沢田くんはおしゃべり

ゆづ

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第3章 沢田くんと炎のドッジボール

沢田くんと決着

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【ほ……ほわああああああああ~~~っ。゚(゚´ω`゚)゚。!!!!】



 突然、小野田くんが心の中で絶叫した。


【沢田が……沢田が初めて俺のこと、名前で呼んでくれた~~~!!!うっ、嬉しっ(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)!!】


 私は思わず顔面から転びそうになった。
 小野田くんは大きな体をフルフル震わせて喜びに浸っている。


【しかもちょっと微笑んでた! これはもう、友達と認められた証と言っても過言ではないだろう……!! 10年間の俺の思いがやっと沢田に伝わったんだ……!】


 裏を返せば10年も名前を呼ばれなかったってすごいな。
 機会はいくらでもあっただろうに。


 良かったね、と言ってあげたいところだけど、感動に嬉し泣きしそうな小野田くんを見つめる沢田くんは困惑顔だった。


【どうしたんだろ、この人。もう、こっちはいつやられるのかと思ってずっと緊張してるのに~! やるならひと思いにズバッとやってよ! 蛇の生殺しだろ~!。゚(゚´ω`゚)゚。】


 沢田くんはなかなか投げてこない小野田くんに、ちょっぴりイライラしているようだった。


「さあ、やれ」

 無抵抗に手を広げる沢田くん。小野田くんは一瞬振りかぶりかけたけど、沢田くんを見てそのままピタッと動きが止まる。


「くっ……!」

【だめだっ! 俺にはできない……! 大切な友達にボールをぶつけるなんてそんなひどいこと、いくらゲームでもできるわけがない!!】


 苦悩して友情を取った小野田くんの手からボールが落ちた。

 えらいよ、小野田くん。
 それでこそ友情だよね!
 私もちょっぴり感動して拍手しそうになった。
 ところが……。

 てん、てん、とボールがラインを越えて沢田くんの元へ転がった。
 感動中の小野田くんはそれに気づかない。



【あっ。隙だらけ】



「ていっ」

 沢田くんはボールを拾い、何の迷いも容赦もなく小野田くんに投げた。
 ボールはボスッと小野田くんのお腹に当たった。

「ぐはっ……!」

 小野田くんの足元にボールが落ちたその瞬間、ホイッスルが鳴り、審判の浅井先生がサッと左手を挙げた。



「試合終了! 2ーF、Bチームの勝ち!」


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