要ないのに隠れてる。ってことは、何かしたのかな? 何かしたような気がしてきた! でも、覚えがないっ……!!。゚(゚´ω`゚)゚。】
落ち着いて沢田くん、覚えがないのは何もしてないからだよ!
取調中の容疑者ってこんな心境なんだろうな。何もしてないのに何かしたような気になっちゃうっていう。
「それで、思いっきり投げたのね。そしたら沢田くんにバコーン! って当たったの。だから私がデートしてもらえるんだーと思ったじゃん? でも敵を倒した人数を言い出した奴がいて、MVPはいっぱい敵を倒した人のものになっちゃったんだよね! くやしー!!」
「そうだったんだ、残念だったね」
こうなったら、一刻も早く麻由香ちゃんに帰ってもらわないと。
フルパワーで頭を回転させていると、麻由香ちゃんがニヤニヤしながら言った。
「景子ちゃんも残念だったね」
「え?」
「もしうちらのチームに勝ってたら、沢田くんと手繋ぎデートできる権利は確実に景子ちゃんのものだったのにね!」
「!!」
【!?】
きゃあああ! それ、今は言っちゃダメな話ーーっ!!
【手繋ぎデート……って??】
沢田くんがソワソワし始める。
「あ、あ、あのっ、それは……っ!」
「景子ちゃん、沢田くんとデートするために頑張ってたのにねー。ごめんね、夢を打ち砕いちゃって。沢田くんって、こんなチャンスでもない限り女の子とデートなんかしてくれない感じだもんね。まあ、勝てばデートするって約束してくれただけでも奇跡っていうか?」
あああ、なんかご丁寧に全部説明してくれちゃったよ!
【デートの約束……! 俺、そんなことしてたんだ!! そういえば、みんなに囲まれて無理やり何かをオッケーさせられたような記憶がある──!】
あわわわ、沢田くんが思い出しちゃった!
【ちょっと待って。今この人、佐藤さんが俺とデートするために頑張ってたって言ってた⁉︎ 俺とデートするために⁉︎ 俺とデートするために⁉︎ 俺と……dファギャzごぎゃjなおkhfyなああああああ!?!?!? ええええええ~~!! 佐藤さんが俺と手繋ぎデートってどういうことーーー!!!((((;゚Д゚)))))))】
ぎゃああああ、沢田くんがいろいろと気づいちゃったーーーっ!!!
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