44 / 160
第2章 沢田くんとお友達から
沢田くんと謎の両親
しおりを挟む小野田くんを追い出すことを諦めた沢田くんは、私たちを自分の部屋まで案内してくれた。
「ここ……【俺の部屋、何もなくて恥ずかしい】」
沢田くんがドアを開ける。
そう言えば私、男の子の部屋に入るの初めてだ。どんな部屋なんだろう、ワクワクしちゃう。
そんな私の目に飛び込んできたのは、謎の民族が愛用していそうな細長い怪しげなお面だった。
「え?」
その数、実に20個以上。壁一面にズラッとお面が勢揃いしている。
何だこれ。呪われそうなんですけど!!
【……つまらない部屋でごめんね、佐藤さん。面白いものは何もないよ】
いやいや、つまらないことはない。ものすごく興味がひかれる部屋だよ!!
「何だこれ! お前んち、呪われそうだな!!【怖えよ~~!! 何だよこのお面、どこで手に入るんだよ!! 現地感がすごいな!!】」
小野田くん、あなたは私の代弁者か。
「別に【呪われないよ。父ちゃんが仕事で行った国のお土産が溜まっているだけ】」
「お土産品かなあ? お父さんから?」
「……うん」
「へえ~。お父さん、何やってる人?」
私が何気なく尋ねると、沢田くんは恥ずかしそうに目を逸らした。
「……吟遊詩人」
吟遊詩人⁉︎
何それ、RPGに出てくる職業みたいなんだけど⁉︎
私は驚いて沢田くんを二度見した。すると、小野田くんが怖い顔で沢田くんの胸ぐらを掴んだ。
「おい、ふざけんなよ沢田! それはゲームの職業だろ? お前の父ちゃん、世界を救う旅にでも出てんのか?【吟遊詩人なんて初期は役に立たねえんだよ! どうしてもっていうならスーパースターへの転職目指せ! 頑張れ、沢田父!!】」
「……!【うわあああん。゚(゚´Д`゚)゚。本当のことなのに、何なんだよこの人! 俺の父ちゃんの職業疑う前に、自分のあらくれキャラを直してよ! このままだと間違いなく牢獄行きの囚人だよー!!】」
ド○クエやってる人にしか分からない会話が見事に心の中で戦わされている。
「ちょっと、小野田くん! 沢田くんは病人なんだからもっと優しく!」
私が止めに入ると、小野田くんはやっと沢田くんから手を離した。
「大丈夫? 沢田くん」
「うん【佐藤さん……やっぱり天使】」
沢田くんはキラキラした瞳で私を見つめた。病気で弱っているせいか、頬が赤くて目が潤んでいてもう可愛いったらない。
「それにしても、吟遊詩人って本当にいるんだね。初めて知った」
「うん……【みんなびっくりする】」
「やっぱり、世界中を旅してるの?」
「うん。今は日本にいるけど……すぐにいなくなる【放浪癖がすごくて、急にいなくなるんだ……。気がつくと帰ってきて、俺の部屋にお面だけ置いていってまたいなくなる、みたいな】」
沢田くんのお父さんはずいぶん破天荒な人のようだ。沢田くんも大変だろう。
「そんなに旅ばっかしていて、金はどうしてるんだよ? 歌なんか歌ったって稼げねえだろ?」
「……分かんないけど、うちは母ちゃんが稼いでるから……」
「ヒモかよ。情けねえなあ【可哀想な沢田(;ω;)】」
小野田くん、言動と心の声の不一致が過ぎる。
「じゃあ、沢田くんのお母さんはどんな仕事してるの?」
私はフォローのつもりで尋ねてみた。
すると再び沢田くんは恥ずかしそうに私から目を逸らして言った。
「……女王」
ちょっと待て。
吟遊詩人より衝撃的なの、来たんですけどーーー!!!
0
お気に入りに追加
161
あなたにおすすめの小説


サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【完結】カワイイ子猫のつくり方
龍野ゆうき
青春
子猫を助けようとして樹から落下。それだけでも災難なのに、あれ?気が付いたら私…猫になってる!?そんな自分(猫)に手を差し伸べてくれたのは天敵のアイツだった。
無愛想毒舌眼鏡男と獣化主人公の間に生まれる恋?ちょっぴりファンタジーなラブコメ。
私の隣は、心が見えない男の子
舟渡あさひ
青春
人の心を五感で感じ取れる少女、人見一透。
隣の席の男子は九十九くん。一透は彼の心が上手く読み取れない。
二人はこの春から、同じクラスの高校生。
一透は九十九くんの心の様子が気になって、彼の観察を始めることにしました。
きっと彼が、私の求める答えを持っている。そう信じて。
生きづらい君に叫ぶ1分半
小谷杏子
青春
【ドリーム小説大賞応募作】
自分に自信がなく宙ぶらりんで平凡な高校二年生、中崎晴はお気に入りの動画クリエイター「earth」の動画を見るのが好きで、密かにアフレコ動画を投稿している。
「earth」はイラストと電子音楽・過激なメッセージで視聴者を虜にする人気クリエイターだった。
そんなある日、「earth」のイラストとクラスメイトの男子・星川凪の絵画が似ていることに気が付く。
凪に近づき、正体を探ろうと家まで押しかけると、そこにはもう一人の「earth」である蓮見芯太がいた。
イラスト担当の凪、動画担当の芯太。二人の活動を秘密にする代わりに、晴も「earth」のメッセージに声を吹き込む覆面声優に抜擢された。
天才的な凪と、天才に憧れる芯太。二人が秘める思いを知っていき、晴も自信を持ち、諦めていた夢を思い出す。
がむしゃらな夢と苦い青春を詰め込んだ物語です。応援よろしくお願いします。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる