沢田くんはおしゃべり

ゆづ

文字の大きさ
上 下
24 / 160
第1章 沢田くんと恋の予感

沢田くんと放課後

しおりを挟む


 その後も沢田くんは号令を成功させ続け、無事に放課後まで日直の仕事をやり遂げた。

「あとは日誌を書いて職員室に届けるだけだね。私がやっておくから、沢田くんは帰ってもいいよ。今日はお疲れ様!」
「うん……【佐藤さんも、お疲れ様でした~!_(  _´ω`)_ペショ】」

 教室から次々と生徒が出ていく。
 私は机に日誌を広げ、今日の反省点などを思い返そうとしていた。
 今日は沢田くんのおかげで楽しい一日だったから、反省するのが難しい。
 何かあったっけなあ。
 頭をフリフリしながら悩んでいると、私の隣の席に、すでに帰ったと思っていた沢田くんがまだ座っていたことに気がついた。

「あれっ……沢田くん、帰ったんじゃなかったの?」
「うん……【佐藤さんにまだお礼してないし】」

 沢田くんはイケてる表情でうなずく。
 別に、お礼なんていらないのになあ。律儀な沢田くんにキュンとしちゃう。

「さ、とう、さん……」

 日誌の続きを書こうとしたら、沢田くんが小さな声で話しかけてきた。
 振り向くと、沢田くんが怖い顔をしてこっちを睨みつけていた。
 怒っている。ように見えるけど、

【ど、ど、ど、どうしよう……話しかけたらこっち向いた!((((;゚Д゚)))))))】

 やっぱりただビビってるだけだった。
 話しかけたら振り向くの、当たり前でしょ。

【やべー! 佐藤さん、不思議そうな顔してる! そりゃそうだよ、俺みたいな不審なやつから声をかけられたら、普通は警察に通報するところだもんな。ここが学校で、俺が佐藤さんのクラスメイトでよかった! そうじゃなかったら、ただのアブナイ奴だもんな……!】

 たしかに、アブナイ奴には違いないけど。

「どうしたの? 沢田くん。私に何か用?」
 私はにっこりと微笑んでみる。

「うん……【くはあああ!! ダメだよ佐藤さん! そんな無防備な笑顔で優しく俺なんかの話を聞いてくれようとするなんて……! 俺がライオンだったらどうすんの⁉︎ サバンナだったら一撃で殺されてるよ⁉︎】」

 なんで教室にいるのにサバンナの草食動物の気持ちにならなきゃいけないのだ。

【ああ……でもありがたい……! 普通の女子なら怖がってもう半径10メートルは離れてるのに、佐藤さんは粘り強いからありがたい!! なんか佐藤さんて、粋がってヤンチャして補導くらった中学生に無言でカツ丼差し出す刑事くらい優しいよな……。ああ、そんなこと考えてたらカツ丼食いたくなってきた】

 話が長いなー。もう、しょうがない。

「ねえ、沢田くん。お腹すいてこない? もし暇なら、このあとファミレスでも行こっか」
 
 私は思わずそう言ってから、ハッとした。
 私、今ちょっと調子に乗って大胆な提案しちゃったかも!
 やばい、時間差でドキドキしてきた!
 放課後に二人でファミレスデートだなんて、そんな夢のような体験、初めてだよ!!

 沢田くんはどう思ったかな……?
 心臓バクバクさせながら彼の反応をうかがうと、沢田くんは。



「【ファミレス……カツ丼食える!!】……うん」


 ……やっぱりカツ丼のことしか考えてなかった。_(┐「ε:)_ズコー
 
 
 
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-

半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。

優秀賞受賞作【スプリンターズ】少女達の駆ける理由

棚丘えりん
青春
(2022/8/31)アルファポリス・第13回ドリーム小説大賞で優秀賞受賞、読者投票2位。 (2022/7/28)エブリスタ新作セレクション(編集部からオススメ作品をご紹介!)に掲載。 女子短距離界に突如として現れた、孤独な天才スプリンター瑠那。 彼女への大敗を切っ掛けに陸上競技を捨てた陽子。 高校入学により偶然再会した二人を中心に、物語は動き出す。 「一人で走るのは寂しいな」 「本気で走るから。本気で追いかけるからさ。勝負しよう」 孤独な中学時代を過ごし、仲間とリレーを知らない瑠那のため。 そして儚くも美しい瑠那の走りを間近で感じるため。 陽子は挫折を乗り越え、再び心を燃やして走り出す。 待ち受けるのは個性豊かなスプリンターズ(短距離選手達)。 彼女達にもまた『駆ける理由』がある。 想いと想いをスピードの世界でぶつけ合う、女子高生達のリレーを中心とした陸上競技の物語。 陸上部って結構メジャーな部活だし(プロスポーツとしてはマイナーだけど)昔やってたよ~って人も多そうですよね。 それなのに何故! どうして! 陸上部、特に短距離を舞台にした小説はこんなにも少ないんでしょうか! というか少ないどころじゃなく有名作は『一瞬の風になれ』しかないような状況。 嘘だろ~全国の陸上ファンは何を読めばいいんだ。うわーん。 ということで、書き始めました。 陸上競技って、なかなか結構、面白いんですよ。ということが伝われば嬉しいですね。 表紙は荒野羊仔先生(https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/520209117)が描いてくれました。

処理中です...