72 / 160
第3章 沢田くんと炎のドッジボール
沢田くんと怪しい敵
しおりを挟むなんやかんやでその後も私たち2ーF・Bチームは勝ち進み、とうとう予選トーナメントの決勝まで駒を進めてしまった。
沢田くんの【おんみつ】と【かげろう】の効果が絶大で、誰も沢田くんにボールを当てることができなかったのが勝利の要因だったんだろう。
私も密かに相手の心を読んで、狙われそうなチームメイトに「そこ行くよ!」「次そっち!」なんてアドバイスで貢献。少しはチームを有利に導いたかな、と思っている。
「沢田くん、この調子なら優勝も夢じゃないかもよ?」
「勝ったら例の約束、ちゃんと果たしてよね!」
二試合が終了した後、Bチームの女子が興奮しながら沢田くんに声をかけた。
女子に囲まれてかつてないほどのモテ期が来ていると思われる沢田くんは、喜んでいるかと思いきや。
【優勝⁉︎ 冗談じゃないよ、そんなに急に目立っちゃったら、どうしたら良いのか分かんない……! 陰日向でひっそりとしていたやつが、急に太陽の光浴びたら死んじゃうって!!((((;゚Д゚)))))))!ああ、土にかえりたい……!!】
優勝の二文字にびびってモテ期に気がついていないようで、いつにもまして無口になっていた。
良かった。沢田くんがビビりで。
モブの私は遠くから少しホッとする。こんな時、みんなの間に割り込んでいって、「沢田くんは私のもの宣言」でもできたらいいんだけど、それはまだ恥ずかしい。
でも次の試合で森島くんのチームに勝って、沢田くんとの手繋ぎデート権を手に入れることができたら……。
できたら、どうしよう?
勇気を出して、こ、告白……する⁉︎
にわかに胸がドキドキしてきたその時、
「やあ、Bチーム!」
爽やかな声が飛んできた。
見ると、森島くんがたった一人で沢田くんに近づいていくところだった。
「お互いよくここまで残ったよな。次の試合では正々堂々、頑張ろう!」
森島くんは優等生のスマイルを浮かべる。でも心の中は、
【クソっ。本当にここまで勝ち上がるなんて運の良い奴らだな。次で絶対ブッ倒してやる】
やっぱり真っ黒だった。
【森島くん、そんなこと言いにわざわざ俺のところへ……? なんて良い人なんだ! あっ、眩しい。森島くんの笑顔、眩しすぎてチリチリ焦げちゃうっ(;´д`)】
沢田くんは素直に感動しているみたいだけど、本当にそれだけのためにわざわざ来たのかな?
怪しんでいると、不意に森島くんが振り向き、私とバッチリ目が合った。
偶然かな? と思ったけど、そうじゃなかった。
森島くんは私に向かって歩いてきた。
そして、沢田くんが見ている前で、私にそっと耳打ちするような距離でささやいた。
「佐藤さん。ちょっと二人きりで話がしたいんだけど、いいかな?」
な、なんだろう⁉︎ 嫌な予感しかしない!!
0
お気に入りに追加
161
あなたにおすすめの小説

思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
『 ゆりかご 』 ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。
設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。
最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで
くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。
古い作品ですが、有難いことです。😇
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
" 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始
の加筆修正有版になります。
2022.7.30 再掲載
・・・・・・・・・・・
夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・
その後で私に残されたものは・・。
・・・・・・・・・・
💛イラストはAI生成画像自作

十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。
味のないお茶
恋愛
中学三年の終わり、俺。桜井霧都(さくらいきりと)は十年間片思いしていた幼馴染。南野凛音(みなみのりんね)に告白した。
十分以上に勝算がある。と思っていたが、
「アンタを男として見たことなんか一度も無いから無理!!」
と完膚なきまでに振られた俺。
失意のまま、十年目にして初めて一人で登校すると、小学生の頃にいじめから助けた女の子。北島永久(きたじまとわ)が目の前に居た。
彼女は俺を見て涙を流しながら、今までずっと俺のことを想い続けていたと言ってきた。
そして、
「北島永久は桜井霧都くんを心から愛しています。私をあなたの彼女にしてください」
と、告白をされ、抱きしめられる。
突然の出来事に困惑する俺。
そんな俺を追撃するように、
「な、な、な、な……何してんのよアンタ……」
「………………凛音、なんでここに」
その現場を見ていたのは、朝が苦手なはずの、置いてきた幼なじみだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

いや、婿を選べって言われても。むしろ俺が立候補したいんだが。
SHO
歴史・時代
時は戦国末期。小田原北条氏が豊臣秀吉に敗れ、新たに徳川家康が関八州へ国替えとなった頃のお話。
伊豆国の離れ小島に、弥五郎という一人の身寄りのない少年がおりました。その少年は名刀ばかりを打つ事で有名な刀匠に拾われ、弟子として厳しく、それは厳しく、途轍もなく厳しく育てられました。
そんな少年も齢十五になりまして、師匠より独立するよう言い渡され、島を追い出されてしまいます。
さて、この先の少年の運命やいかに?
剣術、そして恋が融合した痛快エンタメ時代劇、今開幕にございます!
*この作品に出てくる人物は、一部実在した人物やエピソードをモチーフにしていますが、モチーフにしているだけで史実とは異なります。空想時代活劇ですから!
*この作品はノベルアップ+様に掲載中の、「いや、婿を選定しろって言われても。だが断る!」を改題、改稿を経たものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる