沢田くんはおしゃべり

ゆづ

文字の大きさ
上 下
48 / 160
第2章 沢田くんとお友達から

沢田くんと告白タイム2

しおりを挟む


「沢田っ……俺、お前にどうしても言いたいことがあるんだけど──」

 沢田くんをお姫様抱っこしたまま小野田くんが切り出す。
 下ろせばいいのに。
 沢田くんはそんな小野田くんを不愉快そうに睨み返しているけど、

【何? 殺されるの俺? 死ぬの? ちょっ、待っ、嫌ああーーーっ!!! 逃げらんないんだけどーーー!!((((;゚Д゚)))))))】

 多分恐怖で顔がこわばっているだけ。
 心の中はもう失禁寸前のチワワみたいな状態だ。

【照れるぜ。でももう後には退けねえ! 言ってやる!! 俺の思いを全部ぶちまけてやる!!】

 そう決意している小野田くんはまるで丸っこい宇宙船で地球にやってきた肩パットのでかい宇宙人みたいだ。
 地球くらい、気合だけで破壊しそうな雰囲気がある。
 息を吸い込み、眉間にシワを刻ませ、恐ろしい凶悪顔で小野田くんは言う。

「沢田あああ!! 俺と友達に──!!!」
「ごめん」

 沢田くんは間髪を入れずに断った。いや、ただ怖くて謝りたくなっただけだろうと思う。

【命だけは助けて!!。゚(゚´ω`゚)゚。】

 ……うん。まあそうなるよね。沢田くんの気持ちはめちゃくちゃ分かる。

【ガーンΣ(゚д゚lll)なんでっ……?】

 ショックを受ける小野田くん。まあ、その気持ちも分からないわけではない。


「てめえ、コラ沢田!! 何で断るんだよオラア!!【どうして、どうして? 俺の悪いところがあるなら直すから教えてーっ!!。゚(゚´Д`゚)゚。】」

 小野田くんはやや乱暴に沢田くんをベッドに乗せると、勢い余って彼を押し倒してしまった。

「!」
 ドキッとしたようにベッドの上で見つめ合う二人。

 えっ、これBLタグついてたっけ? 過激表現ありだっけ?
 私もうっかりそんな勘違いを起こしそうな体勢だ。
 でもご安心ください。これはコメディーです。

「……!」
 不機嫌な顔をした沢田くんが、すぐに小野田くんを突き飛ばしてベッドから落とす。
 クールな眼差しでめちゃくちゃカッコいいんだが。


【ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい、知らない人!! うっかり手が当たっちゃいました!!:(;゙゚'ω゚'): だって急に怖い顔が迫ってきて怖かったんですぅ~~!! 死ぬかと思ったんですぅ~~!! お願いだからもう許してください、訳のわからないインネンつけて来るのはやめてくださーい!! 街のどこかであなたの肩にぶつかったりしたことがあったのかもしれないですけど覚えてないんです、ごめんなさいごめんなさいごめんなさーい!!_(((  _*ω*)))⁾⁾_ペショ】


 沢田くんは心の中で全力の五体投地。手は偶然当たっただけで、クールな表情は恐怖で顔が固まっちゃっているのだと私だけが理解。


「沢田……【俺、沢田に睨まれてる。嫌われてる⁉︎ うっ……うっ……(;ω;)やっぱり俺みたいなハグレもんとは友達になりたくないってことか……】」


 小野田くんは傷ついた様子で、フランケンシュタインのように立ち上がった。


「……俺は帰る【あばよ、沢田……。早く元気になれよ……。゚(゚´ω`゚)゚。】」



 
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【完結】カワイイ子猫のつくり方

龍野ゆうき
青春
子猫を助けようとして樹から落下。それだけでも災難なのに、あれ?気が付いたら私…猫になってる!?そんな自分(猫)に手を差し伸べてくれたのは天敵のアイツだった。 無愛想毒舌眼鏡男と獣化主人公の間に生まれる恋?ちょっぴりファンタジーなラブコメ。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

燦歌を乗せて

河島アドミ
青春
「燦歌彩月第六作――」その先の言葉は夜に消える。 久慈家の名家である天才画家・久慈色助は大学にも通わず怠惰な毎日をダラダラと過ごす。ある日、久慈家を勘当されホームレス生活がスタートすると、心を奪われる被写体・田中ゆかりに出会う。 第六作を描く。そう心に誓った色助は、己の未熟とホームレス生活を満喫しながら作品へ向き合っていく。

生きづらい君に叫ぶ1分半

小谷杏子
青春
【ドリーム小説大賞応募作】 自分に自信がなく宙ぶらりんで平凡な高校二年生、中崎晴はお気に入りの動画クリエイター「earth」の動画を見るのが好きで、密かにアフレコ動画を投稿している。 「earth」はイラストと電子音楽・過激なメッセージで視聴者を虜にする人気クリエイターだった。 そんなある日、「earth」のイラストとクラスメイトの男子・星川凪の絵画が似ていることに気が付く。 凪に近づき、正体を探ろうと家まで押しかけると、そこにはもう一人の「earth」である蓮見芯太がいた。 イラスト担当の凪、動画担当の芯太。二人の活動を秘密にする代わりに、晴も「earth」のメッセージに声を吹き込む覆面声優に抜擢された。 天才的な凪と、天才に憧れる芯太。二人が秘める思いを知っていき、晴も自信を持ち、諦めていた夢を思い出す。 がむしゃらな夢と苦い青春を詰め込んだ物語です。応援よろしくお願いします。

処理中です...