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第1章 沢田くんと恋の予感
沢田くんと放課後
しおりを挟むその後も沢田くんは号令を成功させ続け、無事に放課後まで日直の仕事をやり遂げた。
「あとは日誌を書いて職員室に届けるだけだね。私がやっておくから、沢田くんは帰ってもいいよ。今日はお疲れ様!」
「うん……【佐藤さんも、お疲れ様でした~!_( _´ω`)_ペショ】」
教室から次々と生徒が出ていく。
私は机に日誌を広げ、今日の反省点などを思い返そうとしていた。
今日は沢田くんのおかげで楽しい一日だったから、反省するのが難しい。
何かあったっけなあ。
頭をフリフリしながら悩んでいると、私の隣の席に、すでに帰ったと思っていた沢田くんがまだ座っていたことに気がついた。
「あれっ……沢田くん、帰ったんじゃなかったの?」
「うん……【佐藤さんにまだお礼してないし】」
沢田くんはイケてる表情でうなずく。
別に、お礼なんていらないのになあ。律儀な沢田くんにキュンとしちゃう。
「さ、とう、さん……」
日誌の続きを書こうとしたら、沢田くんが小さな声で話しかけてきた。
振り向くと、沢田くんが怖い顔をしてこっちを睨みつけていた。
怒っている。ように見えるけど、
【ど、ど、ど、どうしよう……話しかけたらこっち向いた!((((;゚Д゚)))))))】
やっぱりただビビってるだけだった。
話しかけたら振り向くの、当たり前でしょ。
【やべー! 佐藤さん、不思議そうな顔してる! そりゃそうだよ、俺みたいな不審なやつから声をかけられたら、普通は警察に通報するところだもんな。ここが学校で、俺が佐藤さんのクラスメイトでよかった! そうじゃなかったら、ただのアブナイ奴だもんな……!】
たしかに、アブナイ奴には違いないけど。
「どうしたの? 沢田くん。私に何か用?」
私はにっこりと微笑んでみる。
「うん……【くはあああ!! ダメだよ佐藤さん! そんな無防備な笑顔で優しく俺なんかの話を聞いてくれようとするなんて……! 俺がライオンだったらどうすんの⁉︎ サバンナだったら一撃で殺されてるよ⁉︎】」
なんで教室にいるのにサバンナの草食動物の気持ちにならなきゃいけないのだ。
【ああ……でもありがたい……! 普通の女子なら怖がってもう半径10メートルは離れてるのに、佐藤さんは粘り強いからありがたい!! なんか佐藤さんて、粋がってヤンチャして補導くらった中学生に無言でカツ丼差し出す刑事くらい優しいよな……。ああ、そんなこと考えてたらカツ丼食いたくなってきた】
話が長いなー。もう、しょうがない。
「ねえ、沢田くん。お腹すいてこない? もし暇なら、このあとファミレスでも行こっか」
私は思わずそう言ってから、ハッとした。
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やばい、時間差でドキドキしてきた!
放課後に二人でファミレスデートだなんて、そんな夢のような体験、初めてだよ!!
沢田くんはどう思ったかな……?
心臓バクバクさせながら彼の反応をうかがうと、沢田くんは。
「【ファミレス……カツ丼食える!!】……うん」
……やっぱりカツ丼のことしか考えてなかった。_(┐「ε:)_ズコー
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