292 / 310
強者討伐 失われた武器
291 違和感 1
しおりを挟む
俺は寝ていた所を、ガドール公爵のでかい声で目が覚める。
「なんだと!? 貴様のような奴が神殿に仕える大司祭だと!?」
一体何の話をしているんだ?
そんな声を出すのなら、せめて部屋の外でやってくれよ。
体を起こすと、むさ苦しい分厚い胸板を顔に押し付けられる。
「アレス! よくぞ生きて戻ってきた」
筋肉の抱擁を、誰もが心地よいと思えるはずもないだろう。
「やめ……苦しい」
「父上。お止めください、アレス殿は大怪我をしていたのですよ」
ヘルディによって引き剥がされたところで、ブワッと流れる涙が俺の頭上でなかったことが何よりの救いだな。
体や腕の様子からして、思惑通りバセルトン公爵家は俺の怪我に対処してくれたようだな。
とはいえ、無くなったモノはさすがに戻りはしないか。
左手首は包帯が巻かれていて、動かすと鈍い痛みとともに無いことに違和感を覚えてしまう。
そんな事はどうでもいいと言わんばかりに、俺の腹は空腹に対して猛抗議をしている。
「ヘルディ。悪いが何か食べれる物を用意できないか? 煩くてかなわん」
「はっ、仰せのままに」
姿勢を正し、右手を胸に当て頭を下げる。
何とも仰々しいが、それについては何も言わないことにした。部屋から出ていくのだが「うぉぉおお」と、叫びながら廊下を走っていた。
何でそうなるんだ……さっきまでの冷静さは、何処に行ったんだ?
それと、何時もなら堂々と構えているおっさんが何で泣きじゃくっているんだよ。
あんなのに抱きつかれている、執事が可哀想だったが俺に来ないためにも犠牲になってもらうとしよう。
どうやら俺は、二日ほど目が覚めなかったらしい。
起きた時に居た司祭達の力によって、ある程度の怪我は回復しているものの、目が何で覚めないのかと騒いでいた所、俺は目が覚めた。
なんかこう、もっと違う場面で目を覚ましたかったな。ここに居ない三人にそんな事を期待するほうがどうかしている。
「ところでアレス。お前に一体何があったというのだ? その腕は、ただ事ではあるまい」
ようやく落ち着いたのか、普段の様子を見せている。
俺にとってはそんな事は最早どうでもいいことだった。
今は話をする時間でも、場所ですら無い。
目の前に置かれた料理を前に、周囲の雑音などどうでもいい。
収納から、二本の棒切れを取り出す。
「アレス殿? それは一体?」
ヘルディの問いかけに答えることもなく、俺は箸を使って料理を口に運んでいく。
あれもこれも、美味い。
ここにある料理の数々は俺のために用意してくれている。
左手が使えないことで、フォークだけでも食べられるようにしてくれている。ならば、ここは話をするよりも食べるというのが先決であり、何よりも重要なことだ。
「父上。アレス殿が落ち着くまで、今は待つしか無いでしょう」
「そのようだな」
俺は食べるだけ食べて一人だけ満足していた。ガドール公爵に案内され、別の部屋にあるソファーに腰を下ろすが、自然と横になってしまう。
それからは、数分も経たずして満腹による満足のせいか睡魔に襲われる。
「父上。アレス殿が目覚めるまで、今は待つしか無いでしょう」
「そ、そのようだな」
俺が目が覚める頃には、辺りは暗くなっていた。
ソファーで寝ていた気がしていたのだが……ベッドの上で目が覚める。
一体誰がと考えるものの、ここでなら俺ぐらい余裕で持つことができる人物がいる。
「目が覚めたか?」
運んだ張本人らしき人物から声をかけられる。
「ああ……申し訳なかった。その、何の話もせずに眠ってしまい」
ガドール公爵の目からは、微かな殺気のようなものを感じ取り俺は頭を下げるしか無かった。
ここが実家であったのなら、拷問のような仕打ちが待っていたのは確実だろう。
「なに、気にするようなことは何もない。お前はよくやっている、そうやすやすと頭を下げるな」
持っていた斧を壁に立て掛けるが、なぜ完全武装を何故しているのかが理解できていない。
以前なら、もっとゆるい格好をしていたのに、鎧をまとい索敵を展開すると、この部屋を取り囲むように兵士が配置している。
別の何かがあるというわけでは無さそうだけど……なぜこんな事になっているんだ?
「なんだと!? 貴様のような奴が神殿に仕える大司祭だと!?」
一体何の話をしているんだ?
そんな声を出すのなら、せめて部屋の外でやってくれよ。
体を起こすと、むさ苦しい分厚い胸板を顔に押し付けられる。
「アレス! よくぞ生きて戻ってきた」
筋肉の抱擁を、誰もが心地よいと思えるはずもないだろう。
「やめ……苦しい」
「父上。お止めください、アレス殿は大怪我をしていたのですよ」
ヘルディによって引き剥がされたところで、ブワッと流れる涙が俺の頭上でなかったことが何よりの救いだな。
体や腕の様子からして、思惑通りバセルトン公爵家は俺の怪我に対処してくれたようだな。
とはいえ、無くなったモノはさすがに戻りはしないか。
左手首は包帯が巻かれていて、動かすと鈍い痛みとともに無いことに違和感を覚えてしまう。
そんな事はどうでもいいと言わんばかりに、俺の腹は空腹に対して猛抗議をしている。
「ヘルディ。悪いが何か食べれる物を用意できないか? 煩くてかなわん」
「はっ、仰せのままに」
姿勢を正し、右手を胸に当て頭を下げる。
何とも仰々しいが、それについては何も言わないことにした。部屋から出ていくのだが「うぉぉおお」と、叫びながら廊下を走っていた。
何でそうなるんだ……さっきまでの冷静さは、何処に行ったんだ?
それと、何時もなら堂々と構えているおっさんが何で泣きじゃくっているんだよ。
あんなのに抱きつかれている、執事が可哀想だったが俺に来ないためにも犠牲になってもらうとしよう。
どうやら俺は、二日ほど目が覚めなかったらしい。
起きた時に居た司祭達の力によって、ある程度の怪我は回復しているものの、目が何で覚めないのかと騒いでいた所、俺は目が覚めた。
なんかこう、もっと違う場面で目を覚ましたかったな。ここに居ない三人にそんな事を期待するほうがどうかしている。
「ところでアレス。お前に一体何があったというのだ? その腕は、ただ事ではあるまい」
ようやく落ち着いたのか、普段の様子を見せている。
俺にとってはそんな事は最早どうでもいいことだった。
今は話をする時間でも、場所ですら無い。
目の前に置かれた料理を前に、周囲の雑音などどうでもいい。
収納から、二本の棒切れを取り出す。
「アレス殿? それは一体?」
ヘルディの問いかけに答えることもなく、俺は箸を使って料理を口に運んでいく。
あれもこれも、美味い。
ここにある料理の数々は俺のために用意してくれている。
左手が使えないことで、フォークだけでも食べられるようにしてくれている。ならば、ここは話をするよりも食べるというのが先決であり、何よりも重要なことだ。
「父上。アレス殿が落ち着くまで、今は待つしか無いでしょう」
「そのようだな」
俺は食べるだけ食べて一人だけ満足していた。ガドール公爵に案内され、別の部屋にあるソファーに腰を下ろすが、自然と横になってしまう。
それからは、数分も経たずして満腹による満足のせいか睡魔に襲われる。
「父上。アレス殿が目覚めるまで、今は待つしか無いでしょう」
「そ、そのようだな」
俺が目が覚める頃には、辺りは暗くなっていた。
ソファーで寝ていた気がしていたのだが……ベッドの上で目が覚める。
一体誰がと考えるものの、ここでなら俺ぐらい余裕で持つことができる人物がいる。
「目が覚めたか?」
運んだ張本人らしき人物から声をかけられる。
「ああ……申し訳なかった。その、何の話もせずに眠ってしまい」
ガドール公爵の目からは、微かな殺気のようなものを感じ取り俺は頭を下げるしか無かった。
ここが実家であったのなら、拷問のような仕打ちが待っていたのは確実だろう。
「なに、気にするようなことは何もない。お前はよくやっている、そうやすやすと頭を下げるな」
持っていた斧を壁に立て掛けるが、なぜ完全武装を何故しているのかが理解できていない。
以前なら、もっとゆるい格好をしていたのに、鎧をまとい索敵を展開すると、この部屋を取り囲むように兵士が配置している。
別の何かがあるというわけでは無さそうだけど……なぜこんな事になっているんだ?
0
お気に入りに追加
552
あなたにおすすめの小説
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
不遇幼女とハートフルなもふもふスローライフを目指します! ~転生前の【努力値】で異世界無双~
epina
ファンタジー
彼方高志(カナタ タカシ)は異世界に転生した直後に女の子の悲鳴を聞く。
助け出した幼女から事情を聴くと、家族に奴隷として売られてしまって、帰る場所がないという。
タカシは転生して得た力で、幼女の保護者になると決意する。
おいしいものをいっしょに食べたり、きれいな服を買ってあげたり。
やがてふたりはいろんな試練を乗り越えて、さまざまなもふもふたちに囲まれながら、のんびり旅をするようになる。
これはAIサポートによって異世界転生した男が、世界で一番不幸な幼女を、世界で一番幸せにするまでの物語。
王女に婚約破棄され実家の公爵家からは追放同然に辺境に追いやられたけれど、農業スキルで幸せに暮らしています。
克全
ファンタジー
ゆるふわの設定。戦術系スキルを得られなかったロディーは、王太女との婚約を破棄されただけでなく公爵家からも追放されてしまった。だが転生者であったロディーはいざという時に備えて着々と準備を整えていた。魔獣が何時現れてもおかしくない、とても危険な辺境に追いやられたロディーであったが、農民スキルをと前世の知識を使って無双していくのであった。
異世界に転生した俺は農業指導員だった知識と魔法を使い弱小貴族から気が付けば大陸1の農業王国を興していた。
黒ハット
ファンタジー
前世では日本で農業指導員として暮らしていたが国際協力員として後進国で農業の指導をしている時に、反政府の武装組織に拳銃で撃たれて35歳で殺されたが、魔法のある異世界に転生し、15歳の時に記憶がよみがえり、前世の農業指導員の知識と魔法を使い弱小貴族から成りあがり、乱世の世を戦い抜き大陸1の農業王国を興す。
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる