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強者討伐 失われた武器
278 アレス・ローバンの背徳 1
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季節は変わり、学園に通っていたのなら、俺は三年生になっている。
ミーア達はダンジョンの攻略も順調に進み、後一ヵ月もあれば攻略できるかも知れない。
もう俺に残されている時間は少ない。
今年中に俺がなんとかしないと……それなのに、何で俺はこんな事をしているんだ?
「アレス、体は調子は大丈夫かい?」
「父上」
俺が体を起こそうとすると、父上は手を出してそのまま寝ていろと合図を出した。
こんな所で寝ている場合じゃないのだけど、体がまともに動かない。
四匹目強者、ベレスを倒し翌日から俺は熱を出して寝込んでいた。
窓に立てかけられた、魔槍ウロボロス。
パメラにとっては馴染みのある斧のついた武器。今日にでも届けるつもりだったのに……。
ベレスとの戦いは、大したものではなく、意外にもあっさり倒すことが出来た。
それだけ俺が強くなったということなんだが……今の俺はベッドの上で身動きがまともにできないほど弱っている。
いくらレベルが上ったとは言え、風邪に強くなったというわけではないようだ。
「何か欲しい物とかはないかな?」
「大体なら収納にあるので……大丈夫です」
飲み物から食料とありとあらゆる物が詰め込まれているので、わざわざこんな時に頼むものでもない。
父上は、首を横に振って俺の頭を撫でている。
「今は私達の言うことを聞きなさい。君はこんな時でも甘えようとはしないのだね」
甘えるも何も、これだけの事をしてくれているのだから、俺がこれ以上父上に言えることはない。
父上はベルを鳴らし、メイドたちを呼び出す。
慌てているのか、扉が勢いよく開き息を切らしたメイドがやってきた。
「アレス様! いかがなされましたか!?」
「アレスなら大丈夫だよ。汗をかいているようなのでね、お願いできるかな?」
俺を顔を見るなり、ホッと息を漏らしていた。ローバン家では、昔の俺……いや、アレスのこともあってか、風邪というだけで皆は血相を変えていた。
セドラは、何人もの医者を呼び、父上や母上もかなり心配してくれている。
父上も仕事がまだ残っているというのに、わざわざ俺の様子をこうやって見に来てくれている。
メイドは深く頭を下げて、「かしこまりました」そう言って部屋から出ていく。
熱を出して今日で二日目。
家族だけではなく、使用人たちも俺に対してかなり優しく扱ってくれている。
俺がこの世界に来たあの頃のように……体の弱い俺は、よく寝込んだ。
それは単純に、筋力の衰えによるもので、無理な筋トレをしたりとすぐにへばって動けなくなる度に、セドラは声を荒げてメイドたちを呼び寄せる。
だけど、俺がこんな姿だから、冷たくなっているものとばかり考えていたが、大きな間違いだったのかも知れない。
父上から、体格のことで悪く言われた事もなく、俺が自分の体格で自身を揶揄すれば怒られる。それなのに、誰も痩せろと言わなかった。
ミーアも、この体を知ってもあの頃と同じように振る舞ってくれていた。
「アレス、今はゆっくりと体を休めて、病気を治しなさい。いいね?」
俺は返事をすることもなく、一度だけ頷くと父上も同じように頷く。
こんな父上は、何時以来だろう?
「また後で様子を見に来るよ。それと、魔法は絶対に使ったらダメだからね。何かあればベルを使いなさい」
父上が部屋から出ていき、俺はベッドからテーブルの手をついて立ち上がる。
ベルを使えとそう言われても、俺はそろそろ限界に近い。
太っているせいだろうか、立っているのですらやっとだった。
フラフラとした足取りで部屋の外に行き、壁に手をついて何度も大きく深呼吸をする。
倒れないように、そしてできるだけ急ぐ必要があった。
「くっ……」
後何回耐えられるかわからない。
刺激を与えないようにと、ゆっくりと足を進めていく。
「アレス様!」
「何をなされているのですか!?」
複数人のメイド達は驚きの声を上げて、俺の元へやってくる。
こんな所で見つかるなんて、皆急ぎすぎだろ。
ミーア達はダンジョンの攻略も順調に進み、後一ヵ月もあれば攻略できるかも知れない。
もう俺に残されている時間は少ない。
今年中に俺がなんとかしないと……それなのに、何で俺はこんな事をしているんだ?
「アレス、体は調子は大丈夫かい?」
「父上」
俺が体を起こそうとすると、父上は手を出してそのまま寝ていろと合図を出した。
こんな所で寝ている場合じゃないのだけど、体がまともに動かない。
四匹目強者、ベレスを倒し翌日から俺は熱を出して寝込んでいた。
窓に立てかけられた、魔槍ウロボロス。
パメラにとっては馴染みのある斧のついた武器。今日にでも届けるつもりだったのに……。
ベレスとの戦いは、大したものではなく、意外にもあっさり倒すことが出来た。
それだけ俺が強くなったということなんだが……今の俺はベッドの上で身動きがまともにできないほど弱っている。
いくらレベルが上ったとは言え、風邪に強くなったというわけではないようだ。
「何か欲しい物とかはないかな?」
「大体なら収納にあるので……大丈夫です」
飲み物から食料とありとあらゆる物が詰め込まれているので、わざわざこんな時に頼むものでもない。
父上は、首を横に振って俺の頭を撫でている。
「今は私達の言うことを聞きなさい。君はこんな時でも甘えようとはしないのだね」
甘えるも何も、これだけの事をしてくれているのだから、俺がこれ以上父上に言えることはない。
父上はベルを鳴らし、メイドたちを呼び出す。
慌てているのか、扉が勢いよく開き息を切らしたメイドがやってきた。
「アレス様! いかがなされましたか!?」
「アレスなら大丈夫だよ。汗をかいているようなのでね、お願いできるかな?」
俺を顔を見るなり、ホッと息を漏らしていた。ローバン家では、昔の俺……いや、アレスのこともあってか、風邪というだけで皆は血相を変えていた。
セドラは、何人もの医者を呼び、父上や母上もかなり心配してくれている。
父上も仕事がまだ残っているというのに、わざわざ俺の様子をこうやって見に来てくれている。
メイドは深く頭を下げて、「かしこまりました」そう言って部屋から出ていく。
熱を出して今日で二日目。
家族だけではなく、使用人たちも俺に対してかなり優しく扱ってくれている。
俺がこの世界に来たあの頃のように……体の弱い俺は、よく寝込んだ。
それは単純に、筋力の衰えによるもので、無理な筋トレをしたりとすぐにへばって動けなくなる度に、セドラは声を荒げてメイドたちを呼び寄せる。
だけど、俺がこんな姿だから、冷たくなっているものとばかり考えていたが、大きな間違いだったのかも知れない。
父上から、体格のことで悪く言われた事もなく、俺が自分の体格で自身を揶揄すれば怒られる。それなのに、誰も痩せろと言わなかった。
ミーアも、この体を知ってもあの頃と同じように振る舞ってくれていた。
「アレス、今はゆっくりと体を休めて、病気を治しなさい。いいね?」
俺は返事をすることもなく、一度だけ頷くと父上も同じように頷く。
こんな父上は、何時以来だろう?
「また後で様子を見に来るよ。それと、魔法は絶対に使ったらダメだからね。何かあればベルを使いなさい」
父上が部屋から出ていき、俺はベッドからテーブルの手をついて立ち上がる。
ベルを使えとそう言われても、俺はそろそろ限界に近い。
太っているせいだろうか、立っているのですらやっとだった。
フラフラとした足取りで部屋の外に行き、壁に手をついて何度も大きく深呼吸をする。
倒れないように、そしてできるだけ急ぐ必要があった。
「くっ……」
後何回耐えられるかわからない。
刺激を与えないようにと、ゆっくりと足を進めていく。
「アレス様!」
「何をなされているのですか!?」
複数人のメイド達は驚きの声を上げて、俺の元へやってくる。
こんな所で見つかるなんて、皆急ぎすぎだろ。
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